『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(21)ジェイテクトSTINGS愛知 道井淳平(連載20:クインシーズ刈谷の吉永有希は挫折にめげず、星海光来のようにレシーブを磨いて殻を破った>>)(c)古舘春一/集英社 春高バレーでの、鎮西高校のエ…

『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(21)

ジェイテクトSTINGS愛知 道井淳平

(連載20:クインシーズ刈谷の吉永有希は挫折にめげず、星海光来のようにレシーブを磨いて殻を破った>>)



(c)古舘春一/集英社

 春高バレーでの、鎮西高校のエースだった宮浦健人との戦いは忘れられない。当時から"日本を背負うスーパースター候補"ともてはやされていた。

「宮浦を止めろ」

 それを合言葉に、チーム一丸で戦った。国体では勝った経験があったため、勝算もあったはずだが......。

「止められなかったです。こっちが仕掛けても、コースを見つけて打ってきました」

 ジェイテクトSTINGS愛知の道井淳平(27歳)は、身長2ⅿ近い体を少し小さくしてつぶやいた。それも、今やトップリーグでプレーする彼を形作る記憶のひとつなのだろう。

 バレーボールと出会ったのは7歳、小学2年の時だという。当時、北京五輪に向けて戦う選手たちをテレビで観て、同じ石川県出身の越川優の雄姿に憧れた。

「あとは、『小学校で何かスポーツをやろう』と思っていて。友だちはサッカーや野球が多かったから自分も見学に行ったんですけど、合わなかった。野球は外で暑そうだし、サッカーは走るし足技も必要やし。室内のスポーツも、バスケはかなり走るんで苦手だなと(笑)。それで、やったことはなかったですけど、姉もやっていたバレーにしました」

 越川への憧れもあったが、なりゆきで始めただけに「痛さ」に驚いた。レシーブは思ったよりも痛かった。ジャンプのフォーム固めのために逆立ちが練習メニューに入っていたが、倒れると痛い。ルールもわからず、最初は戸惑うことが多かったという。

「でも、始めてからは『やるならやろう』って決めていたし、『上でやりたい』と思っていたので必死でした」

 道井はそう振り返る。当時は左利きのスパイカーで、身長もぐんぐん伸びた。

「中学では、小学校でやっていたアドバンテージがあって、すんなりプレーできました。『やるなら極めよう』と思っていたので、高校は全国に行けるところ(石川県立工業高等学校)に進んで、とことんやろうと。国内のリーグのチームも、石川県には男子チームこそないですが、女子はPFU(ブルーキャッツ)がある。ジュニアのバレー教室で選手が来たことがあって、『こういう世界もいいな』と思いました」

 高校2年の春高が終わったあと、彼はセッターに転向している。自ら志願したわけではない。単純に3年生が卒業し、セッターが不在だったからだが......。

「当時の高校の監督がセッターで、日体大出身で川合俊一さん(現日本バレーボール協会会長)と同期だったんです。それで『セッターをやってみないか? 未来を見据えても、左利きのデカいセッターはいいぞ』と言われて。高校の先輩で、東レアローズ静岡の新(貴裕)さんも181cmの左利きのセッターですし」

 バレーでは、大きさは常に有利である。しかも左利き。元スパイカーなだけに、ツーアタックもお手の物だ。

 そして日体大を経て、トップリーグに辿り着いた。チームメイトには、日本代表の正セッターである関田誠大がいる。

「関田さんと一緒なのは刺激になっています。いろいろ聞いて、学べる。ほかのセッターの映像も"どういう動作で上げているか"を確認するために見るんですが、関田さんは違いますね。いつも同じタイミングで入って、同じ動作でトスを上げる。だから相手は(どこに上がるかわからず)反応できない。同じセッターとしても尊敬しますよ」

 道井は快活に笑って言う。ただ、関田に対して白旗を上げるつもりはない。

「左利きの選手はどのスポーツも少なくて、宮浦も、西田(有志/大阪ブルテオン)も回転が独特で取りづらいんですよ。今さら遅いかもですが、なんでも器用にできる選手になりたいです。身長が高い日本人選手は器用じゃない印象もあるかもしれませんが、イタリアの(アレッサンドロ・)ミキエレットは2ⅿ超えの左利きアウトサイドヒッターですけど、器用な選手。それが"世界"だと思うので」

 その領域に達した時、道井は殻を破っているだろう。

【道井が語る『ハイキュー‼』の魅力】

――『ハイキュー‼』、作品の魅力は?

「1点の重みが感じられる漫画ですね。烏野が、ウシワカ(牛島若利)を擁する白鳥沢学園と試合をする時の"対エース"という感じも、自分にとっては高校時代に、宮浦や西田のような左利きスパイカーたちと対戦した時と似ている。だから、『ウシワカを止めろ』という感じが『わかるな』って(笑)」

――共感、学んだことは?

「左利きなので、ウシワカのフォームは『こういう感じだったな』となります。あとは影山(飛雄)。セッターは"当たっている"選手に(トスを)上げるのがいいんですが、日向(翔陽)、東峰(旭)、月島(蛍)などで分散させている感じとかですね」

――印象に残った名言は?

「白鳥沢学園戦の月島の回想シーンで、音駒のクロ(黒尾鉄朗)が言った『リード・ブロックは我慢と粘りのブロックであると同時に 最後に咲う(わらう)ブロックだ』というセリフですね。『確かにそうだな』と思うし、好きです」

――好きなキャラクター、ベスト3は?

「1位は稲荷崎のセッターの宮侑です。会場をひとつにするサーブを打ちますが、あの一体感はすごいです。2位はウシワカ。3位は月島ですね。月島はかなり頭を使ってプレーしているイメージがあって、最後にストレートを締めるか、リベロの西谷(夕)に任せるかなどを考えている感じがいい。影山もいいんですが、4位ですね(笑)」

――ベストゲームは?

「烏野vs白鳥沢学園です。先ほども言いましたが、やっぱりウシワカと宮浦を重ねて、烏野の選手たちの気持ちになったので(笑)」

(連載22:ジェイテクト岩本大吾が挑む「勝ち負け」の世界 ハイキュー‼のあるキャプテンに「勇気づけられる」>>)

【プロフィール】

道井淳平(みちい・じゅんぺい)

所属:ジェイテクトSTINGS愛知

1997年11月19日生まれ、石川県出身。198cm・セッター。小学2年でバレーボールを始める。石川県立工業高校時代の2年時にスパイカーからセッターに転向。国体や春高バレーなど全国大会を経験した。その後、日体大を経て2020年にジェイテクトSTINGS愛知に入団した。