J2のJ1昇格プレーオフ決勝戦はファジアーノ岡山とベガルタ仙台の対戦となった。リーグ戦の5位だった岡山は5位のモンテディオ山形に3−0と勝利。スローインとセットプレーから2点のリードを奪い、その後は相手の退場にも助けられての完勝だった。 …
J2のJ1昇格プレーオフ決勝戦はファジアーノ岡山とベガルタ仙台の対戦となった。リーグ戦の5位だった岡山は5位のモンテディオ山形に3−0と勝利。スローインとセットプレーから2点のリードを奪い、その後は相手の退場にも助けられての完勝だった。
一方で6位の仙台は3位の長崎を相手に鋭いカウンターを繰り出して、4−1の大勝を飾った。どちらもアウェー、しかも引き分けならリーグ戦上位側が勝ち進むというレギュレーションで”下剋上”を果たしており、白熱したファイナルとなることは間違いない。
6位の仙台が3位の山形を破ったことで、結果として決勝のホーム開催権は5位の岡山が獲得することとなった。しかも、木山隆之監督が指揮する岡山はリーグ戦で仙台にホームで2−0、アウェーで4−1と連勝しており、仙台がJ2に降格した2022年以降の対戦成績は岡山が4勝2分で、負けが一度もない。森山佳郎監督が率いる仙台にとって困難なミッションとなるが、チームの勢いを考えれば十分にチャンスはあるだろう。
■岡山の3-4-2-1と仙台の4-4-2
5月と7月に行われたリーグ戦の2試合を振り返ると、仙台がボールを握る試合展開は同じだったが、やはり岡山ホームだった2試合目の方が、チャンスの数もシュート数も岡山が圧倒的で、仙台は相手陣内でなかなか起点を作ることができず。前半にシャドーの岩渕弘人、後半にDF田上大地のゴールを許す形で、理想的なゲームをされてしまった。
基本システムは岡山が3―4―2―1、仙台は4―4―2で両チームともに変わっていないが、特に気をつけたいのが仙台のコンパクトな守備を逆利用するような、素早いサイドチェンジを起点に、逆サイドの選手がファーサイドに飛び込んでくる形だ。
また岡山は中盤に厚みがある分、セカンドボールの回収力が高く、そこで仙台がなかなかアドバンテージを取れないことも、やりにくさの要因かもしれない。
もう1つ仙台にとって厄介なのが、ハイラインの背後を一発で狙ってくるロングボールだ。岩渕 弘人と木村太哉の2シャドーに加えて、左右のウイングバックも縦のスペースランニングを得意としており、前回の対戦ではまだ未加入だったFW一美和成の存在も、その威力をアップさせている。ただ、仙台としては背後を警戒してローブロックを引きすぎると、上記のような岡山の厚みのある攻撃を許してしまうし、攻撃で自分たちの良さも生かしにくい。
一番やりたくないのは岡山の攻撃を恐れて、サイドハーフがサイドバックのようなポジションで守備をする状態になってしまうこと。アウェーで、しかも引き分けら岡山が昇格を決める不利な状況を逆利用するわけではないが、長崎戦で見せたような良い意味でのチャレンジャースピリットが大きなポイントになるはず。30℃を記録した7月の試合と違い、運動量をベースとした守備も、オーソドックスな4ー4ー2からの流動的な攻撃も発揮しやすいだろう。
■岡山戦に向け“上積み”となる奥山政幸
戦力面で言うと、前回の対戦でなかった強みがJ1のFC町田ゼルビアから夏に加入した31歳の奥山政幸だ。終盤戦は左サイドバックのスタメンに定着し、バックラインの守備を安定させながら、攻撃では相良竜之介や中島元彦をサポートしている。長崎戦では相手のキーマンであるマルコス・ギリェルメを完封し、早期交代に追い込んだ。
岡山戦は非対称のシステムで、右ウイングバックの本山遥、右シャドーの木村太哉を同時に見る構図になるが、ここで主導権を取ることができれば、シーズン13得点の岩渕の危険性も半減させられる。
J2上位の高強度を誇る岡山に対して、引きすぎずに耐えながら、自分たちのボールを生かして、相手陣内のサイドに起点を作って行けるか。相良はもちろん、右サイドの郷家友太が高い位置でボールを持てれば、前線の中島やエロンも前向きにボックス内を狙える。そこから長崎戦でも見せたような相良と中島のポジションチェンジなど、アタッキングサードの流動性を存分に生かして、田上が統率する岡山の屈強な3バックの両脇を攻略していきたい。
(取材・文/河治良幸)
(後編へ続く)