第76回阪神ジュベナイルフィリーズ(GI、京都芝1600m)には、BCジュベナイルフィリーズターフ2着のタピット産駒・メイデイレディがレース史上初の外国調教馬として参戦。

迎え撃つ日本勢は、全国と2歳リーディングサイアーをひた走るキズナ産駒のブラウンラチェット、ミストレス、ショウナンザナドゥ(抽選対象)をはじめ、サートゥルナーリア、アドマイヤマーズ、シスキンなど新種牡馬の産駒もずらり。

ここでは、馬券検討のヒントとなる「血統」で本競走を攻略する。

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■例年より中距離向きか

京都と阪神の外回り1600mは直線の長い外回りというレイアウトこそ同じだが、阪神は前半がフラットでスピードに乗りやすいのに対し、京都は向こう正面から3角にかけてかなりの坂を登る格好になる。

これにより最初の登り坂でペースが緩むため、1800m向きの馬が労せず追走できる。結果として中距離向き血統の馬が台頭しやすいというのはマイルCSでも見られる傾向だ。

例年から阪神ジュベナイルフィリーズは中距離向き、少なくとも1800mくらいあった方が良さそうな馬が強いレースではあるが、今年はその傾向に輪をかけて中距離なレース質になるのでは。

メイデイレディの父はアメリカのトップ種牡馬タピットで、母はイギリスのGIコロネーションS2着の成績があるマイラー。2着だったBCJFターフの勝ち馬は、欧州2歳女王で無敗のレイクヴィクトリア。来年の欧州牝馬クラシックで主役を張るであろう馬に敗れたのは気にしなくて良い。力そのものはここでも十分に通用する。

ただ血統を見ると果たして京都の外回りマイルでどうなのか。

タピットとケイムホームが出ているのならワンターンの大箱は良さそうに思えるが、その場合は「芝じゃなくてダートなんじゃないの?」という印象。反対に4コーナーでグワンと機動力を活かした前走の走りを見ると、母父のモアザンレディのヘイローっぽさがあるように思えるが、そうなると今度は大箱でどうなのか、という疑問に行きついてしまう。帯に短し襷に長しと言うべきか。

勝たれても驚けないが、不利な遠征競馬でもあり、重い印を打つのは少々おっかない。

■「80%シンリョクカ」の血統

ビップデイジーの父は菊花賞と有馬記念を制したサトノダイヤモンド。母ローズベリルはキングカメハメハ産駒の2勝馬で、牝系はマリアライトやクリソベリル、ダンビュライトと同じキャサリーンパーの一族。基本的にこの牝系は中長距離で強さを発揮する馬が多い。

単純な距離だけを考えると、中盤が締まったマイル戦らしい流れになったときの対応力を不安視したくなるが、向こう正面の登りでテンが緩みやすい、中距離質なペースになりやすい京都外回りマイルならこの血統でも問題なくこなせるはず。

加えて、父も近親も京都外のGIで好走していることを考慮すると、長く脚を使う京都の外回りはこの馬に合ったレイアウトと言える。

そもそもサトノダイヤモンド×キンカメはシンリョクカと同じ組み合わせ。ついでに母母のところで、シンリョクカはミルリーフ、ビップデイジーはリヴァーマンを引いており、キンカメが抱えるミルリーフと脈絡させているのもソックリ。要するにビップデイジーは「80%シンリョクカ」みたいな血統なわけだ。

「上がりのかかる中距離質な京都外回りにシンリョクカが出ていれば間違いなく重い印を打つよね?」と考えると、同じ文脈でビップデイジーも重視する必要があるだろう。合言葉は「シンリョクカ、再び」。一発の期待も。

あとは枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論に至りたい。

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著者プロフィール

ドクトル井上 【重賞深掘りプロジェクト】血統サイエンティスト。在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。