今季J2リーグを6位で終えたベガルタ仙台は、12月1日から開幕するJ1昇格プレーオフ(PO)に初めて参戦する。リーグ戦で年間を通して走り抜いたチームの戦いを梁勇基クラブコーディネーター(42)が総括し、PO準決勝・長崎戦(ピースタ)の展望…

 今季J2リーグを6位で終えたベガルタ仙台は、12月1日から開幕するJ1昇格プレーオフ(PO)に初めて参戦する。リーグ戦で年間を通して走り抜いたチームの戦いを梁勇基クラブコーディネーター(42)が総括し、PO準決勝・長崎戦(ピースタ)の展望も語った。またチームは28日、敵地での一戦に向け、仙台市内で約1時間練習した。(取材、構成=山崎 賢人)

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 仙台は今季始動時から目標にしていたJ1昇格PO圏内の6位を達成。昨季16位と低迷したクラブは、1年で劇的に成績を上げた。その要因は、昨季とは比べものにならないハードワークだと梁さんはいう。

 「やはり開幕当初から貫いて表現してきたハードワークというところ。全員で守って全員で攻められるところ、あとはゴール前で最後に一歩、二歩寄せるところはぶれずにできていましたし、それを本当に求め続けた森山監督含めコーチングスタッフの皆さんの力もあったと感じています」

 J2に降格した22年は攻撃的スタイルでサポーターを魅了したが、後半戦は運動量も落ち急失速。昨季は守備に重きを置き、攻撃まで体力が持たずに過去最低順位だった。今季は年間を通して足をつる選手もほとんどおらず、2連敗も2度のみと安定した戦いを見せた。

 「キャンプからものすごくフィジカル的には鍛えて、その成果が最後まで発揮されたと思います。日常の練習でも強度は明らかに上がっていましたし、シュートブロックのシーンは今までとは比較にならないぐらい増えている。ああいうのは本当に日常の練習が出る場面ですね」

 前半戦はMVPに、GK林彰洋とMF長沢和輝(現オーストラリア1部・ウェリントン・フェニックス)を挙げていた。年間を通してのMVPは林の名前も挙がったが、チーム全体の組織力を評価した。

 「林の安定感はやっぱり大きいなと思いますね。監督やスタッフの皆さんの関係性もすごくいいと思いますし、今年に関しては前線の選手も本当にボールを追いかけるスピードや迫力もある。そういう意味でも後ろの選手は守りやすさもあったと思うし、後ろの選手は危ないところでしっかりと体を投げ出して守備をしていた。本当にチームみんなで勝ち取ったPOなのかなという印象です」

 12月1日には今季1勝1分けの長崎と戦う。リーグ戦最多の74得点を奪い、その内55得点は外国籍選手が決めている超攻撃的な相手だ。年間順位は長崎が3位、仙台が6位。POの規定により引き分けでも敗退となる一戦。勝つためには耐え抜いた後の“先制点”がポイントだという。

 「ある程度、最初は力が入ってしまうと思うけど『今日なんか違うな』という感覚だけにはならないでほしい。相手に点を与えないところが大事。0―0のラスト10分、15分ぐらいになると相手は前線の外国人選手を代えて守りに入ると思うし、こっちは割り切って攻め込める。とにかく先制点に尽きると思います」

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 今季チームトップの13得点を決めたFW中島元彦(25)が、攻守でけん引する。大分との最終節(10日、2〇1)終了後、約3週間の練習期間に「だらだらとしたオフを過ごすのも楽しいですけど、長くサッカーができてうれしい」と笑顔を見せた7番。長崎との大一番に向けては「自分たちは今年1年、挑戦者という立場で戦ってきた。次の試合もそういうところを見せたい」と下克上を誓った。

 チームの雰囲気も抜群だ。アップの段階では笑顔も多く、対人などではバチバチと真剣勝負。あとは1年間やり続けた、懸命にボールを追うスタイルを全員で貫くだけだ。「全員が調子いいわけじゃないし、悪い選手もいると思う。それが自分かもしれないし、違う選手かもしれない。そういうところをカバーしてみんなで頑張りたい」。一体感を武器にボールを奪う。

 敵地には2000人以上の仙台サポーターが駆けつける予定だという。Jリーグ屈指の熱烈な応援に「頼もしいです。自分らだけで戦ってるんじゃないんだな、とみんな思う。勝ちを届けたい」。自らのゴールで敵地を静まりかえらせ、仙台に白星を持ち帰る。(山崎 賢人)