J1昇格プレーオフ展望(1) 今年5月、web Sportivaで書いた原稿で、筆者は自動昇格を争うチームを予想している。それは、清水エスパルス、横浜FC、 V・ファーレン長崎、ベガルタ仙台の4チームだった。その点、清水、横浜FCが自動昇格…

J1昇格プレーオフ展望(1)

 今年5月、web Sportivaで書いた原稿で、筆者は自動昇格を争うチームを予想している。それは、清水エスパルス、横浜FC、 V・ファーレン長崎、ベガルタ仙台の4チームだった。その点、清水、横浜FCが自動昇格を勝ち取ったのは、予想どおりと言えるだろう。

 もっとも、これは難しい予想ではない。よほどのへそ曲がりでない限り、近いものになっただろう。個人的には、ロアッソ熊本の躍進を希望したが、クラブ規模や戦力など、1、2位が4チーム以外から出ていたら"万馬券"だった。

 では、3位、6位で自動昇格を逃した長崎、仙台のいずれかがプレーオフを制してJ1に昇格するのか。4位のモンテディオ山形、5位のファジアーノ岡山に勝ち目はないのか? そこを検証した。

 確率で言えば、一番手は長崎。数字的にその可能性の高さは動かない。J2最多得点で、わずか1ポイントで自動昇格を逃し、相応の力がある(4位には9ポイント差)。加えて、引き分けでも勝ち上がれるレギュレーションが味方だ(90分を戦って引き分けの場合、リーグ戦順位の上位が勝利)。

「引き分け狙いのメンタリティは難しい」

 それも正論だが、優位なのは間違いない。


マテウス・ジェズスら強力なブラジル人アタッカーを擁するV・ファーレン長崎

 photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images

 長崎は、マテウス・ジェズス、エジガル・ジュニオ、マルコス・ギリェルメらブラジル人アタッカーを擁する攻撃が迫力満点。マテウスの馬力はJ2のレベルではないし、エジガルは老練さを見せ、マルコスは直近7試合で6得点と好調を続ける。ベテランの切り札、スペイン人FWフアンマ・デルガドもシーズン10得点、すべてが途中出場だ。

 懸念点は、8月に5試合で1勝もできずに9失点を喫したように、勝ち癖が十分についていないところにある。しかし、"負けなさ"には定評がある(実際にリーグ戦での負けは5試合と一番少ない)だけに、3位で挑むプレーオフでは大きなメリットだ。

 しかしながら、一発勝負の昇格プレーオフは"違う大会"と言える。実際に過去のプレーオフでは、6位チームが勝ち上がった例が2度もある。ほか、3位が勝ち上がったケースが3度で、4位が2度。5位は1度もないが、どこが勝ち上がってもおかしくない。

 長崎と準決勝を戦う仙台にも、勝機はある。仙台は森山佳郎監督の就任で連帯し、"勝負強さ"を身につけた。最終節、劣勢ながら大分トリニータを下した一戦は象徴的だろう。MF郷家友太は試合経験を重ね、今や頼もしい存在だ。

 ただ、仙台は大分戦の前の熊本戦は敵地で先制したあと、イニシアチブを取られている。結局、1-3と逆転負け。この足踏みがなかったら、長崎との準決勝を回避できたかもしれず......。

 もうひとつの準決勝、山形、岡山の攻防は、下馬評では「9連勝中の山形有利」となっている。

 山形は、MF土居聖真、FWディサロ・燦シルヴァーノを夏に緊急補強したことが、功を奏している。火力不足だった攻撃が活性化。守備はもともと組織ができていただけに、急浮上した。

 とはいえ、最終節は11月10日。勢いの話で言えば、約3週間も経過している。しかも、多くのシュートを打たれていた試合も少なくなく、相手を圧倒していたわけでなかったのが実状だ。

 一方で岡山は、横浜FCに次ぐ少ない失点数で、守備力の高さを活かせるか。特にGKスベンド・ブローダーセンはJ2では傑出で、今シーズンのベストGKと言える。

 ただ、得点数はリーグ10位と昇格を争うには非力。引き分けは負けを意味し、守りを固めるわけにいかない。どこかで強度を高めて先制点を奪い、逃げきる戦略になるはずだ。

 長崎が昇格レースを一歩リードしているのは間違いない。しかし、仙台は乾坤一擲で挑むだろうし、山形は破竹の勢いを味方にできるか。岡山もラッキーボーイの出現次第で、GKが最高の盾となる。

 今年も混戦からドラマが生まれそうだ。