現地発! スペイン人記者「久保建英コラム」 代表ウィークが明けたあと、ラ・リーガでアスレティック・ビルバオと対戦したレアル・ソシエダ。ここ1カ月調子を上げていたが、このバスクダービーは敗戦。久保建英は先発するも後半15分に交代となった。 今…
現地発! スペイン人記者「久保建英コラム」
代表ウィークが明けたあと、ラ・リーガでアスレティック・ビルバオと対戦したレアル・ソシエダ。ここ1カ月調子を上げていたが、このバスクダービーは敗戦。久保建英は先発するも後半15分に交代となった。
今回はスペイン紙『アス』およびラジオ局『カデナ・セル』でレアル・ソシエダの番記者を務めるロベルト・ラマホ氏に、チームがここ最近調子を上げていた要因および久保のパフォーマンスについて言及してもらった。
【ダービー敗戦もラ・レアルは復調 要因は久保】
イマノル・アルグアシルがレアル・ソシエダの監督に就任してからというもの、アウェーでのバスクダービーは"毎シーズン起こる伝統的な汚点"だと思わざるを得ない(4季続連続悪い内容で敗北)。これはサン・セバスティアンの人々にとって、耐え難い事態となっている。今回のサン・マメスでのバスクダービーも例に漏れず、またしても期待外れの結果に終わった(0-1)。
久保建英はバスクダービーに出場も後半15分で交代した
photo by Kawamori Mutsuo/MUTSUFOTOGRAFIA
それでもここ最近、ラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)は復調の兆しを見せており、それは数字にも顕著に表れている。シーズンスタート時の悲惨な状態から立ち直っているが、その大きな要因となっているのは久保建英だ。
すでにファンタスティックな選手である彼が、欧州のトッププレイヤーになるためにはパフォーマンスをもっと安定させる必要があるが、ここ1カ月はそれを成し遂げ、ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)、ダニ・オルモ(バルセロナ)、ジュリアーノ・シメオネ(アトレティコ・マドリード)、アルナウ・マルティネス(ジローナ)らとともに11月のラ・リーガ月間最優秀選手候補にノミネートされた。今季も成長を続ける彼に対し、それは当然の結果と言える。
シーズン序盤こそ、そのパフォーマンスに疑問を持たれていたが、今ではすべてを克服して一定の能力を発揮している。そしてラ・レアルは彼が生み出すすべてのものから恩恵を受けている。しかし、イマノルが今後も彼の能力を最大限に引き出せるかは、チームが進化し続けられるかどうかにかかっている。
この1カ月、チームが目に見えて改善されたのは、久保が右サイドを起点にプレーをフィニッシュしたりチャンスを演出したりと、攻撃の中心的存在となって継続的に魔法を発揮したからだ。
日を追うごとに成長する久保とともに、ラ・レアルは大きく進化したと言っていいだろう。彼は現在のチームにおいて、最も大きな違いを生み出せる選手であるため、それは偶然ではない。そしておそらく、イマノルは久保がチームに何を提供できるかを熟知しているため、常に他の選手たちよりも少し高い要求を彼に課しているのだと思う。
【コンディションが上がり、チームの守備は安定】
久保以外の要素でラ・レアルが進化を遂げた理由としては、チーム全体のフィジカルコンディションがシーズン開幕時に比べてよりよくなり、より団結できていることが挙げられる。
大前提として、今夏のプレシーズンがラ・レアルにとって悲惨なものだったことを忘れてはならない。代表戦参加により多くの選手の合流が遅れ、補強にも時間がかかり、適切な準備ができなかった。イマノルはそうなるのを恐れて事前に警告していたが、ラ・リーガ開幕にうまく間に合わなかった。新体制のチームに油を差し、すべてのピースを組み立てるための時間が必要だと考えていたが叶わず、スタートダッシュに失敗したのだ。
時間の経過とともに、イマノルの訴えが正しかったことが証明されていく。新加入選手がよりフィットし、守備が安定を取り戻して、少ないゴールを勝ち点につなげられるようになった。守備が改善されたことでチームは大きく成長し、これが今のチームのベースとなっている。
そして何よりもアウェー(7試合3勝2分け2敗の勝ち点11)で好成績を残せているのが大きい。それでチームは命を繋いでいる。というのも、久保がすばらしいプレーを披露したバルセロナ戦(1-0)は別にして、今季はホーム(7試合2勝1分け4敗の勝ち点7)で勝ち点を手にするのに苦労しているからだ。
これから年末にかけては、11月の代表戦前までのような勝ち点獲得のペースを維持するのは容易でないと強調しなければならない(※10月から11月のインターナショナルブレイク間の成績は4試合3勝1敗の勝ち点9)。すでにバスクダービーに敗れ、クリスマス休暇までにベティス、レガネス、ラス・パルマス、セルタとの対戦を控えている。どのチームも1年をいい形で締めくくることを望むため、拮抗した試合が続くだろう。
ラ・レアルにはヨーロッパリーグ(EL)圏内で2024年を終えるという課題がある。だからこそダービーでの痛恨の敗北を引きずらず、気持ちを切り替えて立ち直らなければならない。
【久保は目に見える結果を残さなければならない】
チームが好成績を維持するために、久保に求められることはたくさんある。それは目に見える結果を残さなければならない点だ。みんなの注目を集め、試合の流れを変える選手であることに満足するだけでなく、得点力を向上させ、よりアシスト力のある、決定的な役割を果たす選手にならなければならない。
その最たる例が第12節のセビージャ戦(2-0)だ。アウェーのサンチェス・ピスフアンで解き放たれた彼は、相手の守備陣を狂わせ、得点を決め、マッチMVPに輝いた。彼が集中力を高めた状態で試合に臨めば、ラ・レアルは慢性的に抱えている深刻な得点力不足を解消できるはずだ。現在は、多くの決定機を作り出しているにもかかわらず、ものにできていない状態が続いている。だが守備面は安定しているため、攻撃面の改善が順位を上げる鍵となる。
今季も永遠のライバル、アスレティック相手に酷い試合をしてしまったが、あまり心配する必要はない。あの試合の問題は、ダービーを戦うための適切なエネルギーを注げなかったことだからだ。それ以外はこれまでと似たような状態だった。確かに最初の30分は酷かったが、以降はゲーム内容も改善し、例えラ・レアルが1点を取り返し引き分けで終わったとしても誰も驚かない試合展開だっただろう。
一方で、みんなが驚いたのは久保を早々に外したことだ。確かに前半の出来はよくなかったが、攻撃で何かしようとしたのが久保だけだったのも事実だ。しかも彼は交代直前、パフォーマンスを向上させ、アスレティック守備陣にとって頭痛の種になっていたのは明らかだった。交代させるべきではなかった。
ラ・レアルの改善に関しては多くを語ることができる。そのなかにおいて、久保が安定したパフォーマンスを発揮することが非常に重要となるだろう。
(髙橋智行●翻訳 translation by Takahashi Tomoyuki)