11月23日、ジェイテクトアリーナ奈良。大同生命SVリーグ、2位のジェイテクトSTINGS愛知が本拠地に3位のサントリーサンバーズ大阪を迎えた一戦は、セットカウント1-3で後者が勝利を収めている。「お互い、長所も弱さも知っているなかでの駆…
11月23日、ジェイテクトアリーナ奈良。大同生命SVリーグ、2位のジェイテクトSTINGS愛知が本拠地に3位のサントリーサンバーズ大阪を迎えた一戦は、セットカウント1-3で後者が勝利を収めている。
「お互い、長所も弱さも知っているなかでの駆け引きのなかで......。(コートに)出た選手が勝ちにこだわった結果だと思います」
サントリーの髙橋藍は勝利を収めた試合を簡潔に振り返っている。
上位対決の潮目はどこにあったのか?
厳しい表情で練習に取り組む髙橋藍(サントリーサンバーズ大阪)photo by Go!Yanagawa
実力者同士、拮抗した試合展開になった。
「接戦を続ける」
それが昨季王者であるサントリーがイメージしていた戦い方だった。ジリジリした戦いを想定。勝負どころを探っているようだった。
1セット目、サントリーは半ばまで終始、リードを許していた。しかし、17-17からリリーフサーバーに入った甲斐孝太郎が伸びやかな跳躍から左腕を振り、際どいサーブを連発。ドミトリー・ムセルスキーのスパイク、小野寺太志のクイックを誘発しただけでなく、自らも見事なエースを奪い、21-17と突き放す。その勢いで25-23と接戦を制した。
「サーブのところは、まだまだできると思います!」
開幕前のインタビューで、甲斐は密かな自信をのぞかせていたが、彼のような伏兵の活躍がチームの総力も上げていた。
そして2セット目、サントリーは序盤から強度を高め、鬼木錬のエースなどで、9-5とリードするが、ここから反撃を浴びる。ジェイテクトの宮浦健人に豪快なスパイクを決められ、勝負どころと悟ったような関田誠大のサーブで大観衆の熱気を味方にし、10-8と点差を縮められている。
その瞬間だった。髙橋は手にしたボールを叩きつけ、悔しさを露わにしている。1点の重みというのか、負けを憎む彼らしい。勝負の分かれ目を感じていたのだろう。
昨シーズン、髙橋はセリエAで左足首にケガを負ったが、その違和感により東京グレートベアーズ戦の2試合目から欠場が続いていた。3試合連続でメンバー外となり、前節の広島サンダーズ戦で復帰したばかりだった。髙橋本人は「コンディションは上がってきている」と言うが、トップフォームではないはずだ。
【「"点差をつける"ことを意識」】
しかし、髙橋は逆境で輝く。
そこから自ら押し込んで、サイドアウトを取る。そして得意のサーブで崩し、ムセルスキーのアタックへと旋回。さらに2度にもわたってエースも奪って、15-8と引き離した。
この間、ジェイテクトは2度、タイムアウトを取ったが、流れを変えられなかった。
――ここが潮目だと考えたのか?
試合後の会見、筆者は髙橋にそう訊ねている。
「(力のある)ジェイテクトが相手なので、メンタルのところで(有利になるために)も、出足から"点差をつける"ということは強く意識していました。リードしている時でも、そこはしっかりとフォーカスしていましたね」
その後、サントリーは反撃に遭うが、この点差を生かし、またも25-23で際どくセットを連取した。
3セット目をサントリーは23-25で落としたが、動じなかった。髙橋に代え、アレクサンデル・シリフカを投入すると、戦いの流れを取り戻した。
「相手に盛り返されそうになることもありましたが、パニックにならずに選手たちがプレーに集中してくれました」
サントリーのオリビエ・キャット監督はそう言って、交代がもうひとつの分岐点になったことを説明している。
「髙橋(のプレー)が悪かった、よかった、ではなくて、チームの流れ、勢いを変えたいと思いました。もともと、シリフカには『ウォームアップを』と伝え、交代のタイミングを探っていて、4人のサイド(髙橋、シリフカ、藤中謙也、デアルマス・アライン)をいつ、どう使うか、というマネジメントのところで相手を困らせることができました」
4セット目は、サントリーが序盤からブレイクでリードを重ねた。シリフカの左腕が唸り、小野寺の老練なプッシュが決まり、鬼木のブロック、クイックも効果的だった。最後は、25-14と大差をつけて勝利した。
「サイドアウトを(1本で)切れなかった」と、ジェイテクト陣営が試合後に振り返っていたように、後手に回った。
粘り強く戦いながら、流れを引き寄せられるか。ブレイクを連発できたら、主導権を握れる。その点でサントリーが上回った一戦だった。だが、翌11月24日は、ジェイテクトが雪辱を果たすように3-1でサントリーを下している。宮浦が真価を発揮し、2位を堅持した。
一方、これでサントリーは4位に後退している。だが、髙橋やムセルスキーだけでなく、シリフカが調子を上げ、鬼木や甲斐のような新鋭が台頭し、層を厚くしつつあるのは収穫だろう。王者は勝負を重ねるなかで強くなる。