【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】◆血統で振り返るジャパンC【Pick Up】ドウデュース:1着 天皇賞(秋)の上がり3ハロンは32秒5。今回は32秒7。この決め手は稀有のものです。日本ダービーでイクイノックスに…
【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆血統で振り返るジャパンC
【Pick Up】ドウデュース:1着
天皇賞(秋)の上がり3ハロンは32秒5。今回は32秒7。この決め手は稀有のものです。日本ダービーでイクイノックスに先着しただけのことはあります。
回転の速いピッチ走法はサンデー系らしいストライド走法とは異質で、おそらく母方の影響を受けているのでしょう。母ダストアンドダイヤモンズは現役時代、アメリカでダート6.5ハロンのG2を勝ち、BCフィリー&メアスプリント(米G1・ダート7ハロン)で2着となりました。ハーツクライは産駒の芝平均勝ち距離が1880mというスタミナタイプなので、スピードタイプの繁殖牝馬との組み合わせは好結果を生む傾向があります。
母方にシアトルスルーを持つハーツクライ産駒、という配合パターンは成功しており、同じくジャパンCを勝ったスワーヴリチャードをはじめ、アドマイヤラクティ、ヨシダ、カレンミロティック、ダノンベルーガ、ハーパー、シュンドルボンなどが出ています。
今回は前後半のラップが74秒5-71秒0。前半が後半より3秒5も遅い超スローペースで、天皇賞(秋)(59秒9-57秒4)と似たような流れでした。武騎手は前走と同じように溜めに溜めて、ピッチ走法の馬が勝てる極限の上がり勝負に持ち込みました。爆発的な加速力はピッチ走法ならではです。ピッチ走法は全身の収縮回数が増えるので、長めの距離には向かない傾向があるのですが、それを補っているのが父ハーツクライのスタミナなのでしょう。勝負どころで外から上がっていく脚は凄まじく、いいものを拝ませてもらった、と思いました。
次走、有馬記念で連覇を果たし、1着賞金5億円を上積みすれば、歴代獲得賞金ランキングの首位に躍り出ます。
◆血統で振り返る京都2歳S
【Pick Up】エリキング:1着
2024年のJRA総合種牡馬ランキングはキズナが39億円でトップ。2位ロードカナロアが34億円、3位エピファネイアが29億円なので、このまま逃げ切る公算大です。
キズナは芝・ダート双方で活躍できる種牡馬です。牡牝を問わず、2歳から古馬までまんべんなく稼ぐことができます。理想的な万能型種牡馬といえるでしょう。2歳世代もエピファネイアを抑えて首位に立っており、重賞は札幌2歳S(マジックサンズ)、アルテミスS(ブラウンラチェット)に次いで3勝目。現3歳世代から繁殖牝馬の質・量が大幅に上昇した影響がランキングに反映しています。
エリキングは「キズナ×ハイシャパラル」という組み合わせ。母ヤングスターは芝2200mの豪G1クイーンズランドオークスを勝ったほか、芝2000mの豪G1ターンブルSでは女傑ウィンクスの2着となっています。3代母ユーザーフレンドリーは欧州年度代表馬に輝いた女傑で、母の父ハイシャパラルは英・愛ダービーやBCターフ連覇などG1を6勝した名馬。母は欧州血統主体で底力満点ですが、それでいてオーストラリアの比較的速い芝にも対応しました。クラシック向きの繁殖牝馬としては理想的です。
父がキズナで、近い世代にデインヒル、ダルシャーンを併せ持つ配合は、皐月賞馬ジャスティンミラノ、桜花賞とオークスで3着に入ったライトバックとよく似ています。後者はサドラーズウェルズを併せ持つところまで共通しています。
心身ともに成長途上であり、勝負どころのズブさはいずれ解消されていくでしょう。来年以降さらに強くなるはずです。