文・写真:武田鼎(ラリーズ編集部)2018年秋に開幕が予定されている卓球の新リーグ「Tリーグ」の参加チーム公募が15日からスタートした。この日は12団体が説明会に参加した。そのうち水谷隼、張本智和、大島祐哉、松平健太、田添健汰らが所属する木…

文・写真:武田鼎(ラリーズ編集部)

2018年秋に開幕が予定されている卓球の新リーグ「Tリーグ」の参加チーム公募が15日からスタートした。この日は12団体が説明会に参加した。そのうち水谷隼、張本智和、大島祐哉、松平健太、田添健汰らが所属する木下グループが男女で申し込み、応募第1号となった。

Tリーグは15日、会見を開き、代表理事・専務理事を務める松下浩二氏と理事を務める星野一朗がTリーグの現在の進捗と今後の概要を説明した。

新たにスタートするのは「Tプレミアリーグ」と呼ばれる最上位リーグだ。Tプレミアリーグは「男女各4チームの合計8チーム」からなり、初年度は2018年10月から2019年3月までが開催時期となる。試合形式はホーム&アウェイ方式、およびセントラル方式。また選手との契約はTリーグが定める「統一選手契約書」に基づき、選手との契約を締結するとされている。「基本的にはチームが選手獲得を行うが、海外選手の獲得の場合はTリーグも協力する」と会見で松下氏は語った。



またチームの運営費の「年間2億円程度」について「世界のトップリーグと同じくらいの規模だが、世界一のリーグを作ると掲げている以上、世界トップの選手を集めるのにはこれくらいは必要だ」と語った。

今回木下グループがTプレミアリーグ第一号へと名乗りをあげた。これによって、木下グループに所属する張本選手の参戦も期待されるが、おそらくTリーグ始動時には学生である。これについても「中体連、高体連と詰めていく」と回答するにとどまった。

今後の展開について「Tリーグを作る意義と卓球界へのメリットは?」との質問に対して松下氏は「まず企業名を表に出せることが参入チームにとっては大きい。放映や試合会場での露出などのプロモーション活動はリーグとしてしっかりやっていきたい。その中で地域と密着することを条件にしているので、企業のCSR(企業の社会的責任)としての活動が企業のチームにとって大きなメリットになる」と回答した。

またTリーグを作る意義については「今の環境では、選手が後輩たちに自分の経験を伝えることができないが、Tリーグではそれができるようになる。1983年以降の世界選手権に出た日本代表は52名いるけれども、その中で卓球界で指導しているのは17名しかいない。3分の2の方は現場にいない」と現状の問題点を指摘。「中国のようにトップ選手が現場に残れるのは大きなメリット。Tリーグのクラブが地域に貢献して、子どもから高齢者まで卓球はできるので、地域の方の健康寿命を伸ばすことに貢献したり、地域のコミュニティーを作ることで地域貢献はできると思う」と語った。



2つの課題

会見後、松下氏はラリーズの取材に応じた。現在のリーグ設立については「いいペースで進んでいる」と語った。また「協会内部とも足並みは揃っている。去年の12月に発表した段階でコンセンサスは取れているし、理事も含めて応援してもらっている。ありがたい」とコメント。

また、今後の進捗については、「課題は2つある」とした。

一つが「リーグとしてしっかりとしたスポンサーを抱えることができるか、ということ」と、二つ目が「参入条件を満たしてくれるか」という点だ。

中でも今回発表されたリーグへの参入条件は“かなり高い”と言っていい。1チームの年間運営費は2億円程度ということもさることながら、他にも様々な条件が課せられている。

以下は発表された主要な参入条件だ。
・過去2年以内にワールドランキングのトップ10にランクされた実績を持つ選手1名以上が所属する
・上記の選手を含む6名以上の所属選手を確保する
・専属の監督1名、コーチは1名以上。同一チームでの監督とコーチの兼任は不可
・チームのホームアリーナ、または練習場が所在するなど、活動の拠点となる地域が決定していること
・ホームアリーナは2000人の観客を収容できること。試合開催(興行)が可能であること
・チームの練習場を確保すること
・ホームタウンとする地域の地方自治体の支援文書を得ること
・入会金は2000万円、年会費は1500万円
・若年層を対象とした下部組織を3年以内に持つこと
・入会後5年以上は継続して所属し続けること



「今は外国に頼っている状況」

ここまで参入条件を高く設けるのか。会見と取材時に松下氏が繰り返し語っていたのが「世界一の卓球リーグを実現させたい」という言葉だ。

松下氏はかつての中国を引き合いにだしてこう語る。「超級リーグができる前の1980年代後半から世界トップの選手が次々と海外に流出して出稼ぎに出てしまった。そうして競争力がなくなって中国が弱くなった経緯がある。それではいけないということで1995年に始まって2000年から超級リーグが始まった。すると海外に行っていた選手たちが戻ってきて、強くなった」。

以前から松下氏は日本の卓球を強くしたいと何度も口にしていた。すでに日本のトップクラスのプレーヤーたちは海外でプレーするのが当たり前になりつつある。「彼女とか彼らはなぜ出ていくのか。その目的が国内で対処できるようになれば時間的なタイムラグ、時差もストレスもなくなる。しっかりした強化ができるようになって日本全体が強くなる。経験としてスポット的に外にでるのはいい。でも何年も外に頼っているのはよくない。今は外に頼っている状況」と危機感を露わにする。

現在まだ木下グループが男女でそれぞれ1チームを申し込んだ状況だ。来年までにチーム、選手、運営団体は出揃うのか。引き続き注目が必要だ。