代表戦ウィーク明けのプレミアリーグ、三笘薫所属のブライトン(6位)はアウェーでボーンマス(12位)と対戦した。 前回の代表戦ウィーク明けの試合(10月19日/ニューカッスル戦)では、今季初めてベンチスタートとなった三笘。しかし、この日は一…
代表戦ウィーク明けのプレミアリーグ、三笘薫所属のブライトン(6位)はアウェーでボーンマス(12位)と対戦した。
前回の代表戦ウィーク明けの試合(10月19日/ニューカッスル戦)では、今季初めてベンチスタートとなった三笘。しかし、この日は一転、フルタイム出場を果たした。4-2-3-1のアタッカー陣のなかで唯一、である。10月のW杯アジア3次予選(サウジアラビア戦、オーストラリア戦)では2試合連続先発出場だったのに対し、今回(インドネシア戦、中国戦)は1試合だったことと関係があるかもしれない。
とはいえ、代表戦に出場するために費やした移動の距離と時間は、ブライトンにいる各国代表組のなかで誰よりも長い。時差の問題も加わる。交代出場、あるいは途中交代こそが自然な姿だろう。それがフル出場である。
しかもブライトンは後半14分、中盤のカルロス・バレバ(カメルーン代表)が2枚目の警告で退場処分となり10人になっていた。その時、スコアはブライトンの2-0。逃げきりを図りたいと、後ろを固めることに躊躇(ためら)いのない森保一監督をはじめ一般的な日本人監督なら、左ウイングを削り、センターバックを投入していた可能性がある。
ボーンマス戦で今季2点目となる決勝ゴールを決めた三笘薫(ブライトン)photo by REX/AFLO
試合の話をすれば、ブライトンに先制点が生まれたのは開始4分だった。得点者はジョアン・ペドロ(ブラジル代表)。ダニー・ウェルベック(元イングランド代表)からのパスを受けたジョルジニオ・ルター(元U-21フランス代表)のシュートを相手GKがはじき、それを押し込んだ。
アタッカー4人のなかで、関与していなかったのは三笘ひとり。この先制点のシーンに象徴されるように、少なくとも前半、三笘がチャンスメークに絡むシーンはなかった。ボーンマスの右SBアダム・スミス(元U-21イングランド代表)にドリブルで突っかけていくシーンもなし。ボールにはそれなりに触れていたが、左ウインガーとしての見せ場は訪れなかった。
森保ジャパンにおける最近の定位置は左ウイングバックだ。シャドーのポジションにつく時間もあった。ブライトンを離れていた10日あまり、左ウイングでプレーしていないことで、感覚に狂いが生じたのではないかと心配させられたものだ。後半も、1対1の仕掛けから自慢のドリブル&フェイントを披露する機会は最後までなかった。ブライトンの試合で、それは滅多に見られない稀な姿と言っていいだろう。
【プレス要員としても外せない】
光るプレーを見せたのは、まさに一瞬だった。後半4分。試合を2-0とする、三笘にとって開幕戦(エバートン戦)以来となる今季2ゴール目のゴールを蹴り込んだシーンである。
それまでのパス回しには、ルター→ジョアン・ペドロ→ウェルベック→ジョアン・ペドロと、先制点と同じ3人が絡んでいた。そこに三笘の姿はなかった。消えている状態にあった。ジョアン・ペドロがピッチの中央でウェルベックからリターンパスを受けた瞬間には、その数秒後に三笘がゴールを決めるとは想像さえできなかった。登場の仕方は文字通り神出鬼没だった。
左のライン際から、相手のマーカーのスミスに気づかれぬよう、三笘はするすると忍者のごとく走り込むと、その鼻先にジョアン・ペドロから驚くほど正確なスルーパスが送られてきた。右足のインサイドで放ったグラウンダーのシュートがまた鮮やかだった。逆サイドのポストをめがけて、巻くように放たれた一撃は、フックラインをよく読んだゴルフのロングパットのように、グリーンの芝の上を滑らかに転がりながら、枠内にきれいに吸い込まれていった。
技術の粋(すい)をこらした丁寧かつ繊細なワンタッチ。大袈裟に言えば、これがボーンマス戦で魅せた三笘のすべてだった。光り輝くプレーはこのワンプレーのみ。その絶品の味わいを堪能しつつ、物足りなさを感じたことも事実だった。だが、繰り返すが、三笘はそれでもアタッカー陣のなかで唯一、フル出場を果たしているのだ。
活躍シーンが少なければ、並の選手は腐るものだ。自己顕示欲を抑えきれず、平常心を失って独善的なプレーに走りがちだ。そうやって自らプレーを崩していく選手をしばしば目にするが、三笘はマイペース。淡々と、飄々と、静かにプレーする。相手ボールに対してもマイボールと同じように反応する。だからプレス要員として外すことができない存在なのである。
後半14分、バレバの退場でブライトンは10人になると、ファビアン・ハーツラー監督は、布陣を4-2-3-1から4-2-3へと変化させた。5バックではなく、4-3-2でもないところがミソだった。三笘を相変わらず左ウイングに据えた4-2-3。高い位置からプレスをかけ続けた。
想起するのは、ウルブズ戦(現地時間10月6日)だ。2-0のリードで迎えた後半35分、ハーツラー監督は布陣を5バックに変更。後ろを固める作戦で、逃げきりを図ろうとした。後半43分に1点差にされると、三笘もベンチに下げている。その結果、アディショナルタイムに同点弾を浴び、引き分けてしまった。
その反省からだろうか。この試合は最後まで4バックで突っ張った。しかも両ウイングつきの4-2-3で、である。
ブライトンは後半47分にはデイビッド・ブルックス(ウェールズ代表)にゴールを奪われ、2-1とされる。だが、終了間際、アントワーヌ・セメンヨ(ガーナ代表)に放たれた強烈なシュートは、バー直撃弾に終わる。ブライトンは10人になりながらも攻撃的サッカーを貫き、勝ち点3をものにした。チームに勢いをつかせる勝利。三笘の決勝ゴールにも同様の価値がある。
ブライトンはノッティンガム・フォレストを抜き、暫定順位ながらヨーロッパリーグ出場圏内である5位に浮上した。