”森保ジャパン”はアウェー2連戦となった11月シリーズでインドネシアに4−0、中国に3−1と勝利して、アジア最終予選の勝ち点を16に伸ばした。 2位以下を大きく引き離し、来年3月に行われるホームのバーレーン戦に勝利すれば、3試合を残して北…

 ”森保ジャパン”はアウェー2連戦となった11月シリーズでインドネシアに4−0、中国に3−1と勝利して、アジア最終予選の勝ち点を16に伸ばした。

 2位以下を大きく引き離し、来年3月に行われるホームのバーレーン戦に勝利すれば、3試合を残して北中米W杯への出場が決まる。ここまで最終予選の6試合を通して、3ー4ー2ー1を継続的に使ってきた森保一監督。攻撃的なタレントを両ウイングバックに起用することも大きな特徴となっているが、攻撃に違いを生み出すという役割においては2シャドーが勝負の鍵を握っていることは間違いない。
 ここまでの森保監督の起用法を振り返ると、南野拓実が6試合全てにスタメン出場している一方で、相方となるもう一人は鎌田大地が3試合、久保建英が3試合と完全な使い分けになっている。興味深いのは7ー0で大勝したホームの中国戦を除くと、2シャドーの選手は必ず途中交代していることだ。
 基本的に森保監督は3バックとボランチを固定しながらウイングバック、1トップと共にシャドーも入れ替える。ウイングバックに関してはかなりの上下動を求められるため、体力的な負担が配慮されている側面もあるが、シャドーはより戦術的な意図が大きいと考えられる。

■鎌田大地、南野拓実、久保建英の特徴と違い

 南野を軸としながら鎌田を入れるか、久保を入れるかでどういった違いがあるのか。大きなところから言えば同じ2シャドーでも鎌田は8番に近く、久保は10番に近いプレーを得意とする選手だ。
 南野は9番と10番をミックスした、いわば9・5番のようなアタッカーでありながら、必要に応じて8番的な役割もこなすことができる。そうしたプレー幅の広さを森保監督に買われて、全ての試合にスタメンで起用されているのだろう。
 鎌田と久保の違いに話を戻すと、鎌田の特長はボランチの選手とうまくリンクしながら、ボールに多く触って攻撃のリズムを作れることだ。特に左ボランチを務める守田英正との関係性がよく、左センターバックの町田浩樹のサポートを利用しながら、二人がローテーションのように入れ替わることで、相手のディフェンスを混乱させることができる。特に局面をマンツーマンで守ってくるような相手には効果てき面だ。
 顕著に表れたのが5−0で勝利したアウェーのバーレーン戦で、後半16分にあげた守田のゴールは鎌田を起点に前目でフリーになり、上田綺世に当てたリターンを流し込むという形だった。バーレーン戦の先制ゴールも最後はオウンゴールになったが、守田と鎌田が流動的に絡むことで生まれたゴールだ。
 3ー4ー2ー1でも鎌田がシャドーに入ることで、中盤でボールが回りやすくなる。もちろん、そこから最終的にゴール前まで関わって行くが、ポゼッションを安定させながらコンビネーションを生かして相手を崩すにはうってつけの選手だ。

■南野拓実の柔軟性が生かす“もう一人”

 一方で久保はより前目で仕掛けたり、一瞬の変化を付けることができる選手で、右の大外に流れてウイングバックの堂安律を中で追い越させたり、カットインから左足でシュートに持ち込むプレーも得意としている。
 もちろん必要に応じて鎌田のような中盤に引いてボールを動かすこともできるが、そうしたプレーが常態化することは彼のスペシャリティを生かす意味でも、あまり良いことでないのはボランチの遠藤航なども理解しており、シャドーの久保をできるだけ前に押し出して、チャンスメイクにフォーカスさせたいビジョンが共有されているようだ。
 攻撃のバランスはもちろん、ハイプレスをかける時は4ー4ー2のような形に可変することもあるため、2シャドーに鎌田が入る時は左、久保は右になるのが基本で、南野は鎌田と組むなら右、久保となら左が基本になる。さらに南野は鎌田との2シャドーであれば、できるだけアタッカーとしてフィニッシュに絡むことを心がけたポジショニング、動き出しをしているが、久保と組む時はもう少し幅広く中盤と前線の間を行き来している。南野の柔軟性は鎌田と久保のスペシャリティを生かすトリガーと言えそうだ。
(取材・文/河治良幸)
(後編へつづく)

いま一番読まれている記事を読む