3ー4ー2ー1の2シャドーにおける戦術的な主軸が南野拓実であることは、最終予選の6試合で全て先発起用されていることからも明らかだが、7−0で大勝したホームの中国戦を除く6試合で途中交代していることから、スタメンであっても3バックやボランチ…

 3ー4ー2ー1の2シャドーにおける戦術的な主軸が南野拓実であることは、最終予選の6試合で全て先発起用されていることからも明らかだが、7−0で大勝したホームの中国戦を除く6試合で途中交代していることから、スタメンであっても3バックやボランチのように、90分間のフル出場が想定されているわけではないようだ。

 ただ、それは南野の体力的な配分を考えての交代というだけでなく、豊富なタレントを生かして、攻撃のバリエーションを活用していきたい意図もある。アウェーのバーレーン戦では後半20分に南野から久保に代わり、スタメンだった鎌田と組む形になった。基本的には鎌田が中盤に引き、久保が前目に残ってチャンスに絡むという関係だったが、久保が右ワイドに流れれば二列目の中央に流れて、ボランチの遠藤からスルーパスを受けるシーンも見られた。
 中国戦も途中から南野に代わり鎌田が左のシャドーに入る形で、このコンビが実現している。ただ、すでに3−1とリードしたところから、攻撃では4ー3ー3のような形になることが多く、鎌田がより中盤に引く代わりに、左ウイングバックの三笘薫が高い位置で、右シャドーの久保と非対称の左右ウイングのような関係になり、FW小川航基や後半32分から投入された古橋亨梧を生かす形を取っていた。
 おそらく森保監督のベースとしては南野を軸に鎌田か久保をセットで起用するというのがベースにあり、鎌田と久保のコンビというのは流れを変えるためのオプションの1つなのだろう。

■三笘薫をシャドウで起用

 この3人の組み合わせの他に、2シャドーで使われたのは9月のバーレーン戦で終盤に浅野拓磨が入り、久保と2シャドーを組んでいる。ご存じの通り、浅野は負傷により10月、11月のシリーズでは選外となっており、このポジションのオプションとしては未知数なままとなっている。
 10月シリーズでは南野と鎌田でスタートしたアウェーのサウジアラビア戦で、右ウイングバックで先発していた堂安律が、後半から南野に代わって右シャドーに入り、左の鎌田と組んだ。そこから左ウイングバックから三笘が左シャドーに移り、堂安と三笘というウイングバックでスタートした二人がシャドーで組む形が実現した。
 これは1点を追いかけるサウジアラビアが終盤、リスクを負って攻撃に出てくることを見越して、左ウイングバックに前田大然を投入する代わりに、三笘を2列目に出してカウンターを狙うという意図が反映さえている。
 またシステムの特性上、アウトサイドの運動量による負荷の大きさを考えれば、堂安や三笘をシャドーに回すことで、ウイングバックをフレッシュな選手に代えながら、堂安や三笘を長い時間引っ張るという意図も含まれているだろう。このサウジアラビア戦では後半43分から堂安や三笘に代わり、久保と中村敬斗が投入されて、守備面のタスクと追加点を狙うことで、相手の攻勢を削ぐ役割を果たしている。

森保一監督が狙う三笘・鎌田のオプション

 オーストラリア戦では後半途中から三笘と鎌田が2シャドーを組み、鎌田が初めて右のシャドーを務めた。鎌田自身は左の方がやりやすいと明かしているが、突破力のある三笘とボールを動かせる鎌田で組むとなると、鎌田が右に回るのは仕方がないところだ。このセットは11月のインドネシア戦でも後半の頭から使われており、森保監督としても1つのオプションにしていきたい狙いが伺える。
 インドネシア戦の終盤にはこれまで出番の無かった旗手怜央が、後半34分から最終予選で初めて起用されて、左シャドーとして右の伊東と組んだ。練習でもほとんどやったことがない組み合わせであるはずだが、インサイドにポジションを取る旗手のリンクマンらしい動きと右外に流れる伊東の縦を狙う動きが割と噛み合っていた。旗手に関しては2シャドーの主力である南野、鎌田、久保との組み合わせも見てみたいが、基本的には鎌田と少し役割が被るところもあるかもしれない。
 アウェーの中国戦ではついに、前田も左のシャドーに入り、鎌田と組む形を取った。南野、鎌田、久保の3人をメインに、ウイングバックと兼用の選手も含めて10通り以上の組み合わせが使われてきた。ここから残る4試合で、さらにバリエーションが増える可能性もあるが、膨らませたら固めていく作業も必要になる。”森保ジャパン”の3ー4ー2ー1でも鍵を握る2シャドーの起用法が、ここからどういった展開を見せるのか。世界にも繋がる大事なポイントだ。
(取材・文/河治良幸)

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