J2は38節にわたるリーグ戦が終了し、すでに清水エスパルスと横浜FCのJ1昇格が確定。残る1枠はV・ファーレン長崎、モンテディオ山形、ファジアーノ岡山、ベガルタ仙台の4クラブによる昇格プレーオフの結果に委ねられる。 昇格プレーオフのレギュ…

 J2は38節にわたるリーグ戦が終了し、すでに清水エスパルスと横浜FCのJ1昇格が確定。残る1枠はV・ファーレン長崎、モンテディオ山形ファジアーノ岡山ベガルタ仙台の4クラブによる昇格プレーオフの結果に委ねられる。

 昇格プレーオフのレギュレーションをおさらいすると、準決勝はリーグ戦で3位の長崎と6位の仙台、4位の山形と5位の岡山の組み合わせで、12月1日に上位側のホームで行われる。なお90分で同点だった場合はリーグ戦の順位が上位だった側が勝ち進む。12月7日に予定される決勝も同じ方式になるので、3位の長崎は仮に決勝に進んだ場合もホームで戦うことができ、6位の仙台は2試合続けてアウェーの戦いを強いられることに。山形と岡山はどちらが勝ち進んでも、決勝の相手が長崎ならアウェー、仙台ならホームとなる。
 短期決戦のトーナメントではあるが、やはり最も優位なのは長崎だろう。リーグ戦は最終節まで自動昇格の可能性を残しながら、2位の横浜FCと勝点1差で自動昇格を掴めなかった。
 しかし、アウェーでジェフ千葉に2−1で競り勝った第37節の試合後、下平隆宏監督や長崎の選手たちは最終節で愛媛FCに勝って、あとは他会場の結果で3位に終わっても、ホームで2試合を戦えるメリットを強調していた。

■森山佳郎監督が知る短期決戦の勝ち方

 5連勝中の長崎は新設されたPEACE STADIUM Connected by SoftBank(通称ピースタ)で3試合を戦い、全て勝利している。しかも大分トリニータと鹿児島ユナイテッドに4−1、愛媛に5−2と大勝しており、3試合の得失点差は13得点4失点と圧倒的だ。
 通常、新スタジアムではホームチームも環境に慣れていないので、完全なホームのアドバンテージを得るまで時間がかかるが、現在の長崎に限っては勢いと盛り上がりをそのままピッチ上のパワーに変えているように見られる。
 見方を変えれば、仙台にとってアウェーの長崎戦は完全にチャレンジャーの立場となり、しかもシンプルに90分で勝つしかないという割り切りで臨めることをプラスに捉えたい。仙台もリーグ戦のラスト10試合は5勝2分3敗と、長崎ほどではないものの、悪くない流れで6位に滑り込んでおり、就任1年目の森山佳郎監督も、長く率いたU−17日本代表で短期決戦での勝ち方とマインドを熟知しているのは強みだ。
 シンプルに整理された4ー4ー2をベースに、サイドアタッカーの郷家友太相良竜之介が鋭くボールを運び、リーグ戦13得点の中島元彦が幅広くアクセントを作る。前線はブラジル人FWのエロンが中島と2トップを組むケースは多いが、経験豊富な中山仁斗が勝負どころで決定力を発揮してくるのは長崎にとっても不気味だろう。仙台は3月2日のアウェーゲームを2−1で勝利しており、その試合で決勝点をマークしたのが中山だった。
 セカンドボールを起点に相良が左から上げたクロスボールを中山が、豪快なジャンピングボレーで叩き込んだ。長崎サイドとしては思い出したくもないシーンだろう。今回の試合も基本は長崎がボールを握り、愛媛戦で2得点など絶好調のFWマテウス・ジェズスを中心に、仙台のディフェンスを破っていきたい。おそらく右にマルコス・ギリェルメ、左に笠柳翼という3トップで行くと予想されるが、長期の怪我から復帰してきたスーパーストライカーのエジガル・ジュニオが、終盤のキーマンになる。

■中島元彦が長崎の脅威に

 リーグ戦でJ2トップの74得点をあげている長崎はエジガルを筆頭にベンチパワーが強く、前半も後半も同じペースで攻勢をかけられるが、守備に関しては後半の方が間延びする傾向にあり、実際に前半の3倍近い失点を記録している。
 ただし、リーグ戦と違い、負けなければ勝ち進めるレギュレーションなので、攻撃的なスタイルを標榜する下平監督も、1点差リードや同点で終盤を迎えた場合はクローズを心がけるかもしれない。
 プレーオフの1試合目ということもあり、リーグ戦より堅い入りになることも予想できるが、仙台としては前半のうちに、何とか少ないチャンスから先制点を奪い、攻撃力に勝る長崎を相手に、より堅守速攻を徹底する形に持ち込みたい。やはり頼りになるのはセットプレーで、”両利き”の中島によるキックは長崎にとっても脅威になる。抜群のシュートストップを誇る守護神の若原智哉は頼りになるが、直接ゴールを狙える危険な位置で、仙台にFKを与えることは絶対に避けたいところだ。
(取材・文/河治良幸)
(後編へつづく)

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