今年の東京競馬場での開催もいよいよ最終週。そのフィナーレを飾るのは、国際招待競走のGIジャパンカップ(11月24日/東京・芝2400m)だ。 昨年の覇者イクイノックスのようなズバ抜けた存在はいないものの、今年は実力も勝負気配もある外国招待…
今年の東京競馬場での開催もいよいよ最終週。そのフィナーレを飾るのは、国際招待競走のGIジャパンカップ(11月24日/東京・芝2400m)だ。
昨年の覇者イクイノックスのようなズバ抜けた存在はいないものの、今年は実力も勝負気配もある外国招待馬が参戦。ジャパンカップという大舞台にふさわしい顔ぶれがそろった。
その出走メンバーを見て、スポーツ報知の坂本達洋記者が興奮気味に語る。
「今年の外国馬は、ディープインパクト産駒でGI6勝のオーギュストロダン(牡4歳)を筆頭に、今夏のGIキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(7月27日/アスコット・芝2390m)を制したゴリアット(せん4歳)、昨年のドイツダービー馬ファンタスティックムーン(牡4歳)と実力派ばかり。いわゆる"お客さん"ではなく、勝負にこだわっての来日です。
一方の日本馬は、前走のGI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)を強い内容で勝ったドウデュース(牡5歳)、GIオークス(5月19日/東京・芝2400m)とGI秋華賞(10月13日/京都・芝2000m)を制した二冠牝馬のチェルヴィニア(牝3歳)をはじめ、中・長距離路線の現役トップクラスが集結。アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトの"三冠馬対決"に沸いた2020年以来のフルゲート割れとなりましたが、例年に劣らぬ好メンバーがそろったと言えます」
そして、坂本記者は「主役級の馬が顔をそろえたことで、人気は"一本かぶり"とはならず、ある程度人気は割れるのではないでしょうか」と言って、こう続ける。
「その分、馬券的な妙味は増すと思いますが、海外遠征帰りの面々も逆襲を狙うなど、ひと筋縄ではいかない一戦となりました。こういった馬のなかに穴馬がいてもおかしくありません」
さらに、今年のジャパンカップの行方を検討するうえで「重要なポイントがある」と坂本記者は言う。
「大きなポイントと言えるのは、キレ味が求められる今の東京の馬場です。
先週からCコースに替わって、直線で内を避ける馬が少なくなり、良好な芝のおかげで、速い時計が出る傾向にあります。とりわけ、終(しま)い勝負の馬はこぞって上がり3ハロン33秒台前半の時計をマーク。スローの決め手勝負になった先週の東京スポーツ杯2歳Sでは、勝ったクロワデュノールの上がり33秒3をはじめ、上位を占めた馬はいずれもキレる脚を使っていました。
よくも悪くも日本らしい高速馬場。外国馬にはラクな条件ではありません。ディープインパクト産駒という血統的な裏づけがあるオーギュストロダンにしても、力の要る欧州の馬場での実績がほとんど。過大評価は禁物でしょう。ほか、道悪のGI宝塚記念(6月23日/京都・芝2200m)を勝ったブローザホーン(牡5歳)のような、時計がかかったほうがいいタイプも(今の馬場は)向かないと思います」
そうした点を踏まえて、坂本記者は2頭の穴馬候補を推奨する。1頭目はなんと、GI実績が最も乏しいシュトルーヴェ(せん5歳)だ。
「実績的にはGII2勝と見劣りますが、今年に入ってから3勝クラス、GII日経賞(3月23日/中山・芝2500m)、GII目黒記念(5月26日/東京・芝2500m)と3連勝。その勢いと充実ぶりは無視できません。
ジャパンカップでの大駆けが期待されるシュトルーヴェ
photo by Sankei Visual
前走では、初のGI挑戦となった宝塚記念で11着と大敗しましたが、内容的に度外視していい一戦と見ています。というのも、パトロールビデオの映像を見てもらえばわかると思うのですが、最内の1枠1番発走から終始馬場の悪い内を走らされて、向こう正面でも外のいいところを走れずにいました。
ほかの馬と同様、直線では外へ、外へと進路を取ろうとしていましたが、そのときにはもうガス欠。まったく伸びませんでした。11着という結果も、道悪馬場が向かなかった、と判断していいレースだったと思います。
翻(ひるがえ)って、これまでの戦績が示しているように、決め手勝負になったレースでは非凡なキレ味を発揮。好結果を残しています。目黒記念では斤量58.5kgを背負いながら、4角10番手から外に持ち出すとグングン加速して、上がり32秒9をマーク。前を行く馬たちをまとめて差しきって見せました。
今回はその時と同じ東京コース。キレ味比べの勝負となれば、上位に食い込む可能性を十分に秘めていると思います」
坂本記者が注目するもう1頭は、昨年の皐月賞馬ソールオリエンス(牡4歳)だ。
「決め手を生かせる展開がハマれば、侮れない存在です。昨年のGI皐月賞(中山・芝2000m)を最後に白星から遠ざかっていますが、この春は調教パターンも含めて、いろいろと試行錯誤を重ねていました。GI大阪杯(7着。3月31日/阪神・芝2000m)ではブリンカーをつけて早めに動いていくなど、内回りコースを意識した乗り方をしたりして......。そうした状況にあっては、不発に終わることも納得です。
また、もともと調教ではしっかり動けてしまうため、どうしても坂路調教では疲れが残りやすかった点があります。
そういったことも考慮して、追い切りをWコース中心にするなどして臨んだ宝塚記念では2着と奮闘。馬場や展開が向いたとはいえ、復活の兆しを見せました。
3歳の頃から、古馬になってから本格化しそうと言われていただけに、4歳秋に入って馬自身は完成されてきていると思います。皐月賞で勝利に導き、大阪杯からコンビ復活となった横山武史騎手も『体の芯が入ってきたイメージです。いい成長曲線を描けていると思います』と今週の取材で語っていました。
前走の天皇賞・秋は7着に敗れましたが、管理する手塚貴久調教師によれば、『(最後の直線で)馬込みに突っ込んでいくときに、躊躇するところがあった。日本ダービー(2着)のときもそんな感じだったからね』とのこと。
そこで、ジャパンカップに向けては『やっぱり色気を持たずに(直線では)ちゃんと外に出して、(鞍上には)気楽に乗ってもらったほうがいい結果が出そう』と手塚調教師。続けて『(ジャパンカップには)前走からの上積みを持っていけると思います』と、好イメージを抱いていました。一発があっても......と期待しています」
世界レベルのメンバーがしのぎを削る"府中決戦"。波乱ムードが高まりつつある秋のGIシリーズにあって、ジャパンカップでも思わぬ馬の台頭があるとすれば、ここに挙げた2頭にも注目である。