産業能率大のGKカウン・ゼン・マラ(22=4年)が22日、神奈川・伊勢原市でJ1町田への来季加入内定会見を開き、涙ながらに「まずはみんなに恩返しができるようにがんばりたい」と意気込みを示した。 会見場の後方で母親のチュチュさんが見守る中、…

 産業能率大のGKカウン・ゼン・マラ(22=4年)が22日、神奈川・伊勢原市でJ1町田への来季加入内定会見を開き、涙ながらに「まずはみんなに恩返しができるようにがんばりたい」と意気込みを示した。

 会見場の後方で母親のチュチュさんが見守る中、思いがあふれた。「仲間、両親、先生がいろんなときに支えてくれて本当に僕は幸せ者だと…」。同大サッカー部の小湊隆延監督が「優しい人柄」と表現した通り、マラは真っ先に周囲への感謝の言葉を口にした。

 ミャンマー出身の両親のもと、生まれてから日本で暮らしてきた。決して裕福ではない家庭環境の中、母親は朝8時から夜の22時まで働きながら、翌日の弁当を含めた食事を全て準備。睡眠時間は3~4時間ほどだった。バレーをプレーする妹とともに、スポーツに打ち込まれるよう両親から支えられ、たどり着いたプロの世界。「この日まで一番近くで支えてくれた両親には感謝したいです。お互い切磋琢磨(せっさたくま)して毎日連絡取り合ってくれた妹にも本当に感謝してます」と、時折声を詰まらせながら思いを語っていた。

 190センチの長身と、長い手足のめぐまれた体格を生かしたシュートストップやハイボールの処理が武器。さらに小湊監督は「ロングフィードは今年の大学の中でも1、2を争う」と太鼓判を押す。町田には今年の7月~8月の間で2回にわたって練習に参加。その際、日本代表GK谷晃生を中心としたレベルの高さに刺激を受け、複数の選択肢があった中、自身の直感も信じ町田を選択したという。

 ただ、リーグ最少失点を誇る今季の町田で、絶対的守護神である谷の壁は高い。それでも厳しい道のりを覚悟して、入団を決意した。「これまでにさまざまなクラブに参加させていただいて、それぞれすごくいいところを感じてる中で、1番難しいところに挑戦したいなっていう風に考えた。もうそこで自分が覚悟して戦いに出て、もっとどんどん自分を強くしていきたいなっていう気持ちがまず1番にあった。本当に挑戦っていう気持ちが1番にありました」と明かした。

 町田の丸山竜平スカウト統括責任者は「みなさんもこの数分で感じている人柄、人間性といったものが本当にすばらしい。クラブのために、チームのためにやってくれる選手だと思う。サポータに愛される選手になってほしい」と期待を込める。そんなマラにサポーターに呼んでほしい愛称を聞くと「マラくん」と回答。両親から愛情をたっぷり注がれたマラくんがプロの世界に羽ばたく。