6月シリーズからの3バック導入が好影響をもたらし、2026年北中米W杯アジア最終予選のここまで6試合で22得点という爆発的な攻撃力を見せている日本代表。2022年カタールW杯最終予選は全得点が12、得点者は6人のみで、伊東純也(スタッド・…

 6月シリーズからの3バック導入が好影響をもたらし、2026年北中米W杯アジア最終予選のここまで6試合で22得点という爆発的な攻撃力を見せている日本代表。2022年カタールW杯最終予選は全得点が12、得点者は6人のみで、伊東純也(スタッド・ランス)が4ゴールという偏った状況になっていたが、今回は12人の選手が幅広くゴールを奪っているのだ。

 最多得点者は4ゴールの小川航基(NECナイメンヘン)。ご存じの通り、彼は今年に入って5年ぶりのA代表復帰を果たし、上田綺世(フェイエノールト)に代わるジョーカーとして使われている。11月シリーズだけは上田の不在もあって2戦連続スタメンに抜擢されたものの、トータルの出場時間はそこまで多くない。にもかかわらず、抜群の決定力を示し、得点数を重ねている。
「自分はこのチームで一番点の取れる選手だと思っている」と本人も口癖のように語っているが、まさに有言実行。「FWに求めているのはまず得点」という森保一監督の要求に確実に応えられる人材が出てきたことは、2024年の最も大きな収穫の1つと言っても過言ではないだろう。
 小川と上田は同じリーグに在籍しているが、やはりUEFAチャンピオンズリーグという最高の舞台に立っている上田の経験値を森保監督は買っている様子。しかも上田は東京五輪、2022年カタールW杯経験者で、他の主軸メンバーとの積み重ねもある。その優位性はあるが、小川の頭抜けた得点力を示し続ければ、2025年はエースFWの座が入れ替わることもないとは言えない。2人を使い分けながら戦える状況が理想的ではあるが、今後の動向が興味深い。

南野拓実が発揮するストロング

 最終予選得点数で2位タイにつける南野拓実(モナコ)も、前回予選とは全く違ったハイレベルのパフォーマンスを維持している。前回は突破型でもないのに4-3-3の左MFで起用され、推進力を出せずに悩んでいたが、今の彼はベストポジションのシャドウで水を得た魚のようにイキイキしている。
「自分は1トップと近いところで動いてゴールを狙っていくのが仕事」と本人も言うように、セカンドトップとして自身のストロングを発揮。特に鎌田大地(クリスタルパレス)と並んだ時はフィニッシャーとしての能力を前面に押し出せている。
 今、思えば、カタールW杯でもこういう使い方をされていたら、あそこまで不振にあえぐこともなかっただろうし、新たな10番像を世界の大舞台で舞台で確立できた可能性もある。森保監督も思うところがありそうだ。今、シャドウの主軸として全試合に先発しているのも、過去の反省を踏まえてのことなのかもしれない。。
 いずれにしても、南野がモナコで活躍し続け、鋭い得点感覚をキープしてくれれば、2026年W杯の早期出場決定は全く心配ない。その後は本番での上位躍進に向け、バリエーションを広げ、多彩な攻撃を研ぎ澄ませていくことになる。来年1月に30代に突入する南野が円熟味を増していってくれれば理想的だ。

■物足りない若手の「突き上げ」

 このようにポジティブな要素の多かった攻撃陣だが、やはり物足りないのはパリ五輪世代の若手の台頭が乏しいこと。守備陣の方は22歳の鈴木彩艶(パルマ)が定位置を確保し、高井幸大(川崎)も初キャップを飾るなど、前進が見られたし、チェイス・アンリ(シュツットガルト)など今後の競争に参戦してきそうな人材もいる。
 けれども、前目の選手は東京五輪世代の分厚い選手層を打ち破る若きタレントがまだ出現していない。6月シリーズで代表デビューした鈴木唯人(ブレンビー)も最終予選突入後は呼ばれていないし、9月シリーズに参戦した細谷真大(柏)もその後は選外。2025年こそはフレッシュな人材が出てきてくれないと、本当に日本代表は基本的に前回W杯と似たようなアタッカー陣で世界に挑むことになってしまうだろう。
 そうなると、仮に2026年に過去最高成績を残せたとしても、その後の世代交代がかなり心配になる。来年はW杯への準備に時間を充てられる時間が多くなると見られるだけに、可能性のありそうな若手アタッカーをどんどんトライしてほしい。鼻息の荒い10代~20代前半の選手の出現が待たれる。
(取材・文/元川悦子)

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