2024年の全ての活動を終えた森保ジャパン。9月からスタートした2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選での5勝1分の快進撃が印象的だが、今年の頭を振り返ってみると、アジアカップ(カタール)では出だしから躓き、グループリーグで…

 2024年の全ての活動を終えた森保ジャパン。9月からスタートした2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選での5勝1分の快進撃が印象的だが、今年の頭を振り返ってみると、アジアカップ(カタール)では出だしから躓き、グループリーグでイラクに敗戦。決勝トーナメント突入後には週刊誌報道による伊東純也(スタッド・ランス)の離脱も重なり、最後まで停滞感を拭えず、アジア最強のライバル・イランに力負けした。

「正直、熱量を感じられなかったというか、物足りなさっていうのは感じました。ピッチ上で」と守備リーダー・冨安健洋アーセナル)の発言に象徴される通り、本気でアジアを勝ちにいくという意気込みも闘争心も欠けていた…。そんな印象が色濃く残ったのだ。
 そこで森保一監督が講じた次の一手は、大ベテラン・長友佑都(FC東京)を呼び戻すこと。うまくいっていないチームを変えられる人間がいないという厳しい現実を受け止め、W杯4大会を経験した代表キャップ142試合出場の男を再抜擢。そこから雰囲気がガラリと変わり始めた。
 長友自身はそこから一度もピッチに立っておらず、公式戦となった6月以降は8試合連続ベンチ外という屈辱を味わっているが、それでも練習で一番声を出して盛り上げ、出番激減で苦しむ菅原由勢サウサンプトン)らに魂を伝えてきた。
「チームの雰囲気や試合前の雰囲気作りがあの人がいるといないじゃ違ったものになるのは確か。あの年齢であれだけの経験がありながらも、本人もベンチに入れない悔しさを感じながらも、先頭に立って引っ張ってくれている。その姿勢には尊敬しかないですね」とインドネシア戦で4点目を叩き出した菅原も神妙な面持ちで話していた。9月からの長谷部誠コーチの招聘含め、一体感を再構築したことは大きな一歩。そこは見逃せない点だ。

鎌田大地の在・不在の大きさ

 ピッチ上に目を向けると、アジアカップ不参加だった鎌田大地(クリスタルパレス)が戻ってきたことは絶大な効果があった。昨季ラツィオで不遇の時を過ごしたMFは今夏からフランクフルト時代の恩師、オリヴァー・グラスナー監督率いるチームに加入。プレミアリーグ初参戦を果たしたが、クラブがうまく行っていないこともあり、今はかなり厳しい立場にいる。それでも代表に来た時はその難しさを持ち込むことなく、シャドウの一角で異彩を放っているのだ。
 アジアカップの時も「鎌田がいればもっとボールを落ち着かせられる」「タメを作れる」という声は少なくなかったが、最終予選ではまさにその能力が遺憾なく発揮されていると言っていい。
 南野拓実モナコ)や久保建英(レアル・ソシエダ)らシャドウ陣らの中で、鎌田と旗手怜央セルティック)は数少ないボランチ併用型。特に鎌田は守田英正スポルティング・リスボン)とポジションを入れ替えながらプレーできる優位性がある。
「特に相手がマンツーマンで来たりするようなチームには、選手の入れ替わりはすごく効果的。すごく引かれちゃったオーストラリア戦(10月=埼玉)みたいに外、外になっちゃうと、なかなかゴールシーンが生まれないんで、できるだけ中でワンタッチで崩したり、中で崩して外っていうのが一番理想的だと思う」と本人も前向きなイメージを口にしていたが、ここまでは狙い通りになっている。
 11月の中国戦(厦門)でも彼が後半途中から出てきた途端、連動性が劇的に向上。田中碧(リーズ)のシュートにつながった後半36分の流れるような攻撃などは、鎌田がいてこそ成立する。この男には今後も軸を担ってもらう必要があるが、そのためにも所属先で出場機会を失わないでほしい。目の色を変えてここからギアを上げていくべきだ。

■守田英正「僕自身も数字に貢献したいというのは昔から考えている」

 そして、鎌田と名コンビを結成している守田も1年間で劇的な変貌を遂げた1人。アジアカップ敗戦時に森保監督やコーチ陣にアドバイスを求めた発言は物議を醸したが、ああやってアクションを起こしたことで周囲を取り巻く環境も変化。スッキリした状態で最終予選にのぞめている。
 得点も南野と並ぶ3ゴール。チームでは小川航基(NECナイメンヘン)の4点に続く2位で、川崎フロンターレの大先輩・中村憲剛(川崎FRO)も「守田がこれほど点を取るイメージはなかった」と驚いているほどだ。
「少なからずチームが気を利かせてくれているし、僕1人で打開して点を取った局面とかはたぶん1回もないと思うんで(笑)。みんなの恩恵を受けているだけだと思いますけど、僕自身も数字に貢献したいというのは昔から考えていること。そこに対しては以前より熱があるし、自分にできることの延長線上で点が取れているのは素直に嬉しい」と自信を増している様子。チームの絶対的主力という自覚も強まっており、30歳になる2025年はより攻守両面で存在感を高めるべき。できることなら欧州5大リーグのトップクラブへの移籍も実現してほしいところだ。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)

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