サッカー日本代表は、中国代表とW杯アジア地区3次予選で対戦し、3-1で勝利した。また本大会出場へと近づいた格好だが、今回の試合では、どんなプラス材料と今後、修正すべき問題点が浮かび上がったのか。年内最後の代表戦を終え、4か月もの間が空く次…
サッカー日本代表は、中国代表とW杯アジア地区3次予選で対戦し、3-1で勝利した。また本大会出場へと近づいた格好だが、今回の試合では、どんなプラス材料と今後、修正すべき問題点が浮かび上がったのか。年内最後の代表戦を終え、4か月もの間が空く次戦と、その後のW杯も見据え、ベテランサッカージャーナリストの大住良之と後藤健生が徹底的に語り合った!
■「試した」いつもと違うセット
後藤「今回は、いつもとは違う選手同士の組み合わせも試していたね。右サイドの久保建英と伊東純也の組み合わせもそうだし、左では3バックの町田浩樹とウィングバックの中村敬斗、シャドーの南野拓実というセットだった」
大住「右サイドに関しては、伊東がもっとふだん通りにプレーできていれば、うまくいったんじゃないかな。伊東はちょっとチグハグで、うまく試合の流れに乗れていないように感じた。いつもなら、ボールを持った瞬間に、すごく良い決断力を見せてプレーしている。日本代表だけじゃなくて、クラブでもそういうプレーをしているんだけど、今回はちょっと迷っているようだった」
後藤「先発が久しぶりだったからね。チーム全体の問題もあるよね。後半になって、だいぶ変わったけど」
――ホームチームの中国は、サイドラインの位置をズラしてピッチを狭くしていたらしいので、そういう影響もあったのでしょうか。
大住「そうかもしれないね。ピッチ幅が3メートルも狭くなったら、相手が寄せてくるまでの時間がまったく変わってくるからね。でも一番大きかったのは、相手が予想外の守備の組み方をしてきたことじゃないかな。前回の対戦とは最終ラインと中盤の人数を変えて、スペースをつくらないようにしてきた。予想どおりの試合展開になったら、伊東も逆サイドの中村も、もっと力を出せたかもしれない。そうやって中国は守り方を工夫していたけど、守っていただけ。攻撃では日本の最終ラインの裏に蹴って、不安定さをつくり出そうというくらいしか手がなかった」
後藤「まあ、今大会の中国はラフプレーに走ることはなかったから、良しとしよう」
■最終的に60%を超えた「支配率」
――大住さんは今回目立った選手として久保を挙げていましたが、他にはいますか。
大住「遠藤航だね。ボールを取ってから確実にフリーの選手にパスを通すことで、本当にチームを落ち着かせていた。日本のボール支配率は、最終的に60パーセントを越していたよね」
後藤「AFCのデータによると、68.9パーセント」
大住「そうなったのは、遠藤のところで相手の攻撃を止めていたからだと思う。チーム全体がズルズル下がらなくて済むし、皆が守備に戻らなくていいというのは、体力的にもすごく楽になるよね」
後藤「遠藤がやっていると、あれが当たり前に見えちゃうけど、そうじゃないからね。あとは当然、2点取ったFWだろうね。先制点の場面では、小川航基はニアに2、3歩動いただけで相手を外していたし、強いヘディングを決めたこともすごかった」
大住「あのCKでは、中国は遠藤に気を取られているようだった。遠藤がスペースをつくろうとして動いていて、小川がそれをうまく活かした。技術的にも、素晴らしいヘディングだったよ。日本には、ヘディングがうまい選手はあまりいないから貴重だよね」
■中国との違いは「選手層の厚さ」
後藤「頭で2発だからね」
大住「2点目のヘディングも完璧だったしね」
後藤「そうそう。伊東のクロスも完璧だったけれども」
大住「時間帯も完璧だった」
後藤「1点差に詰められた直後で、あのまま時間が経過するのは嫌だもん」
大住「相手が勢いに乗ってしまうのが嫌だったけど、その流れをうまくつぶした」
後藤「最近の日本代表は、そういうことが多いよね。相手が反撃に移ってきたなと思うと、そこでストップさせてしまう」
大住「このシリーズのインドネシア戦でも、相手が10人になった隙にしっかり点を取っちゃうんだからね」
後藤「そういう意味でも、今の日本代表は強いよ。多少うまくいかない試合でも、ちゃんと点を取って勝ってしまう。決定力不足だ、と言われていた時代があったのに」
大住「その言葉は、日本の辞書から消えたらしいよ(笑)。まあ、中国も主力選手が不在できつかったんだろうけどさ」
後藤「選手層の厚さという、チーム力の違いだよ」