中国戦で後半32分に投入された古橋亨梧は得点こそなかったものの、短いプレー時間で持ち味を発揮するチャンスに何度も絡んだ。鎌田からのスルーパスが惜しくもオフサイドになったシーンに加えて、古橋の特長がうまく表れかけたのが、後半アディショナルタ…

 中国戦で後半32分に投入された古橋亨梧は得点こそなかったものの、短いプレー時間で持ち味を発揮するチャンスに何度も絡んだ。鎌田からのスルーパスが惜しくもオフサイドになったシーンに加えて、古橋の特長がうまく表れかけたのが、後半アディショナルタイム6分のシーンだ。

 相手陣内でボールを回す日本はボランチの遠藤航から左センターバックの町田浩樹にボールをつなぐ。そこから左タッチライン側の三笘薫に縦パスが通ると、そのインサイドで前田大然が追い越してボールを引き出した。カバーに入ったセンターバックのウェイ・ジェンが一瞬早く触るが、コントロールできなかったところを前田がうまく引っ掛けて縦に運び、左足で速いクロスを上げる。
 そこに古橋が飛び込むが惜しくも伸ばした右足が届かず、ボールは右サイドに流れた。最後は右外でボールを拾った橋岡大樹の折り返したボールがやや高く、古橋がヘッドでミートしきれずに、シュートがクロスバーを越えた。
 おそらく三笘から前田に出たパスが相手に触れず、綺麗に通っていたら古橋もジャストのタイミングで動き出して、ちょうどディフェンスラインの裏にボールが抜けるところで合わせることができたはず。ただ、大事なのはサイド攻撃からでも古橋の特長を生かす形が共有されていたことだ。

■古橋亨梧が持つ強み

 このシーンではセルティックの同僚でもある前田が、抜け出す瞬間に古橋のゴール前での動きだしをイメージしてクロスを上げていることが見て取れる。古橋は相手の左センターバックと左サイドバックの間にポジションを取りながら、左からボールが来る流れを見極めていた。
 中国戦で2得点を記録した小川航基のように、競り合いに強く、クロスに対して高さを前面に押し出すストライカーではないが、古橋はタイミングよく動き出して、ディフェンスラインの背後はもちろん、ちょっとしたスペースで相手より先にボールを触ることができる。大きくは”裏抜けタイプ”に分類されるが、古橋の場合は大きなスペースを得なくても、細かい動き出しからのワンタッチでゴールを狙えるという意味では、引いた相手からもゴールを決められるのが特長だ。
 その意味では味方に求められるラストパスやクロスの出し方、球質に違いがあるだけで、戦術的な設計は小川が前線に張っている場合と大きく変える必要はない。ただ、中国戦の終盤のように、日本がポゼッションで相手を押し込めている時間帯はいいが、相手に押し込まれたところからロングボールで起点を作らないといけない時に、小川のようにターゲットマンになることは難しい。今回は怪我で外れた上田綺世と比較したら、なおさらだろう。

■古橋亨梧を起用するセオリー

 もちろん押し込まれた状況からでも、サイドスペースでボールを運びながら古橋の相手マークを外すランニングを生かしたり、流れながらワンタッチで二列目の選手と絡んでゴールに向かうなど、カウンターの形がうまくハマれば、ポゼッションからでなくても古橋の特長は生かせる。
 ただ、基本的には日本がボールを保持できている状況で起用するのがセオリーだろう。また、やはり鎌田のような1つ前で起点になれる選手が二列目にいた方が、古橋も動き出すタイミングを見出しやすそうだ。
 そうしたディテールは今後、世界で勝つことをイメージするほど大事になってくるが、最終予選のこのタイミングで、古橋の生かし方を共有し、断片的ながらも実際のプレーに反映できたことが”森保ジャパン”にとって非常に大きい。
 森保一監督の中でも、古橋を起用するイメージを具体的にできたはず。もちろん日本代表は一人のFWのためにあるわけではないが、欧州のステージで最も得点を決めているストライカーを生かさない手はない。
 3ー4ー2ー1というシステムのベースがある程度、できあがってきている中で、個性のつなぎ合わせを重視しながら、古橋のフィニッシュからチーム全体で攻撃をイメージできれば、北中米W杯での躍進を目指す日本の大きな力になりうる。
(取材・文/河治良幸)

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