11月19日の2026年北中米W最終予選・中国戦(厦門)を3-1で勝利し、2024年代表ラストマッチを飾った日本代表。このゲームで新たに先発に抜擢された5人のうち、両WBに入った伊東純也と中村敬斗のスタッド・ランスコンビと右DFの瀬古歩夢…
11月19日の2026年北中米W最終予選・中国戦(厦門)を3-1で勝利し、2024年代表ラストマッチを飾った日本代表。このゲームで新たに先発に抜擢された5人のうち、両WBに入った伊東純也と中村敬斗のスタッド・ランスコンビと右DFの瀬古歩夢(グラスホッパー)は収穫と手ごたえの両方が見て取れた。
まず両WBだが、厦門白鷺スタジアムのピッチ幅が通常より3メートル程度狭かったことで、相手4バックのスライドが速くなり、大外が空いていると思って攻め込んでも、すぐにマークに寄せられる状況を強いられた。
それに加えて、中村敬斗の左サイドは三笘薫(ブライトン)対策で、相手右SBのヤン・ゼーシャン(23番)と右MFシュー・ハオヤン(7番)が必ず2枚がかりでつぶしに来て、10月のオーストラリア戦(埼玉)のような切れ味鋭いドリブル突破が影を潜めてしまった。
「前半、ピッチが狭いのが結構あって、中国は三笘選手の対策をしてきていて、サイドへのスライドがかなり速かった。つねに2対1の状況で、なかなか前向きで仕掛けることができなかった。オーストラリア戦で自分としてはいい形でできていたので、この前のイメージのままプレーしたかったけど、今日は難しかったように感じましたね」と本人も悔しさをにじませた。
■伊東・中村の同時起用の効果
伊東にしても、久保建英(レアル・ソシエダ)と入れ替わりながらスペースを突こうという狙いは感じられたが、相手に引っ掛かってボールを失うシーンが前半は特に目立った。
「チームとしても個人としても全体的にミスが多い試合だった。中国がうまく守備をしていたし、ピッチの狭さをうまく生かしていたなと思います」と振り返る。
そこから彼らがハーフタイムに話し合ったのは、大外を使うべく、大きなサイドチェンジを増やすこと。前半はほとんどそういう展開がなかっただけに、伊東や南野拓実(モナコ)は中村により強く要求したようだ。
「試合前には『あそこを狙って』って言ってたんですけど、前半はあいつ(中村)のところのプレスが速かったんで、難しかった。後半になっていいサイドチェンジができた。普段そういうのはチームでもやってますけど」と伊東は小川航基(NECナイメンヘン)の3点目につながった崩しに言及した。そうやって2人が日頃からクラブでやっていることを確実に持ち込んでこそ、同時起用の効果が大きくなるのだ。
終盤に前田大然(セルティック)が左のポケットをえぐって古橋亨梧(同)に決定的なクロスを送ったシーンがあったが、それもまさに同じチーム同士の優位性を生かした形。森保監督は前田・古橋・旗手怜央(同)をあまり積極的に同時に使おうとはしていないが、今後はそれも増やした方が得策だ。いずれにしても、伊東・中村のコンビは今後も伸びしろは大きいと見ていい。
■瀬古歩夢が振り返った失点場面
先発抜擢5人衆の最後の1人である瀬古は、3バックの一角として守備重視の入りを見せ、前半31分には田中碧(リーズ)が中盤で失ってカウンターを繰り出された時に間一髪でビッグチャンスを阻止。本人も「前半はよかった」と手ごたえをつかんだという。
しかし、後半開始3分の失点シーンが悔やまれた。あの場面は田中碧が右タッチライン際で奪いきれず、遠藤航(リバプール)もかわされたのを発端にゴール前まで攻め込まれてしまう形だったが、瀬古も中央に走り込んできたシエ・ウェンノン(20番)に寄せに行き、リン・リャンミン(11番)をフリーにさせてしまった。これは右WBの伊東が戻って対応しなければならなかったのだろうが、そのあたりの意思疎通がうまくいかなかった。
「あれは自分が判断した部分ですけど、一歩引いて、相手がスルーしてきたボールを止めることができれば、もちろん局面は違ったと思います」と本人も改善の余地があったこと感じている。守備陣は組み合わせや立ち位置が変わるとスムーズに行かなくなる傾向が強いだけに、最終予選初出場の彼は難しさも多々あったと言える。
今後、冨安健洋(アーセナル)や伊藤洋輝(バイエルン)が戻ってくることを考えると、今回の仕事ぶりだけで定着を勝ち取ったとは言い切れない。所属クラブに帰って攻守両面の強度を引き上げ、プレーの幅を広げる努力を続けるしかない。
終盤に登場した古橋らを含め、森保一監督がここまで大胆に選手を入れ替えて試すのは珍しい。だからこそ、今回のトライを意味あるものにしなければならない。出番を与えられた5人はこれをきっかけに主力を脅かすような飛躍を遂げることが肝要だ。
(取材・文/元川悦子)