2024年の日本代表ラストマッチとなった11月19日の2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選・中国戦(厦門)。日本代表は完全アウェーの雰囲気、狭められたピッチ幅、ピッチ状態の悪さ、レーザー照射や観客乱入といったアクシデントに…
2024年の日本代表ラストマッチとなった11月19日の2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選・中国戦(厦門)。日本代表は完全アウェーの雰囲気、狭められたピッチ幅、ピッチ状態の悪さ、レーザー照射や観客乱入といったアクシデントに見舞われながらも、粘り強い戦いを見せ、小川航基(NECナイメンヘン)が2点、板倉滉(ボルシアMG)が1点をそれぞれ奪い、3-1で勝利。勝ち点を16に伸ばした。
2位グループのウジアラビアがインドネシアに敗れ、オーストラリアもバーレーンと2-2のドロー。勝ち点を伸ばせず足踏み状態を強いられたことで、日本代表は2025年3月のバーレーン戦(埼玉)に勝てば、8大会連続本大会切符を獲得できるところまでこぎつけた。
この日の森保一監督はシャドウの鎌田大地(クリスタルパレス)を久保建英(レアル・ソシエダ)にスイッチする以外は2戦連続スタメンという大方の予想を覆す大胆起用を見せた。右DF瀬古歩夢(グラスホッパー)、ボランチ・田中碧(リーズ)、右WB(ウイングバック)伊東純也(スタッド・ランス)、左WB中村敬斗(同)、シャドウの久保と5人を新たに抜擢。思い切ったターンオーバーを使ってきたのだ。
■田中は鎌田投入後に持ち味出す
特に攻守両面で異彩を放っている守田英正(スポルティング)を外すことには大きなリスクが伴った。案の定、序盤の日本は思うような組み立てができず、相手の激しい球際と寄せに苦しんだ。相手が長いボールを使ってくる中、遠藤航(リバプール)が反らしたボールを田中碧がフォローしたり、逆に田中碧が失ったボールを遠藤が奪い返すといった相互関係は見られたものの、攻めに関してはやや停滞感も拭えなかった。
「3(枚)で回して前進するっていうのが最初狙いで自分高い位置を取ったんですけど、プレッシャーかかりながら運んでたんで、そうなるとタテパスが長いパスになってしまう。そこは4に変えるところも必要だったかなと思いながら、多少は変えながらできたかなと。長いタテを取られた部分はもう少し早く変化をつけるべきだったかなと思います」と本人も狙いを打ち明けた。が、4バックのダブルボランチのようなスムーズさが欠けていたようにも見受けられた。
彼は10月のオーストラリア戦(埼玉)で守田と組んだ時も、3バックの2ボランチ特有の動きに難しさを吐露していた。それを克服するため、10~11月にかけて3バックのチームの動画を数多くチェックし、自分なりに最適解を模索したという。
その成果もあって、確かに遠藤とのコンビはいい部分もあったが、田中碧本来の攻撃力が前面に出たのは、鎌田が入った後半19分以降。板倉、遠藤、鎌田との連携からフィニッシュに持ち込んだシーンなどは理想的な崩しだった。
そういう形を多く出せるようになれば、遠藤・守田と3枚でボランチを回す形も作れるはず。この日は強烈アピールができたとは言い切れなかったが、1つの前向きな布石は打てたのではないか。
■久保建英が口にした収穫とは
一方で、田中碧と遠藤の前にいた久保は前半から攻撃をけん引。右の伊東と立ち位置を変えながら積極的にゴールに突き進んでいった。日本最初のビッグチャンスだった前半25分の中村敬斗のペナルティエリアからの強烈シュートも久保がスルーパスを出しているし、先制点につながった左CKも彼自身が強引なドリブルシュートから奪ったもの。そして貴重な小川の先制弾をお膳立てしたのだから、前半は上々だったと言っていい。
「悪くなかったと思いますね。僕らの理想の入りではなかったですし、また違った理由でやっぱりうまくいかない時間帯がありましたけど、僕個人のところで何回か打開できるシーンがあった。チームが苦しい時、うまくいかない時に個人のところで打開できるっていうのはいい収穫かなと思います」と本人も強調。できることなら、自身のゴールを奪ってくれれば理想的だったが、そこは次への課題と言っていい。
久保がいるとリスタートの精度が一気に上がるというのは大きなメリットだ。彼の左足はやはり相手にとって脅威である。この最終予選で日本のセットプレーの得点が増えているのも、彼の存在とは無関係ではない。
今はまだ鎌田との併用という位置づけではあるが、久保が準主力なのは誰もが認めるところ。2025年はもう一段階ステップアップして、鎌田がやっているようなタメを作り、リズムを変え、周りを生かしながら自らも生きるような仕事ができるような幅を身に着けてほしいものである。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)