佐々木朗希は初の10勝もローテは守り抜けず…中尾孝義氏は「期待が高いので」 ロッテは佐々木朗希投手について、ポスティングによるメジャー球団への移籍に向けた手続きを開始すると9日に発表した。今季は高卒5年目にして初めて2桁勝利をマーク。一方で…

佐々木朗希は初の10勝もローテは守り抜けず…中尾孝義氏は「期待が高いので」

 ロッテは佐々木朗希投手について、ポスティングによるメジャー球団への移籍に向けた手続きを開始すると9日に発表した。今季は高卒5年目にして初めて2桁勝利をマーク。一方で、規定投球回はクリアできなかった。現役時代に中日でMVPに輝き、巨人、西武と3球団で強肩好打の捕手として活躍した野球評論家・中尾孝義氏は、専大北上高(岩手)で監督を務めた際に佐々木の大船渡と公式戦で対戦した経験を持つ。“令和の怪物”の現在地をどう見ているのか。

「成長はしているとは思いますよ。でも、何だろうなぁ……。ちょっと不満だね」。今季の佐々木は18試合に先発し、10勝5敗で防御率2.35。まだ23歳。十分な結果であることは間違いない。それでも中尾氏は「あれだけの素材ですので。他のピッチャーより期待が高くなってしまうから」と、その心を明かす。

 佐々木は上半身の疲労の回復遅れなどで戦線を離れた期間があり、111イニング止まり。1年を通してローテーションを守り抜くことは今年も果たせなかった。エースと呼ぶには「どうだろうなぁ」と、口ごもる。「好不調の波があると、思ったような成績は残せません。良い時は誰だって良い。悪い状態の時にどれだけ踏ん張れるか、なんですよ」。コンディションを保つのも役割と指摘する。

 佐々木は2年前の2022年、完全試合&プロ野球記録を更新する13者連続奪三振を達成した。160キロを超える真っすぐと落差のあるフォークを織り交ぜた圧倒的な投球はインパクトを与えた。その印象が強すぎる事もあるとはいえ、中尾氏には「そこから、ちょっと落ちたよね。そう感じる」と映る。

 今季は与四死球が40に増えた。「敵チームも何回も何回も当たれば、球筋とかも見えてきます。これまでと同じ球でもバッターがボール球を振らなくなれば、フォアボールが増える訳です」。プロの世界は当然、相手を徹底的に研究し対策を練る。その上を行かなければ、進化はあり得ない。

今だとメジャーに「通用するのかなぁ…」“力で抑える”感覚捨て目指したい球質向上

 佐々木は今年のキャンプ直前、契約更改を終えた記者会見で「将来的にメジャーでプレーしたい」と意思を公表。球団は今回、ポスティングを容認した。中尾氏は「行きたい気持ちはわかりますけど。やっぱり、もうちょっと実績を残して行って欲しかった。行く時は、米国でポンとすぐ成績を残せるような力を付けて。今の球だと通用するのかなぁ……。あれぐらいのスピードのピッチャー、向こうはたくさんいるからね」。

 中尾氏は佐々木がより進化、さらにはメジャーで飛躍するには球質の向上が必要という。「みんな球速をすごい意識をしますが、球離れの早い155キロより球持ちのいい指にかかった150キロ弱の方が打者は打ちにくい。初速と終速の差が少ないピッチャーなのかどうか、なんです」と強調する。

 そのためには「いいフォームにならないといけない」と説く。「今が悪いわけではないけれど、まだ力で抑えようとすると球離れが早くなっている。体の軸で投げられるか、どうか。上体じゃなくて、下半身からの回転で軸が回れば腕というのは振れるんです。力で行くと、下よりも上が先に行く。そりゃボールは速くなるかもしれないが、バッターからは見やすくて打ちやすくなる。“力で抑える”感覚を捨てる。そうなれば、長くプレーもできるはずです」。

 さらに中尾氏は「メジャーに今行っても通用するかもしれないけどね。行ってみないとわからない」と揺れ動く。高校の監督時代に激突した当時の佐々木は「ボールは本当に速かったですよ」と特別な存在だ。「朗希のことはずっと気に掛かりますよ」と親のような気持ちで見守っている。(西村大輔 / Taisuke Nishimura)