◆第44回ジャパンカップ・G1(11月24日、東京競馬場・芝2400メートル) 実績十分の外国馬3頭が参戦してきた第44回ジャパンC・G1(24日、東京)には、21年に3冠馬コントレイルを有終Vに導いた矢作芳人調教師(63)=栗東=が、シン…
◆第44回ジャパンカップ・G1(11月24日、東京競馬場・芝2400メートル)
実績十分の外国馬3頭が参戦してきた第44回ジャパンC・G1(24日、東京)には、21年に3冠馬コントレイルを有終Vに導いた矢作芳人調教師(63)=栗東=が、シンエンペラーを送り込む。対戦した愛国のディープインパクト産駒オーギュストロダンなど3頭を「そんなに怖くない」とジャッジした“世界のYAHAGI”は「ひと泡吹かせてやろう」と意気盛んだ。
何も臆することはない。強力外国馬が襲来した今年の世界決戦。しかし、シンエンペラーを送り出す矢作調教師は悠然と構えていた。
「そんなに怖くないですけどね。皆さんが騒ぐほど強いとは思っていません。日本の馬場で走って、日本の馬がそんなに簡単に負けるかよ、と」
世界を渡り歩き、異国で戦う難しさも十分に体感してきたからこそ、言葉には説得力がある。そして、常に口にするのが「日本の馬は強いよ」という言葉。第一人者として中心に立つ日本競馬への愛情は誰よりも強い。
「オーギュストロダンはいかにもディープインパクト産駒だなという感じ。日本の馬場には対応できると思う。ただ、向こうのホームの愛チャンピオンSで、まだ七~八分だったシンエンペラーとあの差【注1】だったからね。他の2頭は東京2400メートルにフィットするとは思えない。挑発を続けているゴリアットの馬主【注2】には『いい加減にしとけよ。俺が叩きつぶしてやる』と言ってやろうかな」
気持ちの高まりは凱旋門賞帰りとなる愛馬への手応えが日増しに深まっているからだ。13日の1週前追い切りは栗東・CWコースで6ハロン81秒2。ラスト1ハロン11秒0は自己最速タイだった。
「(ジャパンCへの)参戦は帰国後の回復が早く、今もすごくいい状態だということが大前提。次に左回りの方がパフォーマンスがいいのではないか、と。東京では2回ともいい競馬で、愛チャンピオンSも左回り。凱旋門賞は特殊な馬場で結果が出なかったが(12着)、愛チャンピオンSのレースぶり(3着)は自信になりました。(坂井)瑠星も『手前の関係で左回りの方がいいと思います』と言うし、JCにしました」
自らフランスのセリで選び、弟子の坂井とともに国内外で豊富な経験を積ませてきた。シンエンペラーは矢作イズムの結晶体と言える3歳馬だ。挑戦者の立場であることは分かっているが、逆境でこそ燃える反骨心が胸の中でうずいている。
「世界のYAHAGI的にはJCは燃えるものがあるというか、毎年使わないといけない舞台だと思っている。そのなかでも人気はないだろうけど、ひと泡吹かせてやろうという思いです。(取材・構成=山本 武志)
【注1】シンエンペラーの凱旋門賞の前哨戦に選んだ愛G1。まだ本調子手前だったが、直線でしぶとく伸び、2着のオーギュストロダンに3/4馬身差まで迫った。
【注2】米国人馬主のジョン・スチュアート氏がXを中心にJC参戦を告知。「東京は大混乱に陥る」「彼に支配される」というメッセージとともに人々が逃げる動画をアップするなど、あおるような内容が多い。