1年目からさまざまな経験をし、プロの厳しさを学んだ度会。(C)産経新聞社笑って、そして泣いた“ゴールデンルーキー”「今年1年を振り返ってみたら、やっぱりもうちょっと出来たかなっていうのが、最後に思うところですね」 ルーキーイヤーを終え、秋季…
1年目からさまざまな経験をし、プロの厳しさを学んだ度会。(C)産経新聞社
笑って、そして泣いた“ゴールデンルーキー”
「今年1年を振り返ってみたら、やっぱりもうちょっと出来たかなっていうのが、最後に思うところですね」
ルーキーイヤーを終え、秋季トレーニングに励む度会隆輝は、真剣な眼差しで心境を言葉にした。
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入団時から天真爛漫なキャラクターで人々を惹きつけた度会。グラウンド上でもオープン戦で首位打者を獲得して開幕スタメンをゲット。オープニングゲームで逆転弾を放つと、翌日にはグランドスラムと鮮烈な活躍を披露。期待を寄せたベイスターズファンを熱狂させた。
しかし、プロの世界はやはり厳しい。アマチュア時代から磨いてきた積極打法の裏をつかれ、徐々に成績は下降。守備でも課題を露呈すると、三浦大輔監督も「苦しんでいる部分がある」と認め、5月16日には1軍の舞台から姿を消した。
ファームでは「打つべきボール」の見極めにフォーカス。フォアボールを取りながら打率.324をマーク。得点圏打率も.455と結果を出し、交流戦残り2カードとなった6月11日に1軍再昇格を果たした。
今度こそと意気込んだ同月は打率.333とファームでの好調さをキープしたが、その後はジリジリと下降線を辿り、先発機会も減少。ペナントレースが佳境を迎えた8月中旬には、ふたたび横須賀(ファーム)に逆戻りとなり、9月下旬にふたたび昇格したものの、代打で結果を残せずにわずか3試合で降格。その後、日本シリーズで招集されたが、緊迫の戦いの中で出番はなし。そのままプロ1年目の幕が下りた。
元ヤクルトの父・博文氏との関係で幼少期から親交があり、横浜高校の先輩でもある鈴木尚典打撃コーチは、今季の度会を「本人が1番わかってると思いますけどね」と心中を察しつつ「まだまだやれる、そういう1年だったと思いますね。可能性をすごい持った選手なんで、この秋オフどういう取り組みしてまた来年につなげていくか。期待はしてます」と頷いた。
ファームでは.347の高打率と成績を残している。それでも「やっぱ違いますから、レベルが」とキッパリと語る鈴木コーチは「取り組み方が甘いですよね」と指摘。「毎日、その試合に入るまでの準備の過程が甘い。うちのレギュラー選手、宮﨑(敏郎)にしろ、佐野(恵太)にしろ、戸柱(恭孝)にしろ、まずその試合に向けての準備を毎日しっかりできてるんですよ」と具体的なポイントを指摘。続けざまに期待しているからこその厳しい言葉を並べた。
「だから隆輝も早くそういう形、そういうことはやれるように自分でならなきゃいけないです。それをコーチがやらせるんじゃなくて自分から必要だからやるっていう意識になってほしい。早く気づかせるのもまだ僕たちの仕事ですけどね」
反面、鈴木コーチは言う。
「1軍で1年目に2割5分(.255)ぐらいでしょ。本当に通用していなかったら2割以下だと思いますし。そういう中で2割5分の数字は残してるから、別に合格じゃないんだけど、見込みはありますよね」
そのポテンシャルは、かつて2度の首位打者に輝いた好打者も認める通り。間違いなくある。
プロの壁にぶち当たった今オフは、あらゆる面での強化に余念がない。(C)産経新聞社
奮起の2年目へ。課題は――
様々な経験を積んだ1年目。チームは日本一の座についたが、登録された日本シリーズでの出場は叶わなかった現実に本人は「嬉しい気持ちはあります。でも自分がやりたかったっていう気持ちもありましたね」と素直な心境を吐露。またファームでは結果を残しながらもがいた一軍の日々を「やっぱりやってる環境も違いますし、雰囲気も全く違うんで……やるべきことは変わらないんですけどね」と回想した。
その上で、「今年1年をもっとまとめると、良かったところも悪かったこのところも見つかったし、見えたので。良かったところもたくさんあったと思います」と語る度会は、前向きに語る。
「悲観的に捉えすぎることはないと思いますけど、その良くなかった部分もたくさん見えたので、そこをどれほど減らして、良いとこをどれだけ伸ばすっていうことを考えてやるだけですね。やれている部分もやれてない部分も両方で明確にわかってますし、そこの差をどれだけ減らすかっていうのが、1軍でももっともっと成績を残す鍵だと思います」
自身が「明確」とする課題については「走攻守すべてですね」とキッパリ。その中で今オフは「両方向に打てなきゃいい成績は残せないので、そこを意識して両方にいい打球を打てるように準備していきたい」とストロングポイントの打撃にフォーカス。ブラッシュアップを目論む。
具体的には「強い打球を引っ張って打てるときは打撃も調子いいと思うんで、そこは継続して意識してやっていきたいところですね。さらに逆方向にもっともっと長打を打てるようにと、今後意識してどんどんやっていきたい部分です」と続けた。
浮き沈みの激しい1年間を駆け抜けたが、約1年前に社会人として挑んだ日本選手権時からの明るさは今も健在だ。「今年は開幕うまくいったんですけど、来年はそのまま開幕からずっとうまくいって、いい状態でシーズンが終われるようにフル回転して頑張りたいと思います。来年のシーズンは今年よりもっといい成績になると思うので、もっともっと頑張って、頑張りたいと思います」と決意を新たにする。
“ハマの一番星”の輝きは、こんなもんじゃない。
[取材・文/萩原孝弘]
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