◆大相撲 ▽九州場所9日目(18日・福岡国際センター) 西前頭10枚目・宝富士が3日目からの7連勝で、2場所連続勝ち越しに王手をかけた。東同15枚目・阿武剋(おうのかつ)をはたき込み。37歳のベテランが、入幕2場所目ながらトップを走っていた…
◆大相撲 ▽九州場所9日目(18日・福岡国際センター)
西前頭10枚目・宝富士が3日目からの7連勝で、2場所連続勝ち越しに王手をかけた。東同15枚目・阿武剋(おうのかつ)をはたき込み。37歳のベテランが、入幕2場所目ながらトップを走っていた新鋭に待ったをかけた。横綱・稀勢の里ら多くの名力士を輩出した1986(昭和61)年度生まれの“花のロクイチ組”唯一の関取が、九州の土俵で躍動。連敗スタートからの優勝となれば、優勝制度ができた1909年夏場所以降で初めて。1敗で首位は琴桜、豊昇龍の両大関に平幕の隆の勝。2敗で新大関・大の里ら5人が続く。
老練さがにじむ相撲だった。宝富士は頭から突っ込んできた阿武剋を受け止めると、左で抱えた。前に出たところをいなし、はたき込み。37歳が1敗で勢いに乗る大いちょうの結えない24歳のちょんまげ頭を止め、「本来の相撲を取れなかったけれど、体に染みついていたものが出た」とうなずいた。
稀勢の里らを輩出した1986(昭和61)年度生まれの「花のロクイチ組」。多くが引退し、この日は先場所限りで引退した振分親方(元関脇・妙義龍)がNHKの中継で初解説を務めた。関取(十両以上)は宝富士のみ。「巡業に行くと同世代が少なくなったなと思う。寂しい」と時の流れを感じることもあるが、「体も動いているのでしっかりやる」と土俵に上がる幸せをかみしめる。
最近でもベンチプレスは190キロを挙げ、スクワットでは280キロの負荷で立ち上がる。春場所を制した同部屋の尊富士は「稽古では腰が重くて、めちゃめちゃ元気。幕内は気持ちをつくるだけでも難しいのに何年もいる。尊敬してます」と明かす。「いつもコツコツと一生懸命やっている。今場所は成果が出ているかな」と宝富士。通算連続出場1317回となり、豊ノ海を抜いて単独史上9位となった。
今年春場所では約12年ぶりに十両へ転落したが、今場所は昨年夏場所以来となる前頭10枚目まで戻してきた。今場所は19年秋場所以来、約5年ぶりの7連勝で琴桜ら首位と1差をキープしたが、「できすぎです」と謙虚な姿勢を崩さない。優勝制度ができた1909年夏場所以降、初日から2連敗の優勝力士はゼロ。「その日の相撲にかけている」というベテランが、1つずつ勝ち星を重ねていく。(山田 豊)