「超速」を目指す上では齋藤をいかに生かすかが肝だ(C)Getty Images 11月16日にラグビー日本代表(以下ジャパン)は、ウルグアイ代表(以下ウルグアイ)とテストマッチオータムシリーズの第3戦をフランスのシャンベリーで行い36-20…
「超速」を目指す上では齋藤をいかに生かすかが肝だ(C)Getty Images
11月16日にラグビー日本代表(以下ジャパン)は、ウルグアイ代表(以下ウルグアイ)とテストマッチオータムシリーズの第3戦をフランスのシャンベリーで行い36-20で勝利した。両国の対戦は2022年6月以来2年ぶりで通算成績はジャパンの5勝1敗。ジャパンは初対決で敗戦を喫して以降5連勝となった。
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ランキング下位協会であるウルグアイ(この試合開催時の世界ランキング19位。ジャパンは14位)とのこの対戦は、勝利することはもちろん、試合内容の充実が求められる一戦だったが、最終的に点差は開いたものの、内容的には、決して快勝ではなかった。いや、ハイパフォーマンスユニオンの一つと認定されたチームにしてはお粗末な試合内容だったと言って良い。
ジャパンの意図した攻撃は数多く失敗した。それもパスミスやセットプレーでのミスで自らチャンスを手放すシーンばかりが目立った。残念ながら「超速ラグビー」という理想像以前に、まだチームとしての一体感が醸成されるまでに至っていない印象だった。2027年のW杯を見据えた強化の途上であること、また怪我人の発生で不慣れなポジションに起用されたプレーヤーが多いことや経験の浅いプレーヤーを起用せざるを得ないという事情を差し引いて考えても、ファンが心から喝采を送れるような一戦ではなかった。
まず、強みの一つであるはずのセットプレーが安定しなかった。スクラムは右プロップの為房慶次朗が2回反則を取られたが、相手の左プロップがレフェリーの「SET」コールの直後に、ほんの一呼吸インパクトをずらすことによって、相撲で言うところの「引き落とし」のような状態となって膝をついてしまったことをコラプシングと判定された。相手の駆け引きにしてやられたのだ。スクラムでの攻防が試合展開のみならずジャパンの士気に大いに影響を及ぼすことを研究してきたウルグアイによる老獪な「肩透かし」。ラインアウトでも列に並んだプレーヤーが極端にスローワー近くに詰めて立つことでスローワー原田衛にプレッシャーをかけてスローミスを誘ったシーンを含め、3本相手にボールを確保された。ここ数試合比較的安定していたラインアウトだったが、ちょっと相手に策を講じられるとミスを連発するという脆さがあることを露呈してしまった。
そして苦戦の最大の要因が、フランス戦で致命的となった集散の遅さだ。本来なら密集から出てきたボールをさばくことでチャンスを演出する役割であるはずのSH齋藤直人がボール確保のために密集に入り込まねばならない場面が多々観られた。密集にいち早く到達した斎藤の「まずボールを確保する」という選択は正しくはあるのだが、こういう場面ばかりでは「超速ラグビー」の生命線であるはずの攻撃のテンポがブツ切れになってしまう。
また、ウルグアイはスキルもフィットネスもなかったが故にターンオーバーを喰らうシーンは少なかったが、ランキング上位国は容易にターンオーバーを果たし、その後一気にトライにまで持っていくスキルを持ち得ている。FLやCTBなど密集近辺での仕事の機会が多いプレーヤーのスピードアップとフィットネス向上は緊急かつ最大の課題であろう。
後半25分にはLOワーナー・ディアンズがハイタックルの反則でレッドカードを受け、ジャパンは残り15分を14人で戦うことを余儀なくされた。幸い、前半から長所であるフィジカルを活かすために強引な突進を繰り返してきたウルグアイの方がスタミナ切れしていたために逆転されるまでには至らなかったが、サマーシーズンのジョージア戦を思い出してヒヤヒヤした方も多かったのではないか。一連の流れの中でのプレーゆえに仕方ない部分もあるが、常にギリギリの戦いを強いられているジャパンにとっては一人の欠員はそのまま敗戦に繋がりかねない大きなピンチとなる。重大な反則とならないタックルの習得には修練を重ねるしかない。
数多くのチャンスを潰しながらも、5本のトライを取り切った攻撃は評価できる。特に後半の最後で相手のミスキックから松永拓朗がカウンターアタックを仕掛け、最後は切り札のディラン・ライリーにつないだトライは見事で、少しはジャパンファンの溜飲を下げるのには役立ったのではないだろうか。本来なら、こういうシーンをもっと数多く出現させ、点数差も30点くらいつけて欲しかったというモヤモヤはどうしても残ってしまうのだが。オータムシリーズも残り1戦。最後のイングランド戦ではより充実した試合を見せて欲しい。
[文:江良与一]
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