”完全アウェー”の環境でインドネシアを相手に4−0の勝利を飾ったサッカー日本代表。序盤や後半の立ち上がりは相手側にカウンターから何度も危ないシーンを作られるなど、決して簡単な試合ではなかったが、DF谷口彰悟とFW上田綺世という攻守の要を欠く…

”完全アウェー”の環境でインドネシアを相手に4−0の勝利を飾ったサッカー日本代表。序盤や後半の立ち上がりは相手側にカウンターから何度も危ないシーンを作られるなど、決して簡単な試合ではなかったが、DF谷口彰悟とFW上田綺世という攻守の要を欠く状況でも、しっかりとチームの闘い方をオーガナイズできたのはキャプテンの遠藤航と相棒の守田英正という2ボランチの仕事が大きい。

 ただ、現時点では絶対的とも言える2人の安定感は、3人目・4人目にチャンスが与えられにくい状況も生んでいる側面はある。これは”ザックジャパン”における長谷部誠遠藤保仁の関係に少し似たところがある。
 この試合は5ー4ー1のブロックを作るインドネシアに対して、日本がイレギュラーなピッチコンディションの中でも、ボールを握る時間が長くなることは明白だった。遠藤と守田は2ボランチと言っても、基本は遠藤がアンカーのように中央で攻守のバランスを取り、その分、守田が幅広くボールに関わり、ウイングバックや2シャドーに3バックと連動していくのが基本だ。日本が実に16本のパスを繋いで、結果的に相手のオウンゴールとなった前半35分の流れでも、その役割分担はよく表れていた。

■守田英正と遠藤航の役割関係

 左のスローインから中央、右サイド、GKの鈴木彩艶を経由して中央、左サイドと展開していく流れで、守田は一度、右サイドで堂安律と絡みながら、中央に生じたスペースを使ってゴール前で町田浩樹の効果的な斜めのパスを引き出して、3人目の動きでディフェンスの合間を狙う鎌田大地にパスを通した。
 結果的に最後はフィニッシャーになるはずだった小川航基に競りかけたジャスティン・ハブナーが押し込んでしまう形となったが、守田の関わり方は見事だった。
 その一方で、遠藤は1つ手前のところで、町田に前を向かせるパスを出しおり、守田と遠藤が異なる形で絡んだことになる。そこも、遠藤のバランスワークがなければ守田が流動的に関わるのは難しいし、逆に言えば守田がそうした幅広い動きができるからこそ、遠藤は中央にどっしりと構えていられる。
 もちろん2ボランチなので、彼らの役割が逆転することもあれば、あまり型にハマりすぎないでファジーに振る舞うこともある。基本的な役割分担が明確にあるからこそ、そこから状況の変化を共有して柔軟に振る舞うこともできる訳だ。
 守田は「最初から僕が前に入れるなら入るっていう話をしてて。(鎌田)大地が相手の脇というか、サイドに流れるプレーだったり、真ん中に降りてきたときには自分が上がるみたいな話はしていましたし、言わなくても自分たちのコンビネーションとか、今まで培ってきた関係性はあるので。それが僕たちの特長の1つですし。スムーズにそこをローテーションしながら。相手がミラー(のシステム)で来てた部分もあったので。どこにスペースがあるかもわかってました」と振り返る。

■ザックジャパンと異なる部分

 つまり3ー4ー2ー1の左シャドーを担う鎌田が、必要に応じて守田と入れ替わることにより、日本とミラーのようなインドネシアの守備を意図的にズラして、中盤の左側にスペースを作る状況を生んだわけだが、こうしたメカニズムも長谷部と遠藤に香川真司を絡めた”ザックジャパン”にリンクするところがある。
 チームとしての大枠はありながらも、人と人の繋がりのところが噛み合うことで、機械の歯車のようにうまく連関していく。”森保ジャパン”が高評価に値するのはこうした関係をウイングバックやシャドーなど、多少の選手が入れ替わる中でも、ある程度うまく構築できていることだ。
 左シャドーのポジションに鎌田が入るのと三笘薫が左ウイングバックからシャドーにポジションを移すのではボランチの関わり方も多少違ってくる。
 しかし、守田は「選手の特長は最大限、生かしてあげたいなというのはボランチの醍醐味というか、仕事の1つだと思っている」と主張するように、シャドーやウイングバックの特長に合わせて、ポジショニングやボールへの関わり方をアジャストすることができる。それはバランスをとる側の遠藤にも言えることで、最終予選を戦う中で良くも悪くも固定化が進んでいた、当時の”ザックジャパン”とは異なる部分だ。
(取材・文/河治良幸)
(後編へつづく)

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