「今日はワタルくん(遠藤航)と一緒に組んだ分、ワタルくんが真ん中でいてくれるからこそ自由に動ける。そこは自分からバランス崩しに行っていい関係性だったので。より仕事できたかなっていうのはあった」 そう守田英正が振り返るように、2026FIFA…
「今日はワタルくん(遠藤航)と一緒に組んだ分、ワタルくんが真ん中でいてくれるからこそ自由に動ける。そこは自分からバランス崩しに行っていい関係性だったので。より仕事できたかなっていうのはあった」
そう守田英正が振り返るように、2026FIFAワールドカップアジア最終予選の第5戦・インドネシア戦では改めて遠藤航と守田がサッカー日本代表の大きな歯車であることを示したわけだが、遠藤が体調不良で欠場したオーストラリア戦では、守田と田中碧の関係がスムーズに行かなかった。
その理由を守田は「アオがどうだっていうわけじゃなくて、自分が舵取りを間違えたかなっていう。ただ結果論というか、あれがもちろんチームとしてうまく行って、例えばセンターバックの脇の選手が、サイドバック化して持ち運んでみたいなのだったら、もっと進めていっただろうし、なので、今日はその戦い方がうまく行った。それだけの話かな」と主張した。
遠藤は「大地は結構、間で落ちてとか、間でターンしてとか、ちょっと、自分との距離感を近くして数的優位を作るみたいなのがかなり得意というか、そこの距離感を良くしてプレイしたいというのがあったと思うので。そこはうまく、モリと含めて、関係性は良かったと思うし。後半は最初、ちょっと、ポジションが逆になったりと言うのはありましたけど、基本的に悪くはなかった」と振り返る。
■森保ジャパンの起用法の軸となる部分
田中個人はイングランドのチャンピオンシップ(イングランド2部に相当)という新たな環境で、非常に目立った活躍をしており、ステージが違うと言ってもリバプールでなかなか出番のない遠藤よりも、コンディション面では田中の方が上かもしれない。
しかし、ボランチの仕事として自分たちのところで、うまく関係を構築できていないと、これだけウイングバックやシャドーが入れ替わるチームに、中盤から安定感をもたらすことは難しい。
ここまで最終予選において、ボランチに交代があったのは7−0で勝利したホームの中国戦と5−0のバーレーン戦だけで、前者はすでに4−0になった状況で遠藤から田中、後者は試合の終盤に、守田に代わって鎌田がシャドーから下がる形を取った。それだけボランチは”森保ジャパン”の心臓であり、ボランチが安定していることが、ウイングバックやシャドーをフレキシブルに入れ替えられる条件となっていることが、森保監督の起用法からも伝わる。
守田と田中の関係も、試合を重ねていけば間違いなく改善するはずだが、予選突破が確定していない現在では勝利から逆算して現在のベストチームを組んでいくやり方を指揮官も変えにくいだろう。最終予選でまだ一度も出番がない藤田譲瑠チマであればなおさらだ。さらに言えば、ボランチを固定させているからこそ、ウイングバックとシャドーの組み合わせによる変化や効果が見えてきやすいというのもあるだろう。
■中国戦で選手の入れ替えは?
今回はインドネシア戦が金曜マッチになった分、そこから飛行機での移動を含めた中3日で、アウェーの中国戦という過密日程であり、森保監督が遠藤か守田をベンチスタートさせて、そのほかの選手にチャンスを与えることも選択肢になりうる。
その上で、例えば遠藤と田中のコンビであれば、基本的に遠藤の役割は変わらず、田中の幅広い攻撃参加や3列目からラストパスやシュートでゴールシーンに絡める特長を引き出せるだろう。ただ、守田が周囲の主力選手と構築してきたリンク感という部分では、多少のセットバックにも目をつむる必要があるだろう。
守田と田中の場合はオーストラリア戦のように役割を曖昧にするよりも、基本的な役割分担を決めておいて、必要に応じて逆転させるといった意識の共有が鍵になる。ボランチの固定化はチームの完成度を高めながら、周りのバリエーションを増やすのに有効であるし、それが最終予選での好成績にも寄与してきたかもしれないが、最終予選の突破が見えてきた状況で、森保監督がどうコントロールしていくのかが、今後の注目どころだ。
(取材・文/河治良幸)