2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選・C組でダントツトップを走っている日本代表。11月15日の第5戦・インドネシア戦(ジャカルタ)で勝てれば、オーストラリア・サウジアラビア・中国の2位グループとの勝ち点差を7に広げられるチ…
2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選・C組でダントツトップを走っている日本代表。11月15日の第5戦・インドネシア戦(ジャカルタ)で勝てれば、オーストラリア・サウジアラビア・中国の2位グループとの勝ち点差を7に広げられるチャンスだったが、実際に日本代表は前半だけでオウンゴール、南野拓実(モナコ)のゴールで2点をリード。さらに後半に守田英正(スポルティング・リスボン)と菅原由勢(サウサンプトン)が得点を重ね、終わってみれば4-0で圧勝。首位独走状態がより鮮明になったと言っていい。
今回のゲームはご存じの通り、攻撃の軸を担ってきたエースFW上田綺世(フェイエノールト)が負傷離脱し。彼に代わるFW陣がどのような働きを見せ、チームに新たなエッセンスをもたらすかが1つの大きな見どころだった。
11月シリーズに向け、森保一監督は小川航基(NECナイメンヘン)、大橋祐紀(ブラックバーン)、古橋亨梧(セルティック)という3人のFWを招集。だが、最終予選は基本的にメンバーを固定して戦うことを明言している指揮官が、試合出場実績の乏しい大橋と古橋を先発に抜擢するとは考えられなかった。
■「崩しても点を取る人がいなかったら意味がない」
そしてふたを開けてみると、やはりここまで全試合途中出場で、9月のバーレーン戦(リファー)と10月のサウジアラビア戦(ジェッダ)でそれぞれ得点している小川がスタメン入り。最前線に陣取り、2シャドウの鎌田大地(クリスタルパレス)や南野らと連携しつつ、ゴールを狙う形になった。
序盤から一方的にボールを保持し、押し込んだ日本だが、開始15分くらいまではパスをカットされ、カウンターを食らうシーンが続き、嫌なムードも流れた。それでも鈴木彩艶(パルマ)のビッグセーブなども奏功し、0-0のまま試合が推移していく。
そこで小川が大仕事を見せたのが、前半35分の先制点のシーン。町田浩樹(サンジロワーズ)の斜めのボールを守田が反転しながらさばき、そこに鎌田が侵入。DFをかわして折り返したところに背番号19が飛び込んだのだ。これは相手DFハブナーに当たってオウンゴールになったが、守田と鎌田、小川の3人が流れるような連携連動を見せた結果、生まれた得点だったのは確かだ。
「ボックス内を固められた中で、結局、崩しても点を取る人がいなかったら意味がない。しっかりと点を取れる一番危険なところに入っていくということは意識してたんで、ああいうのは自分の特徴でもあるし、たまたまのゴールではないと思ってます」と小川は自信をのぞかせた。それこそが彼が持ち合わせているストライカーの嗅覚なのだろう。
そうでなければ、この試合に挑む時点で代表7試合で7ゴールという数字は残せない。今回の1点は惜しくも数字にカウントされず、彼の代表アウェー戦連続ゴール記録も途切れてしまったが、「自分はこのチームの中で一番点の取れる選手だと思っている」という口癖の通り、怖いところに侵入できる力というのをこの日の小川は改めて示したと言っていい。
■ポストプレーでの手応え
それに加えて、本人はポストプレーでも多少なりともできた部分があったと考えている様子だ。
「相手が捕まえづらいような位置でのポストプレーは少なからずあったし、場面としては出たかなと。それが自分のできるところでもあると思うので」と本人も一定の手ごたえはつかんだという。
けれども、その仕事を90分間高いレベルで表現し、インドネシアを圧倒できたかというと、まだ物足りない印象も拭えない。それができない限り、2022年カタールW杯メンバーでUEFAチャンピオンズリーグ参戦経験もある上田から定位置をつかみ取るのは難しい。周囲との意思疎通をより密にして、もっともっと重要局面で目に見える仕事ができるように、小川自身が働きかけていくべきだろう。
「もっと味方とすり合わせていかなきゃいけないところが沢山ありますし、まだまだ全然満足できない。得点に対してもそう。もっともっとやらなきゃなって思っています」と目をギラつかせた小川。その鼻息の粗さを19日の次戦・中国戦(厦門)でも色濃く押し出し、今度こそゴールという結果を残してほしいものである。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)