秋の「マイル王決定戦」GIマイルCS(京都・芝1600m)が11月17日に行なわれる。 マイルCSと言えば、かつては"固いGI"の代名詞だった。それが、2000年代に入ってから"荒れるGI"へと変貌。直近10年の結果を見ても、1番人気は2…
秋の「マイル王決定戦」GIマイルCS(京都・芝1600m)が11月17日に行なわれる。
マイルCSと言えば、かつては"固いGI"の代名詞だった。それが、2000年代に入ってから"荒れるGI"へと変貌。直近10年の結果を見ても、1番人気は2勝、2着と3着が各1回と信頼度は低く、波乱含みのレースとなっている。
ちなみに、勝った1番人気はともに名牝グランアレグリア。ということは、それほどのクラスの馬でない限り、1番人気には応えられない、と見てもいいかもしれない。
そして今年は、昨年の覇者ナミュール(牝5歳)、昨年のGIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)を制したブレイディヴェーグ(牝4歳)、さらに外国調教馬としては13年ぶりの出走となるチャリン(牡4歳)らが人気の中心となると想定されている。すなわち、いまだ日本のマイル戦線は断然の主役が不在。再び、ひと筋縄とはいかない一戦となりそうで、"荒れる"ムードが充満している。
そんななか気になるのは、今年出走したGI5戦で3勝、2着2回という好成績を残しているチャリン。日本馬に"王者"不在のなか、あっさりということはないのだろうか。その点について、日刊スポーツの太田尚樹記者はこんな見解を示す。
「チャリンについては、ちょっと手を出しづらいと思っています。3勝したGIはすべて直線競馬。加えて、前走のGIクイーンエリザベス2世S(10月19日/アスコット・芝1600m)の勝ち時計は1分45秒9と、日本とは異質の馬場での勝利が多いです。輝かしい実績をそのまま鵜呑みにすることはできません。
体形や走りを見ても、パワー型。日本のスピード競馬への対応は難しいのではないでしょうか。好走するには、雨がほしいところです」
そうなると、絶対視できるだけの存在は今年もいない。では、穴馬探しのポイントはどういったところにあるのか。太田記者はこう語る。
「今年のメンバーを見渡すと、後方待機の有力馬が多い印象です。人気のナミュールやブレイディヴェーグをはじめ、ジュンブロッサム(牡5歳)、セリフォス(牡5歳)、ソウルラッシュ(牡6歳)......、どれも中団より後ろで運びそうです。
先週のGIエリザベス女王杯では、不利もありましたが、単勝1.9倍という圧倒的な支持を得ていたレガレイラが5着に敗れました。同馬と同様、今回も中団より後方の馬が差し届かない、という場面は十分に考えられます。となれば、今週も波乱を呼ぶのは、先行馬と見ます」
そこで、太田記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。
「まず注目したいのは、エルトンバローズ(牡4歳)です。昨年は中団前方で運んで4着。3歳馬ながら、追い込み馬が上位を占めた厳しい展開で健闘しました。
その後、今季上半期は苦戦が続きましたが、前走のGII毎日王冠(10月6日/東京・芝1800m)では大外枠発走を強いられながら、3着と復調気配を見せました」
マイルCSでの一発が期待されるエルトンバローズ
photo by Eiichi Yamane/AFLO
毎日王冠でエルトンバローズとコンマ1秒差の2着だったのは、ホウオウビスケッツ。同馬は次走のGI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)で見せ場十分の3着と好走した。その比較からも、エルトンバローズの実力は侮れない。
「管理する杉山晴紀調教師も、『毎日王冠の前あたりからようやくよくなってきた。状態は昨年と同じか、それ以上』と手応えを口にしています。
マイルCSは続けて好走する"リピーター"が多いレースですから、昨年の4着善戦は好材料。展開面を考えても、先行できるのは有利に働くのではないでしょうか」
太田記者が推すもう1頭は、マテンロウスカイ(せん5歳)だ。
「2走前の毎日王冠では、直線で包まれてほとんど追えずの8着に終わりましたが、前走はハイレベルな天皇賞・秋で5着と奮闘。2着とコンマ1秒差、3着とは同タイムですから、内容的にも高く評価できます」
勝ち鞍5戦は、いずれも右回り。左回りでも好走できたのは、調子がいい証拠だろう。
「同馬を管理する松永幹夫調教師曰く、『スタートのいい馬』。ペースがそれほど速くならなければ、マイルの流れにも戸惑うことはないでしょう。好スタートから好位置につけての一発に期待したいです」
混戦のマイル戦線。いよいよ"絶対王者"の誕生となるのか。はたまた、今年も波乱の決着となるのか。後者であれば、ここに挙げた2頭に要注意である。