元西武の投手で、プロ野球界からボートレーサーに転身した野田昇吾(31)=埼玉・131期・B1=が奮闘している。2022年に戸田ボートでデビューを飾ってから2年。過酷な減量と懸命に向き合いながら、異例の挑戦を続ける男の現在地に迫った。 前期…
元西武の投手で、プロ野球界からボートレーサーに転身した野田昇吾(31)=埼玉・131期・B1=が奮闘している。2022年に戸田ボートでデビューを飾ってから2年。過酷な減量と懸命に向き合いながら、異例の挑戦を続ける男の現在地に迫った。
前期勝率2・31。この数字の持つ意味は、誰よりも野田自身が分かっている。これは出走回数50以上を記録した1500人中、1444位の成績。131期の同期選手と比較しても24人中、21位だった。石本裕武(大阪)、石渡翔一郎(東京)といった有望な若手はすでに勝率5点台を取っており、現状では大きな差が生まれている。
「野球は自分の体を使う。ボートはエンジンと舟を使うんで、感性というか、そこら辺が全然違う」と野田。現在の課題はスローからのスタートで「質のいいS(スタート)がいけていない」と分析した。平均ST(スタートタイミング)自体は前々期の0・19から前期0・17と上がっているものの、いかに勘通りの全速Sでスリットを切れるかに腐心している。
選手会には「競走の公正確保および競技水準の向上化に関する規定」があり、4期(2年)通算勝率が3・80を下回ると引退勧告がなされる。事実上のクビ宣告だ。ただ、デビューから3年以内の新人は対象外。野田ら131期の場合、生き残りを懸けた戦いはデビューから3年が経過した2025年11月から始まることになる。まだ1年の猶予があるとはいえ、このままの勝率では選手の道が絶たれてしまう。
野田の師匠である須藤博倫(埼玉)は「ポテンシャルはある」と弟子の素質を認め、SG覇者の西村勝(埼玉)も「勝率4、5点台を狙えるものは十分持っている」と評価した。その一方で須藤は「まだ甘えているんじゃないのと。こちらが教えるのではなく、向こうが僕を利用する。僕らはプロなので、無理にやらせるものでもないですしね」と厳しい言葉を口にした。もちろん、期待するがゆえの“ゲキ”だが、姿勢の面でまだまだ物足りなく映るのは事実だ。
75キロあった体重を約20キロ落とし、ボート界に飛び込んだ。野田は「それ以上落とすと頭が働かない」と今のベスト体重は56、7キロ近辺だという。SGクラスはほとんどが最低体重の52キロで調整し、本番に挑む。減量について「今が一番きついですね。75キロから落とした時は勢いでいけたというか。とんでもない世界に来てしまったなと」と苦笑いを浮かべた。
人気コンテンツであるプロ野球出身だけに、野田の活躍によってはボートレースの認知度もさらに高まるだろう。野球ファン、ボートレースファンからの期待や注目度は高く、精神的に苦労する部分もあるはずだ。それでも、野田がピットで見せる表情は明るく前向き。次回出走予定は23日からの芦屋ルーキーシリーズ。幾多の困難を乗り越え、成長曲線を描いてみせる。(山本航己)