2026年北中米ワールドカップアジア最終予選序盤4試合で勝ち点10を確保し、首位を独走している日本代表。11月15・19日のインドネシア(ジャカルタ)・中国(厦門)の2連戦で勝ち点6を積み上げられれば、3月の8大会連続切符獲得が濃厚になる…
2026年北中米ワールドカップアジア最終予選序盤4試合で勝ち点10を確保し、首位を独走している日本代表。11月15・19日のインドネシア(ジャカルタ)・中国(厦門)の2連戦で勝ち点6を積み上げられれば、3月の8大会連続切符獲得が濃厚になる。早期突破はその後の準備を考えても非常に大きい。ここは確実に勝ち切りたいところだ。
森保ジャパンがまず見据えなければならないのは、直近のインドネシア戦。現地は目下、雨季で連日スコールに見舞われる高温多湿な環境だ。7万8000人収容のゲロラ・ブン・カルノ・スタジアムも超満員に膨れ上がると見られるだけに、完全アウェーの状況も乗り越えなければならないだろう。
今回の日本はこれまでの主力だった上田綺世(フェイエノールト)と谷口彰悟(シントトロイデン)の攻守の要が負傷離脱しており、異なる陣容で挑まなければならない。攻撃陣は過去4試合で上田と代わって後半途中から出場し、9月の中国戦(埼玉)とバーレーン戦(リファー)、10月のサウジアラビア戦(ジェッダ)で3戦連続ゴールを決めている小川航基(NECナイメンヘン)の1トップ抜擢が確実視されている。
「こういうチャンスをしっかりと自分のモノにしたいですし、本当に簡単な試合ではない。簡単に点を取れる相手でもないと思っているけど、この2試合で自分がどれだけ点を取れるかに(チームの成否が)かかっている。僕自身も期待しています」と本人はエースFWとして日本をけん引していく覚悟だ。
■生かしたい小川の高さ
万能型の上田に比べると、小川は高さと競り合いの強さにストロングのあるFW。インドネシアが自陣に引いて守備を固めてくるような状況になれば、彼のヘディング力が大いに生かされるはずだ。
「シンプルな攻撃も時に有効。航基は『崩し切る前に(クロスを上げてくれ』とかシンプルなプレーを僕に要求してくることも多い」とU-20日本代表時代から共闘している堂安律(フライブルク)は話しているが、小川を生かすようなボールを彼らウイングバック(WB)が供給することで、より得点力がアップするに違いない。
普通に考えれば、今回も両WBは堂安と三笘薫(ブライトン)でスタートし、途中から伊東純也や中村敬斗(ともにスタッド・ランス)が出場するという流れになる。小川は堂安にしても、伊東にしても「クロスが合う」とコメントしており、息の合ったプレーが見られる可能性は高い。左サイドの2人とも代表常連組になってからの半年間で特徴をすり合わせており、生かし生かされる関係性を築きつつあると言っていい。
外からのボールを小川が確実に合わせ、自らがゴールを決めるか、シャドウの選手にこぼれ球を拾わせる形になるかは分からないが、そういった形が数多く出れば、いつかゴールネットを揺らすシーンは訪れる。小川には最前線の大黒柱として自身のタスクを確実に遂行することが求められるのだ。
■控える大橋祐紀と古橋亨梧
一方で、1~2月のアジアカップ(カタール)のインドネシア戦を見ると、相手最終ラインが比較的高い位置を取っている時間帯も少なくなかった。その背後を突くべく、GK鈴木彩艶(パルマ)やDF陣が素早くロングフィードを前線に送り、そこに堂安や伊東が走り込んでビッグチャンスにつなげており、上田のゴールにもつながっていた。
今回もこういった形を想定しておく必要がある。小川にしてみれば、高温多湿の環境下で数多くのアップダウンを要求されることになるが、ハードワークというのは日本代表エースFWを目指すうえで必須な要素。その部分は上田より少し劣るという評価もあるだけに、今回のゲームでそれを覆したい。上田から定位置を奪い取り、1年半後のW杯本番で輝ける布石を打つべく、彼はこれまで以上の存在感を示すしかない。
もちろん小川が90分フル出場するとは限らないから、控えている大橋祐紀(ブラックバーン)、古橋亨梧(セルティック)の力も必要になる。試合展開にもよるが、後半途中から小川と同タイプを起用したければ大橋、全く違う背後への抜け出しを重視するなら古橋というチョイスになる。特に古橋にとっては1年ぶりの代表復帰でプレーの幅が広がったところを示さないと生き残りは叶わない。それは本人が誰よりもよくわかっているはず。「裏抜けだけではない点取屋」の一面をぜひともこの一戦で印象づけ、日本を勝利へと導いてほしいものである。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)