「大相撲九州場所・3日目」(12日、福岡国際センター) 平幕尊富士が会心の相撲で十両輝を寄り切り、2勝目を挙げた。前日に初黒星を喫した後、休場中の横綱照ノ富士から電話で叱られて猛省。返り入幕での進撃へ、再スタートを切った。大関陣は大の里が…

 「大相撲九州場所・3日目」(12日、福岡国際センター)

 平幕尊富士が会心の相撲で十両輝を寄り切り、2勝目を挙げた。前日に初黒星を喫した後、休場中の横綱照ノ富士から電話で叱られて猛省。返り入幕での進撃へ、再スタートを切った。大関陣は大の里が小結正代を、豊昇龍が平戸海をそれぞれ下して3連勝。琴桜は王鵬に苦杯をなめ、土がついた。全勝は両大関と平幕若隆景ら7人となった。

 まるで違った。尊富士に本来の立ち合いが戻った。鋭い踏み込みから頭で当たって突いて相手を起こすと、浅いもろ差しになって前に出て寄り切り。持ち味の電光石火の攻めで、輝に反撃の隙を与えなかった。

 1本の電話で目が覚めた。いいところなく初黒星を喫した前日。会場から帰りの車に乗り込むと、すぐに照ノ富士から着信があった。「2日見てたけど、何で当たらないんだ?当たる稽古してたんじゃないのか?そういう相撲をとれ!」。誰よりも尊敬し、誰よりも怖い横綱からのゲキ。背筋が一気に伸びた。

 効果はてきめん。一夜明けて会心の相撲に、尊富士は「とにかく前に出る相撲で勝ち切れたのでよかった。気合を入れてもらったし、今日はいい相撲をとろうと思った」と安堵(あんど)感をにじませた。取組のすぐ後に、照ノ富士から電話がかかってくるのは異例だといい「見られているんだなと思った。横綱が花道にいると思ってやっていました」。この日の取組前には、花道奥の通路でみっちりと立ち合いの確認を繰り返していた。

 幕内の土俵に立つのは、110年ぶりとなる新入幕優勝を飾った春場所以来。優勝候補の期待もかかる。「横綱がいない場所だけど、部屋で1人でも多く元気な相撲をとれれば、次に横綱が帰って来る時に前向きな気持ちでできると思う。弟弟子として、しっかりやりたい」。不在の大黒柱に代わり、帰って来た逸材が1年納めの場所を締めくくる。