米大リーグ・マリナーズなどで活躍したイチロー氏(51)=現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が9、10日の2日間、大阪府高槻市にある大冠高校を訪れ、野球部の指導を行った。高校を指導するのは2020年から5年連続。強豪私学がひしめ…

 米大リーグ・マリナーズなどで活躍したイチロー氏(51)=現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が9、10日の2日間、大阪府高槻市にある大冠高校を訪れ、野球部の指導を行った。高校を指導するのは2020年から5年連続。強豪私学がひしめく大阪で、甲子園大会出場経験のない公立校が夢舞台を目指す心意気を買い、厳しい言葉も交えながら愛のあるゲキを飛ばした。

 生徒たちと顔を合わせた直後からイチロー氏は厳しい言葉を投げかけた。大阪では1990年の渋谷以来遠ざかっている公立校の甲子園出場。激戦区であることを承知しているからこそ、言葉にも熱を帯びた。

 自身は強豪校の愛工大名電でプレーした経験から、「大阪の状況を見ると大阪桐蔭と履正社の2強。相手がどう思っているか考えてほしい。(強豪でないチームは)眼中にない。そこに挑むんだよ」とゲキを飛ばした。

 部員全員から指導を依頼する手紙が届き、公立校の甲子園を目指す本気度を厳しい目で見るために、初めて大阪の高校への訪問を決めた。2日間にわたって外野ノックやキャッチボール、打撃指導を実施。練習中には選手たちが質問するための列ができた。2日目にはグラウンド脇でお好み焼きを焼き、「ひっくり返す?タイミングはセンシティブなんだ」と笑顔で交流する場面もあった。

 選手たちの夢の実現を願うからこそ、最後のあいさつでも強烈な言葉を発した。「本当にそこを目指しているのかと。やりきるんでしょ、高校野球を。やらないと」ときっぱり。「ベスト8狙っているとかならこんなこと言いませんから」と“愛のムチ”を入れた。

 「強豪私学からは、僕らは『眼中にない』と思われているんだということも知ることができた。本気で甲子園を目指して頑張りたい」と加藤日向主将(2年)。公立校の下克上をイチロー氏は待ち望んだ。(北村孝紀)

 ◆大冠(おおかんむり)高校 大阪府立の普通科共学校。所在は大阪府高槻市。1986年、島上高校分校大冠校として開校し、95年に大冠高校として独立。野球部は86年創部。甲子園出場はなく、夏の最高成績は2017年の大阪大会準優勝。主なOBは元ヤクルト・吉田大喜、プロゴルフの山下和宏、漫才のシャンプーハット・恋さん。