■渡辺和大が1失点完投、清原正吾は3号ソロ含む4打数4安打 見違えるような変貌を遂げた。東京六大学野球秋季リーグで5位が確定している慶大は9日、早大1回戦に9-1で大勝。あと1勝すれば春秋連覇が決まる早大を相手に意地を見せた。先発の左腕・渡…

■渡辺和大が1失点完投、清原正吾は3号ソロ含む4打数4安打

 見違えるような変貌を遂げた。東京六大学野球秋季リーグで5位が確定している慶大は9日、早大1回戦に9-1で大勝。あと1勝すれば春秋連覇が決まる早大を相手に意地を見せた。先発の左腕・渡辺和大投手(2年)が9回1失点で完投すれば、「4番・一塁」で出場した清原正吾内野手(4年)は3号ソロを含む4打数4安打と活躍した。

 今季の成績を見れば、東京六大学リーグの最終週を飾る伝統の早慶戦とはいえ、8勝1敗で勝ち点4の早大(試合前時点、以下同)に、3勝7敗で勝ち点1の慶大が勝てる可能性は極めて低いように思えた。ただ、慶大は前戦の10月20日・法大2回戦に敗れてから、3週間の間隔があった。堀井哲也監督は「低迷していたウチにとっては、非常にいい時間になりました」と笑顔を浮かべた。

 苦杯をなめさせれた側の早大・小宮山悟監督が「われわれは勝てば優勝という状況ですが、あちらは順位が確定し、来シーズンを見据えたような若い選手の起用を含め、失うものがなく、思い切ったことができる。そういう意味で、試合前から相当怖さを感じていました」と胸の内を明かした通り、この日の慶大のスタメンには、先発投手の渡辺和をはじめ2年生が3人、1年生も3人、名を連ねていた。

9回を投げきり完投勝利を挙げた慶大・渡辺和大【写真:加治屋友輝】

 エースの外丸東眞投手(3年)は今季、コンディション不良などで4試合登板にとどまり、9月30日の明大3回戦を最後にリーグ戦のマウンドには上がっていない。代わりに1回戦の先発を任されている渡辺和は、7試合2勝2敗も、リーグ2位の防御率1.23と奮闘。この日は早大先発で7試合6勝0敗、リーグトップの防御率1.19を誇っていた伊藤樹投手(3年)との直接対決を前に、「投げ勝ちたい気持ちが強くありました」と闘志満々だった。

 実際、左打者が思わず腰を引くようなカーブなどを駆使し、今季リーグトップのチーム打率.295(9日現在)を誇る早大打線に付け入る隙を与えない。8回までは2安打無失点。大量9点リードの9回に、2安打で1点を失ったものの、最後まで危なげなく127球完投を果たした。7回5失点の伊藤樹を抜き去り、防御率1.19でリーグトップに躍り出た。

7回裏に今季2号2ランを放った慶大・水鳥【写真:加治屋友輝】

 対照的に、打線で活躍したのは、スタメン9人中3人の4年生だった。1番の水鳥遥貴内野手は初回にいきなり二塁打で出塁し、内野ゴロ2つの間に先制のホームを駆け抜けると、7回にはバックスクリーンへ飛び込む2号2ラン。主将でもある本間颯太朗内野手は4回2死一、二塁の好機に左線二塁打を放ち、チームに2点目をもたらした。6回の清原の3号ソロは、試合の流れを決定づける意味で貴重だった。

 試合後の会見では、渡辺和が「“ここにきてやっと”4年生の大きな援護があったので、助かりました」と先輩に当てつけるかのように、いたずらっぽく笑い、隣に座る清原はこれを聞いて「クッソ……」とつぶやいて見せた。なんとも和やかなムードが広がった。

 低調だった慶大打線が、無敵の快進撃を続けていた伊藤樹を攻略できたのは、3週間のインターバルの間に、相手の分析と自分たちの修正を徹底的に行った成果だろう。清原は「早慶戦は特別な舞台です。ドラフトで指名から漏れて、残すのは早慶戦だけでしたから、僕の全てを懸けて調整してきました。たくさんのお客さん(2万6000人)が入ってくださった中でダイヤモンドを1周できた経験は、一生の思い出になると思います」と感慨深げに明かした。

 もし慶大が10日の2回戦にも勝てば、早大は明大との優勝決定戦にもつれ込む。陸の王者の意地が、決着がつきかけていたリーグ戦に波乱を呼ぶのか。