専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第121回 最近、ようやく五十肩が治って「80台」連発のゴルフができていますが、残暑が厳しくて最後まで体がもちません。8月末になったら大丈夫と思っていたら、結構暑くて参ってしま…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第121回

 最近、ようやく五十肩が治って「80台」連発のゴルフができていますが、残暑が厳しくて最後まで体がもちません。8月末になったら大丈夫と思っていたら、結構暑くて参ってしまいました。

 でも、ゴルフがしたい。そこで、折衷案というわけではないのですが、クラブの本数を減らして薄暮のハーフラウンドをプレーすることにしました。

 これが、結構楽しいんです。クラブが少ないと移動は楽だし、ハーフだとプレー時間も短縮できるから、午前中に仕事を片付けられて、いいことずくめです。

 このように簡素化したゴルフをたまに楽しむのは、アリだと思いますよ。そこで、ゴルフはどういう部分を簡素化、簡略化し、あるいは”テキトー化”できるのか、考えてみました。

 ずばり、タイトルは「目指せ! アメリカンゴルフ」。レギュラーコーヒーの話ではありませんが、”薄味な”ゴルフを提唱したいと思います。

 夏場のゴルフで何が嫌かっていうと、他人のボール探しですよね。自分はナイスショットしたけど、同伴メンバーが林へボールを打ち込めば、ボールを探さざるを得ません。

 タオルで汗を拭いながらボール探しをするけれど、そういうときに限って、短パンにショートソックス姿だったりするものですから、虫に刺されたり、草負けして足が腫れてしまったり……ということに。この不条理な感情を誰にぶつければいいのやら……です。

 でも、お手伝いしないと、あとで必ず「あいつは、ボール探しも手伝わない。薄情な男だ」と言われかねません。しかも、ボールをなくす人って、年上のあまりうまくない人と相場が決まっています。ボールがなくなる人は、セミラフ程度でもなくします。

「だいたい、どこら辺にボールが落ちたんですか?」と聞くと、「そこの木の辺り」と言うけど、ボールは全然違うところにあることが多いです。

 結局、ボールをなくす人は、自分の打ったボールを見ていないか、たとえ見ていても”自分を過大評価して、すごく飛んだ気になっている”んですよね。だから、予想した場所にボールがないのです。

 これがアメリカのゴルフ、特にグアムなどのリゾート地では、実に優雅な”アメリカンゴルフ”を実践していて、それには驚きを隠せません。

 まず、ボールを見失っても、ほとんどボールを探しません。探すとしても、ほんの数秒です。

「あれまあ、ほんと諦めが早いことで」と思うのですが、その人がボールをなくしたと思しきラフを覗いてみると、びっくり仰天です。なんと、ボールがいくつも落ちているのです。

 つまり、ボール探しをしたところで、ラフには他のロストボールがいっぱい。自らのボールがカモフラージュされてしまっているのですから、そこから探し出すのはさすがに難しいです。

 そのため、通常は数秒ボールを探すフリをして、ロストボールをラフから1個拾って、フェアウェーからノーペナで打ち直します。ほとんどの方がそんなふうにプレーしていましたね。

 厳格な日本人から見たら「ルール違反だろ」って思いますが、たぶんアメリカンな人たちは、そんなふうには思いません。時間をかけてボールを探したりしていると、彼らは「なんで日本人は真剣にボールを探すんだ。キミは今、全米オープンに出場しているのか?」って、聞いてくることでしょう。



「テキトー」なアメリカンスタイルを少しは見習ってもいいかも...

 別に、何が悪くて、何が正解か、そんなことを言うつもりはありません。単に、海外のリゾート地で、そういう適当なゴルフをするのも結構楽しいってこと。それだけは言っておきたいのです。

 他にアメリカンゴルフをやっている方の特徴は、スコアをつけない人が多いです。

 そういう方に出会ったとき、「ええ~!? それで楽しいの?」「あなたにとって、ゴルフは何なの?」と聞いたことがあるんですが、そうしたら「ゴルフは散歩だよ」って。そのわりには、全然やせていないんですけどね……。

 また、「スコアを競って、ニギらないのか?」と聞くと、「自分は負けるからやらない。もしやるなら、他の人に賭ける」というのです。まあ、そういうのもアリなんでしょう。

 ニギると言えば、東南アジアのリゾート地でゴルフをやると、キャディーさんが一人ひとりに付く場合が多いのですが、そういうときはおおよそキャディー同士がニギっています。我々お客さんを出走馬に見立てて、ハンデをつけて賭けるのです。キャディーの少年を雇っていると思っていたら、我々がその少年たちの賭けの対象だった、というわけです。

「あのメガネは色白で下手そうだから、ハンデ5枚くれよ」なんてことを現地語で言っているわけです。そう思うと、なんか笑えますね。どうりで自分についたキャディーがやけに優しくて、真剣にラインを読んでくれると思ったのですが、そういう理由だったのです。

 話を戻しましょう。アメリカンゴルフの醍醐味は、やはり楽しく、そこそこうまく感じることができるゴルフの実践だと思います。

 例えば、ボールが黄色杭を越えてワンペナになっても、黄色杭のそばからではなく、フェアウェーの真ん中から打ち直すことが多いです。他にも、朝一番に2度打ちする「マリガン」はお約束ですし、3パット目は距離が残っていても、たいがいオーケーになります。

 そもそも南国のリゾート地に行くと、ティフトンやバミューダといった粘着力がある絡みやすい芝の影響を受けて、思うようなショットが打てず、叩いてしまうことが多いです。「リゾートゴルフなんて、どうせ簡単だろう」と思って挑むと、返り討ちにあうことがよくあるのは、こういう理由からです。

 それなのに、多くの日本人は「なんで叩くんだろう?」「リゾートだから、集中力がないんだな」と、自分に都合よく解釈します。そのうえで、周りを見てみると、なんかテキトーにプレーしていて楽しそう。そんな中、自分だけがスコアに一喜一憂して、あくせくゴルフをするのがバカらしく思えてくるのです。そうやって”アメリカンゴルファー”が一丁上がり、といった寸法となります。

 毎年、たくさんの日本人が海外のリゾート地に行きます。そこで、あれだけアメリカンゴルフを楽しんでおきながら、日本に帰るとまた”ジャパニーズゴルフ”に戻ってしまうのも驚きです。

 もはや、これは国民性の問題なのでしょう。日本人って、実に真面目で几帳面な性格ですからね。でも、世界的なトッププロは、アメリカンな環境の中で育っている――そこは大いなる謎なんですよね……。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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