北陸の2チームが参戦するサッカーJ3の来季昇格をかけた争いが熾烈(しれつ)だ。残り3試合。1年でのJ2復帰をめざすツエーゲン金沢は波に乗れず12位と正念場だが、昨季わずかな差で悔し涙を流したカターレ富山は3位と好位置につける。 能登半島地…

 北陸の2チームが参戦するサッカーJ3の来季昇格をかけた争いが熾烈(しれつ)だ。残り3試合。1年でのJ2復帰をめざすツエーゲン金沢は波に乗れず12位と正念場だが、昨季わずかな差で悔し涙を流したカターレ富山は3位と好位置につける。

 能登半島地震で被災した両県。スポーツで地域に明るい話題を届けられるか。そして昨季、北陸から消えたJ2の灯を再びともせるだろうか。

 「地震から始まり、昨日は短期間の雨で大きな被害が出て、自分たちは試合をしている場合なのか?という思いもあった。でも、グラウンドで被災地への思いをプレーで表現し、それを見た人の心が少しでも動いてくれればと思って戦った」

 能登を豪雨が襲った翌日の9月22日、今季から実現した金沢との2度目の「北陸ダービー」で1―0の熱戦を制し、対金沢は2戦2勝とした富山の小田切道治監督はそう語った。

 金沢、富山とも地震後にチャリティーマッチを開くなど、「被災地に元気を」「能登とともに」を合言葉に、昇格をめざす特別なシーズンだ。

 金沢は、ここまで12勝12敗11引き分け。昇格プレーオフに出場できる6位内(1、2位は自動昇格)に勝ち点で4差だ。3日のホームゲームでは、最下位盛岡に1―1で引き分け、勝ち点3を逃した。パスワークは磨かれてきたが、決定力を欠く。ホームでは7月20日以来、勝ちがない。

 伊藤彰監督は試合後、「勝ちきれず申し訳ない。得点を取るところに磨きをかけないと」と話した。とはいえ、J3は4位から14位までが勝ち点6にひしめく大混戦で、「泥臭く勝ち点3を取りにいかないと」と、昇格への意欲も示した。

 一方、富山は14勝6敗15引き分けの勝ち点57とプレーオフ圏争いでは抜け出し、自動昇格の2位まで勝ち点差7。ただ、9月に金沢を破ってからは6戦勝ちなし。昨季、最終戦で勝ち点62で2位鹿児島と並びながら、得失点差で6点及ばなかった悔しさを、最終盤で力に変えられるか。

 小田切監督は2―2で引き分けた前節・相模原戦後、「ここ2試合、リードした中で失点が続いているので、心の焦りなのか、多少見られるが、もう一度引き締めて次節必ず勝てるように準備したい」とコメントした。

 サポーターの昇格への思いも強い。今季、ホームは全試合「皆勤賞」で観戦しているという金沢市の小学6年島垣一徹(かずと)さんは、「先制点を取られる展開が多い。残り少ない試合で勝ち点3をゲットしないといけないので、守備をもうちょっと固めてほしい」と期待する。富山を熱心に応援している富山県高岡市の中学1年宮本皓生さんは「来季は北陸ダービーをJ2で見たい。うちら富山が2位になって、金沢がプレーオフで勝てればいける。昇格に全身全霊で頑張ってほしい」とエールを送っている。

 両チームとも残り3試合のうち、2試合のホームゲームを残す。金沢は10日に福島、24日に奈良と金沢ゴーゴーカレースタジアムで。富山は10日に岐阜、17日に八戸と、県総合運動公園陸上競技場でぶつかる。(土井良典)