「ヨモさんを男にしたい」 これは2024年Jリーグ開幕前の横浜FC新体制発表会で、福森晃斗が言った言葉だ。ご存じの通り、福森と中野嘉大はコンサドーレ札幌時代に四方田修平監督に師事した教え子である。「札幌2年目の2016年に開幕戦でいきなりベ…

「ヨモさんを男にしたい」

 これは2024年Jリーグ開幕前の横浜FC新体制発表会で、福森晃斗が言った言葉だ。ご存じの通り、福森と中野嘉大はコンサドーレ札幌時代に四方田修平監督に師事した教え子である。

「札幌2年目の2016年に開幕戦でいきなりベンチ外にされたことがあったんです。2015年に39試合出て、ちょっと有頂天になっていた部分があったのかなと。そういう気持ちに気づいたヨモさんがバッサリとやったってことでしょうけど、優しい顔してやることは結構エグいですから」と福森は冗談交じりに語っていたほどだ。
 そういう発言ができるのは、信頼関係がある証拠。「ヨモさんがいたから横浜FCに来た」と福森も言っていた。それは中野にしても同じ。恩師とともにJ1に上がるというのが今季の最重要命題だったはずだ。
 そのターゲットにあと一歩で手が届くところまで至ったにもかかわらず、4試合も足踏み状態が続いてしまっている。スコアレスドローに終わった11月3日の栃木SC戦後に中野はこんな話をしていた。
「仙台戦、岡山戦もそうですけど、失点したことによって、『絶対に勝てる』という自信がちょっと揺らいだところがあったかなと。自分が勝ってる時はそういう自信があったんですけど…。だからこそ、今は自分たちから崩れないでやることが大事だと思います。
 前への姿勢は大事ですけど、急ぎすぎないでじっくり攻めるところも大事だし、その中でも保守的になりすぎてもいけない。リスクをしっかり管理しながら、しっかり結果を出していきたい。ヨモさんに限らず、起用してもらっている以上は、結果で示さないといけない。次は必ず勝ちたいと思います」
 彼は11月10日の最終節・レノファ山口戦に向け、新たな覚悟を口にした。

■中野と福森への期待

 今の横浜FCはキャプテンマークを巻くガブリエウやユーリ・ララ、カプリーニら外国人助っ人の存在感が大きいが、ここ一番で仕事をしなければならないのは、四方田監督との絆が深い福森と中野だろう。
 特に福森に関して言えば、最近はリスタートのキックの精度が微妙にズレている印象がある。今季アシスト14本とJ2トップに立つ彼がここ最近、ゴールに絡んでいないのは、チームにとっても大きな課題。最終ラインの一角として守備重視にならざるを得ないのは分かるが、福森はもっと意外性を出していい。直接FKを決めることにも貪欲さを発揮してもいいはず。冒頭の言葉通り、四方田監督を男にするためには、堅守の山口を自ら蹴散らすくらいの意気込みがあっていい。背番号24を背負うレフティにはJ2レベルをはるかに超えた存在感を今こそ示してもらいたい。
 そして中野の方も左サイドからの攻めももっと加速させるべき。栃木戦でも外からの崩しを意識したプレーを見せてはいたが、なかなか決定機につながらなかった。山口も自陣を固めてくると見られるだけに、彼と山根永遠の仕掛けとクロスの質が非常に重要なポイントになってくるのだ。

■中野が説く、今必要なメンタリティ

「ちょっとここ最近、勝てていないから、ネガティブになる気持ちありますけど、そういう時だからこそ、『自分が勝たせてやる』『ヒーローになる』っていうつもりで前線の選手がやれば、おのずと点が生まれていくと思います。あまり守りに入らずに、自分の結果出すというつもりでやっていきたいと思ってます」と中野は話したが、本当に全員がアグレッシブさを前面に押し出すべきだ。
 仮に引き分け以下だったとしても、彼らにはまだJ1昇格プレーオフが残されている。そのくらいのメンタリティで思い切ってぶつかれば、悔いのない戦いができるはず。消極的になって結果も出ないという負の連鎖だけは絶対に回避するしかない。
 それを念頭に置いて、四方田監督がぶつかっている最大の壁をみんなで乗り越えていく…、そんなタフな横浜FCの姿をぜひとも見せてほしいものである。
(取材・文/元川悦子)

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