【宮城】スキーのストックのような専用のポール2本を地面に突きながら歩くフィンランド発祥のスポーツ「ノルディックウォーキング」のイベントが11月10日、石巻市内である。企画したのは、震災を機にハマり、その意外な効果と楽しさを伝えている元市職…
【宮城】スキーのストックのような専用のポール2本を地面に突きながら歩くフィンランド発祥のスポーツ「ノルディックウォーキング」のイベントが11月10日、石巻市内である。企画したのは、震災を機にハマり、その意外な効果と楽しさを伝えている元市職員の女性だ。
左右それぞれの手で握りしめるポールを交互に床に押し込み、ぐいぐい歩き、前に進んでいく。
「ポールを使うことで全身運動になり、上半身の筋肉も使うのが特徴。高齢者のフレイル予防や、がん患者のリハビリにも取り入れられているんです」。NPO法人日本ノルディックフィットネス協会(JNFA、仙台市)の事務局長の大須美律子さん(61)が実演しながら、そう説明する。
昨年3月まで約30年間石巻市役所に勤めた。2011年の東日本大震災では、市内にあった自宅が津波で損壊。かろうじて使えた2階部分で暮らしつつも、保健師として市内の避難所を回り、被災者の困り事の聞き取りや、支援団体の取りまとめをしていた。
ただ、被災者は決して避難所だけにいるわけではない。自分も含め、在宅で過ごす人たちにも支援は必要だが、避難所に比べてあまり行き届いていないと感じていた。
そんな時、在宅の被災者支援で協力してくれたのが、健康増進の目的で仙台市の助成を受けて07年にできたばかりだったJNFAだった。
ノルディックウォーキングは元々、クロスカントリースキーの夏場の練習だったものを一般向けに改め、フィンランドで1997年に健康運動として誕生したスポーツだ。
JNFAは震災後、家で過ごす被災者が体を動かす機会にしてもらおうと、市内の地域の集会所などでノルディックウォーキングの体験会のイベントを開催。そこに大須さんも参加したという。
100キロマラソンにも何度も挑戦し、ランニングが趣味だった大須さんも「ウォーキングとランニングの中間の感覚。これなら今後もずっと続けられる」と感じた。
職場の人を誘って、職場近くでもノルディックウォーキングをするようになり、13年にはインストラクターの資格も取った。震災で出会った縁もあり、退職後にJNFAの事務局長になり、様々なイベントの開催に取り組む。
11月に石巻市で開くイベントのテーマは「メモリアル」だ。熊本地震や能登半島地震など、全国各地で震災が多発している今、改めて当たり前の日常の大切さを感じつつ、ノルディックウォーキングを通して健康や命の大切さを感じる機会になればと企画したという。
イギリス出身で、震災遺構門脇小学校館長のリチャード・ハルバーシュタットさんの講話があるほか、ロシアの侵攻を受けるウクライナから市内に避難したイリナ・ホンチャロヴァさんの話も聞き、一緒に歩ける。
大須さんは「若い人も歓迎。日頃の当たり前の生活を大切にしようと思うきっかけになれば」と話す。申し込みの締め切りは11月5日で、JNFAのホームページからオンラインフォームなどで申し込む。参加料は2500円で、2キロと5キロのコースを選べる。初心者も歓迎。問い合わせは、JNFA(022・290・8951)まで。(阿部育子)