オールブラックスの(左から)ティージェー・ペレナラ、アントン・レイナートブラウン、ビリー・プロクター photo by Noto Sunao(a presto)オールブラックス インタビュー前編 10月26日(土)、ラグビー日本代表が今年国…


オールブラックスの(左から)ティージェー・ペレナラ、アントン・レイナートブラウン、ビリー・プロクター

 photo by Noto Sunao(a presto)

オールブラックス インタビュー前編

 10月26日(土)、ラグビー日本代表が今年国内最後のテストマッチ「リポビタンDチャレンジカップ2024」で「オールブラックス」ことニュージーランド代表と激突。世界中から尊敬されるオールブラックスの来日とあって、試合前から多くの注目を集めている。

 ここではそのオールブラックスで「ハカ」のリーダーを務めるSHティージェー・ペレナラ、突破力に長けた79キャップのCTBアントン・レイナートブラウン、7月に初キャップを獲得したばかりのCTBビリー・プロクター3選手のインタビューを紹介する。まずは今年、新しい指揮官を迎えたオールブラックスの現状や「ハカ」の意義などについて聞いた。

【新生オールブラックス】

――オールブラックスは今年、スーパーラグビーで結果を残したスコット・ロバートソンHCという新しい指揮官を迎えました。今、チームとして強化しているところはどんなところですか。

レイナートブラウン いい質問だね。今年のオールブラックスは選手だけじゃなくて、マネジメントの顔ぶれもかなりフレッシュになりました。今のところ、チームワークもいいし、全体としてうまくまとまっています。アタック、ディフェンスの両面での強化に取り組んでいて、システムに慣れてきているところです。正しい方向に向かって進んでいると思います。

ペレナラ アントンの言うとおりですね。新しいマネジメントグループに、新しい選手たちが加わりました。僕たちは今、選手としてゲームプランが何であるかを理解しようとしています。コーチたちは僕たちが達成しようとしていること、僕たちのラグビーを理解し、どのように改善するのがベストなのかを考えてくれています。双方とも同じ画を見ることができています。

プロクター まったく同じです。ふたりのコメントに付け加えることなんてないですよ(笑)。

――勝率は8割を超え、ワールドカップで3度の優勝を誇るオールブラックスは世界から尊敬を集めていますが、その強みはどこにあると思っていますか。

ペレナラ まず、なんといっても選手層の厚さです。ラグビーはニュージーランドの国内ナンバーワンのスポーツで、みんながオールブラックスになりたいと思って憧れ、多くの子どもたちがそのために努力しています。それがいい競争を生んでいて選手層に深みを与えていると思います。

レイナートブラウン 自分もずっとオールブラックスに憧れて、今、自分がここに身を置き、どれだけ恵まれている環境にいるかを感じています。オールブラックスになれば、大きな責任が発生するし、その役割を果たさなくてはいけないことは、若い頃からわかっていました。そして、オールブラックスの成功の歴史というものが、自分たちを突き動かす原動力になっていると思います。

プロクター やっぱりふたりが全部言ってくれたから、何も付け足すことはないかな(笑)。

――では、子どもの頃に、これをやったからオールブラックスになれたというようなことはありますか。

プロクター ニュージーランドで生まれ育って、4歳からラグビーを始めて、オールブラックスに憧れながらラグビーをしてきました。学年が上がるにつれて、オールブラックスになることが自分の進むべき道だし、その夢を叶えようと決めてからは、そのために練習でもなんでも全力でやると一貫性を持ってやってきました。高校の頃からラグビーで生きていこうと決めていました。

ペレナラ 僕も同じように一貫性は大事で、それは自分自身の強みでもあると考えています。僕は小さい頃からその気持ちが強かったんじゃないかなと思っています。楽な選択肢に逃げることなく、一貫性を持って、自分の役割を果たしていくことはとても重要だと考えていました。

レイナートブラウン 僕にとってターニングポイントになったのは、高校時代にAチームからBチームに落ちてしまったこと。その悔しい経験から何よりもハードワークすることを大事にするようになりました。努力すればするほど報われるということを実感したし、それが結果として今につながりました。今思えばそんなに落ち込むことじゃなかったんだけど(苦笑)。

【ハカは特別な瞬間】

――ペレナラ選手は、オールブラックスが試合前に披露する「ハカ」のリーダーを務めています。改めてオールブラックスにとっての「ハカ」とはどういった存在でしょうか。

ペレナラ 僕は(ニュージーランドの先住民族の)マオリでハカに親しんで育ってきたので、ハカは僕にとってとても特別な意味があります。ハカは自分の文化を象徴するもので、それをオールブラックスとして国際舞台で披露するのはとても大切で、特別な瞬間です。


「ハカ」のリーダーを務めるペレナラ

 photo by Noto Sunao(a presto)

レイナートブラウン もちろん特別なものだね。物心ついたときからずっと「ハカ」に触れてきました。オールブラックスになるためにずっと頑張ってきたわけだけど、それは同時にオールブラックスとして「ハカ」を踊るという夢のためでもある。ニュージーランドでは、多くの人が「ハカ」を象徴だと考えています。海外に行って自分がニュージーランド出身だと言うと、多くの人が「ハカ」を口にする。ニュージーランドといえば「オールブラックス」、そして「ハカ」と言うようにね。だからオールブラックスにとって「ハカ」はとても深い繋がりがあります。

プロクター 僕もマオリなので、ティージェー(ペレナラ)と同じように、ことあるごとに「ハカ」を踊ってきた。僕らの文化の一部だからね。だから7月に初キャップを得て、初めて「ハカ」を踊ったときは本当に特別でした。

―― ペレナラ選手がプロクター選手を次の「ハカ」のリーダーに推しているという現地の記事を読みました。

ペレナラ 僕は将来的にビリーがオールブラックスの「ハカ」をリードしていくことになると思っています。現に彼は(スーパーラグビーの)ハリケーンズの「ハカ」をリードすることも多いですし。まず選手としてよいパフォーマンスを続けていることが第一だけど、それに加えて、彼は「マナ(マオリ語で日本語の徳に近い言葉)」があると思っているので、「ハカ」をリードするのに相応しい選手なんじゃないかなと思います。

プロクター 自分たちのリーダーで、ロールモデルのひとりからそんなことを聞けるなんて、とてもうれしいし光栄です。でも、まずはプレーに集中しないといけない。選手としていいパフォーマンスを見せて、結果的にそうなれたらいいです。

――レイナートブラウン選手は、何度もペレナラ選手がリードしている「ハカ」を踊ってきましたね。

レイナートブラウン 本当は彼じゃなくて僕がリードすべきだと思っていたんだけどね(笑)。もちろんそれは冗談!(笑)。彼はゆるぎなきリーダーだと思います。オールブラックスの「ハカ」について聞かれる時にいつも考えるんですが、オールブラックスのリーダーは、「ハカ」のリーダーでもあって、それがやはりティージェーなんじゃないのかなと思います。

ペレナラ ありがとう。

【日本戦に向けて】

――改めて日本代表戦ではオールブラックスとして、そして個人としてどんなプレーをしたいですか。

レイナートブラウン もちろん、オールブラックスのラグビーをしたい。そして自分自身が成長できる試合になるようにベストを尽くしたいです。幸いなことに、日本のファンは日本代表だけでなく、オールブラックスも応援してくれる人が多いからファンのために最高のパフォーマンスを見せたいですね。

プロクター 僕は昨年7月、オールブラックスXVとして日本代表と対戦したことがあるので、日本代表がクイックなゲーム展開をしてくることはわかっている。だから自分たちの強みを発揮して、エキサイティングなラグビーをしたいですね。

ペレナラ ふたりとまったく同じ答えですね。それぞれがいいパフォーマンスをすれば、結果的にチームに貢献できる。だから、しっかりとパフォーマンスを出せるようにしたいですね。

 ラグビー日本代表を警戒するオールブラックス「日本がベストの状態で臨んできたら非常に難しい試合になる」

【Profile】
ティージェー・ペレナラ 
TJ Perenara
184cm/90kg。1992年1月23日生まれ。リコーブラックラムズ東京所属。「ハカ」のリーダーで87キャップを誇るスクラムハーフ。

アントン・レイナートブラウン 
Anton Lienert-Brown
185cm/96kg。1995年4月15日生まれ。チーフス(ニュージーランド)所属。突破力に長けたCTB 。79キャップを誇る。

ビリー・プロクター 
Billy Proctor
187cm/96kg。1999年5月14日生まれ、1キャップ。ハリケーンズ(ニュージーランド)所属。2024年7月に初キャップを獲得したばかりのCTB