プロボクシング世界4団体スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥が12月24日に、東京・有明アリーナでIBF&WBO世界同級1位のサム・グッドマンと防衛戦を行うことが24日、発表された。尚弥は会見の最後、オンライン参加した相手に、逃げ回らず「…

 プロボクシング世界4団体スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥が12月24日に、東京・有明アリーナでIBF&WBO世界同級1位のサム・グッドマンと防衛戦を行うことが24日、発表された。尚弥は会見の最後、オンライン参加した相手に、逃げ回らず「熱い試合」をするよう異例の要望をした。KOで勝てば、世界戦KO勝利数が伝説のヘビー級王者、ジョー・ルイス(米国)と並び、史上最多タイの22となるモンスター。世界戦現役単独最多の24勝目を挙げ「最強」を証明する。

 記者会見が打ち切られようとした瞬間だった。「ちょっといいですか」。尚弥が自ら切り出した。以前、YouTubeで9月のTJ・ドヘニー戦を「さえない」と評していたグッドマンを、画面越しにぐっと見据える。「ドヘニーが(つまらない)塩試合に徹したからさえない試合になってしまった。グッドマンにはぜひ、熱い試合をしてもらいたい」と呼びかけた。

 9月は本来、攻撃的なドヘニーが守備的で前に出てこなかったため、7回TKO勝利も観客にとってはやや面白みに欠けた。技術、速さを生かしてポイントを取るスタイルのグッドマンが同じ戦法を取れば再び“塩試合”になる恐れがある。だからこそ、向かってこいという挑発とも取れる要望だった。相手が応じなかった場合でも「(自分は)塩試合で勝てればいいというボクシングやってないんで。倒しに行く」と珍しくはっきりとKO宣言した。

 現在世界戦は23戦全勝21KO。次に勝てば伝説のヘビー級王者、ジョー・ルイスの世界戦史上最多KO勝利数22に並ぶ。判定勝利でも世界戦24勝目で、23勝で並ぶ元世界3団体ミドル級統一王者ゲンナジー・ゴロフキン、世界3団体スーパーミドル級統一王者の“カネロ”ことサウル・アルバレスを超えて現役単独最多。4団体を統一したまま3度目の防衛も4度のカネロに次ぐなど記録ラッシュとなる。

 ジムの大橋秀行会長(59)は「来年、再来年と大きな野望がある」と発言。来春に21年以来の米ロサンゼルス、もしくはニューヨークで初の試合を行う可能性を示唆し、WBC世界バンタム級王者・中谷潤人(26)=M・T=との夢対決も視野に入れる。まずは17年以来の年3試合目となるグッドマン戦に集中する。「今年の締めくくりとしてインパクトある試合を」と尚弥。クリスマスイブに、ファンに向けて最高のプレゼントを贈る。(戸田 幸治)

尚弥に聞く

 ―今回も相手が物足りないという声がある。

 「WBO、IBF1位の選手。ベルトを守っていく中では避けられない相手の1人」

 ―勝利、KOへのカギは。

 「スピード。スピードを意識したボクシングをしたい」

 ―前日計量から試合までに11キロ増したドヘニー戦ではパワーを意識した。

 「前回は(自身も)7・4キロ戻した。今回は6キロぐらい。1・4キロ低ければ相当なスピードが出る」

 ―大橋会長が大きな野望があると言っていたが。

 「海外でやるのか、また日本になるのか。この試合が終わってから動き出すこと。この試合を勝たなければ、次のステージが見えてこない」

 ◆ジョー・ルイス(本名・ジョセフ・ルイス・バロー)1914年5月13日、米国アラバマ州生まれ。元WBA(当時はNBA)世界ヘビー級王者。37年6月、王者ジェームス・J・ブラドックに8回KO勝ちで世界ヘビー級王座を奪取。その後、全階級を通じて最多となる世界王座25回連続防衛に成功した。世界戦26連勝もフロイド・メイウェザー(米国)と並んで最多記録。プロ通算66勝(52KO)3敗。ゴルファーとしても52年、PGAツアーでプレーした最初のアフリカ系アメリカ人となった。81年4月に66歳で病死。