10月26、27日、ヨークいわきスタジアム(福島県いわき市)で第55回明治神宮野球大会の出場権をかけた東北地区大学野球代表決定戦が開催される。26日に富士大(北東北大学野球連盟代表)と東北公益文科大(南東北大学野球連盟第2代表)、仙台大(仙…

10月26、27日、ヨークいわきスタジアム(福島県いわき市)で第55回明治神宮野球大会の出場権をかけた東北地区大学野球代表決定戦が開催される。26日に富士大(北東北大学野球連盟代表)と東北公益文科大(南東北大学野球連盟第2代表)、仙台大(仙台六大学野球連盟代表)と東日本国際大(南東北大学野球連盟第1代表)による1回戦が行われ、27日の決勝で東北代表1校が決定する。激戦を制するのはどのチームか。

ドラフト指名6選手擁する富士大は投打ともに戦力充実

昨年の全日本大学野球選手権と明治神宮野球大会で4強入りした北東北大学野球連盟代表の富士大は、圧倒的な戦力を誇る。24日のプロ野球ドラフト会議では、麦谷祐介外野手(4年=大崎中央、オリックス1位)、佐藤柳之介投手(4年=東陵、広島2位)ら6人が指名を受けた。それぞれが直近のリーグ戦でも結果を残しており、優勝候補筆頭と言えるだろう。

エースの佐藤は今秋、全5試合に登板して5勝を挙げ、最優秀選手賞、最優秀防御率賞、ベストナインの個人3冠を獲得。昨年の明治神宮野球大会では上武大打線を完封した左腕が、今年はプロ入り後の活躍も見据えつつ神宮のマウンドを目指す。右腕も安徳駿投手(4年=久留米商、ソフトバンク3位)、長島幸佑投手(4年=佐野日大、ロッテ育成3位)、角田楓斗投手(2年=東奥義塾)と150キロ前後の直球を持つ速球派がそろっており、投手陣は盤石だ。

広島から2位指名を受けた富士大・佐藤

今秋チーム打率.326、75得点を記録した野手陣も脅威となる。打率.381、3本塁打、10打点、15盗塁とキャリアハイの数字を残し、本塁打、打点、盗塁の各部門でリーグトップに立った麦谷が打線の軸。麦谷をはじめとする4年生はもちろん、今秋途中から1番に定着した山藤龍希外野手(2年=盈進)、二塁の定位置をつかんだ松谷徹平内野手(1年=下関国際)ら下級生も重要な役割を担う。

北東北大学リーグは9月23日に閉幕したため、公式戦は1か月以上のブランクがある。今夏は例年以上に個の強化に力を入れ、「個で勝負して、技術で圧倒する」野球を作り上げた富士大だが、安田慎太郎監督はリーグ優勝を決めた試合後に「1回休んで、もう一回強化する」と話していた。さらなるパワーアップを遂げた富士大がまずは東北の頂点を狙う。

逆転優勝の仙台大は豊富な投手陣と堅い守りが武器

2年ぶりの明治神宮野球大会出場を目指す仙台六大学野球連盟代表の仙台大は、投手力と堅い守りが武器。投手陣は150キロ超の速球を誇る渡邉一生投手(3年=日本航空/BBCスカイホークス)、佐藤幻瑛投手(2年=柏木農)が左右の柱で、ルーキー左腕の大城海翔投手(1年=滋賀学園)も大舞台でも動じないメンタルを持つ。それぞれリーグ戦では先発、中継ぎともに経験しているだけに、投手起用が鍵を握ることとなりそうだ。

守りは伊藤颯内野手(4年=鶴岡東)、新保玖和内野手(1年=霞ヶ浦)らで形成する内野陣が本来のパフォーマンスを発揮できれば堅い。指名打者での出場が続いていた主将の小田倉啓介内野手(4年=霞ヶ浦)も、DH制のない今大会は守備でも貢献する意欲を見せている。

今夏は侍ジャパン大学日本代表に選出された仙台大・渡邉

打線は今秋はチーム打率.199と苦しんだものの、つながった時の怖さは侮れない。長打力と確実性を兼ね備えるスイッチヒッターで、チームトップの打率.286をマークした平川蓮外野手(3年=札幌国際情報)は「自分が打った試合はみんなも打てている。自分が打線のキーマンだと思う」と話しており、平川を中心にビッグイニングを作りたい。

今秋は東北工業大戦で勝ち点を落とすも、1敗もできない最終節の東北福祉大戦で連勝し逆転優勝を果たした。ここ一番での勝負強さは証明済みだ。不足を補い合える強みも生かし、春に続いて全国の舞台を踏むことはできるか。

「一発勝負」に強い東日本国際大と機動力光る東北公益文科大

主管の南東北大学野球連盟からはリーグ優勝の東日本国際大と2位の東北公益文科大が出場する。東日本国際大は今年の全日本大学野球選手権で4強入りした実力校だが、明治神宮野球大会の出場は2018年の一度のみ。初戦では2年前の代表決定戦決勝で敗れた仙台大を迎え撃つ。

東日本国際大は侍ジャパン大学日本代表でも活躍した右腕・藤井優矢投手(4年=角館)を擁する。全日本大学野球選手権では全4試合に救援登板し、再三のロングリリーフで準決勝進出に貢献。今秋のリーグ戦も5試合中4試合が中継ぎ起用だった。今大会も藤井の起用法に注目が集まる。

全日本大学野球選手権から存在感を光らせている東日本国際大・山本

今秋は元々実績のある永井龍樹投手(3年=明秀日立)、阿字悠真投手(3年=滋賀学園)に加え、新戦力の谷地亮輔投手(3年=聖光学院)が台頭。先発の駒は豊富で、藤木豊監督は「実力では(他連盟のチームの)足元にも及ばないが、一発勝負には面白い人材が出てきた」と自信をのぞかせる。全国で培った短期決戦の強さを発揮したい。

打線は4番に座り打率.552、11打点と打ちまくった齋藤匠外野手(4年=木更津総合)が中心。負傷離脱した黒田義信内野手(2年=九州国際大付)に代わって三塁を守った柴晴蒼内野手(1年=明秀日立)、二塁の定位置を奪取した山本迅斗内野手(1年=鳥取城北)の1年生コンビも高打率を残しており、学年問わず充実の野手陣がそろう。

1番打者として打線を牽引した東北公益文科大・間野

東北公益文科大はリーグ戦通算20勝を挙げたエース右腕・嵯峨恭平投手(4年=東海大山形)が投手陣の軸。野手陣では二塁手の長野航内野手(3年=大分)が打率.400、10打点、6盗塁と急成長を遂げた。盗塁王の長野とリードオフマン・間野温翔外野手(3年=遊学館)の1、2番コンビで計11盗塁を記録するなどチーム盗塁数はリーグトップの20を数えており、機動力は他チームに引けを取らない。まずは強敵・富士大に立ち向かい、「下剋上」を目論む。

(取材・文・写真 川浪康太郎)