アルビレックス新潟の選手、指導者、フロント、裏方さんなどを随時掲載する「アルビを支える人たち」。今回は、選手、スタッフの専用昼食会場「オレンジカフェ」の若杉ほなみさん(33=日精サービス)。サッカーは持久力、スピード、パワーと、これらの要素…

アルビレックス新潟の選手、指導者、フロント、裏方さんなどを随時掲載する「アルビを支える人たち」。

今回は、選手、スタッフの専用昼食会場「オレンジカフェ」の若杉ほなみさん(33=日精サービス)。サッカーは持久力、スピード、パワーと、これらの要素が複合的に必要とされているスポーツ。若杉さんがけん引するチーム・シェフが、ルヴァン杯初優勝を狙う選手たちの胃袋を支える。【取材・構成=小林忠】

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若杉さん始め女性スタッフは「恥ずかしいので顔出しNG」と少し恥ずかしがり屋だが、提供する食事は自信たっぷりだ。

ホールスタッフ9人、調理スタッフ4人を引っ張る若杉さんは、新潟がJ1に再昇格を果たした22年4月から「オレンジカフェ」の調理責任者を務める。

「選手、スタッフが『おいしかったです』といってくれたり、時々、安野フィジカルコーチに『これはちょっと?』と指摘されたり(笑い)。料理につく目玉焼きの焼き加減も選手とのアイコンタクトで分かるスタッフもいるぐらい。いい関係性は築けていると思います」

食事はバイキング形式。白米、汁物、サラダ、肉や魚を使った主菜、副菜を準備。主菜の炒め物はなるべく野菜を入れたり、夏場はサラダバーにアボカドを置くなど工夫した。

「アボカドは脂質も多いけど栄養価は高いので、料理の一部に組み込む分には植物性油だから利点もある。魚はシンプルに塩焼きで提供し、たまに煮付けやバジル焼きも。食材は油が多いので除外、ではなく、適度に入れつつ食べてもらうという感じです」

月ごとに変わる献立は栄養士の菊池恵美子さん(42)と意見交換しながら立案。残飯から人気、不人気メニューを記録し、選手にアンケートを取ったり、ホールスタッフが選手から意見をもらって調整する。

「同じ食材でもあじつけを変えたり。トライ&エラーではないですが、例えばエスニック系のあじつけを試したら全然ダメだったからやめよう、など。そこはサッカーと一緒で、修正、修正しながら」

海外選手も在籍するため鶏肉のソテーやブラジルの豆料理「フェイジョン」も用意。また、ニンニクが苦手なコーチ用に個別対応するなど、調理は細部にまでこだわる。

「食事はリラックス効果もある。いらないストレスをためて欲しくない。肉は炒める時に必ず下ゆでをする。ちょっと味気ない感じになってるかもしれないけど、それで油を抑えることはしていますね」。

トップチームの他、クラブハウスに隣接する寮で生活するユースチームには3食提供。新潟レディースの昼食も準備するため調理場も戦いの場だ。

「昼食は基本3チーム同じメニューですが、男子のトップが1品多いです。(ユースの)育ち盛りの子たちは好き嫌いがはっきりしてるので、野菜が入ってると食べられない、揚げ物が出たらそれしか食べないことがあるので、栄養士や新潟医療福祉大の専門家と相談して進めています」

料理作りに没頭する日々も「全然、苦ではない」と笑顔を見せる。ユースの食事を準備するため土日も調理場はフル回転。公式戦はなかなか現地観戦できないため、休憩時間にSNSで試合を追う。

「もうハラハラ。調理の合間に『ちょっと今どう、どうなってる?』と言い合って(笑い)。調理で関わってる分だけ、勝つとうれしいです」

ルヴァン杯のホーム戦にはフルーツ、おにぎりなどのケータリングを準備。選手たちのパワーの源となり、決勝初進出の原動力となった。

「塩分補給も兼ねて(おにぎりの塩気を)ちょっと濃いめにしたり。普段の昼食は薄めにする物もあれば、塩分補給も兼ねてちょっと濃いめに食べやすいようにするなども考えたりしています」

ピッチ外でもチームのために尽力する縁の下の力持ちがいて、新潟のアタッキングサッカーは成り立っている。

「選手たちの笑顔にパワーをもらっている。『オレンジカフェのご飯おいしくない』と思われないように。満足できる食事を提供していきたいと思います」

◆若杉ほなみ(わかすぎ・ほなみ)1991年(平3)5月17日生まれ、新潟県見附市出身。見附小、同中、同高。国際調理製菓専門学校を卒業後、地元の和菓子店勤務などを経て日精サービスに入社。22年4月から「オレンジカフェ」調理責任者。