■優勝を大きく左右する一戦に競り勝ち単独首位 早大は19日、東京六大学野球秋季リーグで、首位に並んでいた明大との1回戦に3-2で先勝。優勝の行方を大きく左右しそうな一戦で、先発したエース・伊藤樹(たつき)投手(3年)が8回3安打1失点の快投…

■優勝を大きく左右する一戦に競り勝ち単独首位

 早大は19日、東京六大学野球秋季リーグで、首位に並んでいた明大との1回戦に3-2で先勝。優勝の行方を大きく左右しそうな一戦で、先発したエース・伊藤樹(たつき)投手(3年)が8回3安打1失点の快投を演じ、単独首位に立った。

 味方も敵も、手放しで称賛した。早大の小宮山悟監督が「しんどい試合でしたが、タツキが素晴らしいピッチングをしてくれた」と感謝すれば、明大の田中武宏監督も「伊藤くんは立ち上がりから変化球を丁寧に低く、打者が打ちたくなるコースから落としてきました。球威はそれほどでなくても、自分の投げる球を操れるということは本当に大事なことなのだと再認識させてもらい、敵ながら感心しました」と脱帽した。

 カットボール、カーブ、スプリット、チェンジアップなど多彩な変化球を駆使。2回に、今夏の国際大会で侍ジャパン大学代表の4番を張った小島大河捕手(3年)以下を3者連続三振に仕留めるなど、明大打線を寄せつけない。5回2死二塁から代打の内海優太内野手(2年)に右前適時打を許したが、大崩れすることはなかった。

 今月24日に行われるプロ野球ドラフト会議の“目玉”で、試合前の時点で今季リーグトップの打率.455(33打数15安打)を誇っていた3番・宗山塁内野手(4年)も左飛、中飛、二ゴロ、二ゴロの4打数無安打に封じた。伊藤樹は「(宗山は)もちろんいい打者ですが、ヒットの中には打ち損じのカンチャンヒット(ポテンヒット)もありましたし、ホームランは高めの甘い真っすぐを打っている感じだったので、データから穴を探りながら投げました」と“恐るるに足らず”と言わんばかりの表情だった。

早大先発・伊藤樹【写真:宮脇広久】

 早大の守備陣はデータを基に、相手打者によってシフトを敷いているが、遊撃の山縣秀内野手(4年)が「タツキのコントロールがいいからこそ、それに合わせて野手が動ける」と説明するなど、ナインはエースに全幅の信頼を寄せている。

 小宮山監督も、続投か、交代かの判断を、基本的にエース自身に委ねているようだ。この日は8回123球で降板し、9回のマウンドを同級生の田和廉投手に託した伊藤樹は「7回終了時点で113球。2点リードで、真っすぐの球威は変わっていませんでしたが、僕の生命線のスプリット、チェンジアップの精度は少し落ちていました。リリーフ陣を信頼していますが、それでも1番から始まる8回は僕が投げた方がいいと判断して、続投させてもらいました。9回に関しては、打順が下位へ下がっていくところを、田和に任せる方がいいと思いました」と理詰めで説明した。

 実際には、2点リードで9回にバトンを引き継いだ田和が、2安打に暴投が重なり1点を失ったが、なんとか1点差で逃げ切った。

 そもそも、早大が今春のリーグ戦で7季ぶりの優勝を遂げた原動力は、エースとして一本立ちし、8試合3勝0敗、防御率1.49をマークした伊藤樹だった。明大3回戦ではなんと、延長11回無失点の完封勝利を挙げた。明大サイドはこの日、春に苦汁をなめさせられた伊藤樹にリベンジしようと燃えていたのだが、返り討ちにあった格好で、宗山は「春に続いて伊藤に、気持ちよく投げさせてしまいました」と肩を落とした。

 今季もまた6試合5勝0敗、防御率1.40と安定感抜群の伊藤樹を擁し、早大は春秋連覇へ向けて順調に歩を進めている。