主力を温存する中大だが、阿部陽樹(4年/写真)や1年生・岡田らの布陣でトップ通過候補 photo by 松尾/アフロスポーツ 2024年正月の大会で100回のメモリアルを迎えた箱根駅伝。次回は新時代に向けて、スタートを切ることになるが、10…
主力を温存する中大だが、阿部陽樹(4年/写真)や1年生・岡田らの布陣でトップ通過候補
photo by 松尾/アフロスポーツ
2024年正月の大会で100回のメモリアルを迎えた箱根駅伝。次回は新時代に向けて、スタートを切ることになるが、10月19日に行なわれる第101回大会箱根駅伝予選会は、どんな戦いが待っているのか。
予選会は各校10~12人が出走(エントリーは最大14人)。陸上自衛隊立川駐屯地の滑走路を一斉スタートして、立川市街地を経て、国営昭和記念公園内のゴールを目指すコースで行なわれるハーフマラソン(21.0975km)で、各校上位10人の合計タイムで争われる。前回は記念大会のため出場枠は「13校」だったが、今回は例年どおりに「10校」に戻る。過去の実績、エントリー状況などから予選会を突破する「10校」を探っていきたい。また予選未突破校のメンバーで編成される関東学連チームも復活するため、その候補に名乗りをあげそうな隠れた逸材についても紹介したい。
【東海大、中央大がトップ通過候補】
今回は前々回と同数の43校がエントリーした。トップ通過候補は前回の本戦11位で6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会(以下、全日本選考会)を1位通過した東海大だ。兵藤ジュダ(3年)と竹割真(3年)は外れたが、資格記録によるエントリー10000m上位10人の平均タイムで2位(28分50秒79)につけている。花岡寿哉(3年)は日本人トップを狙える選手で、越陽汰(4年)が復調するなど選手層は厚い。予選会は「3位以内」が目標だが、2週間後の全日本大学駅伝は「5位以内」をターゲットにしている。
ベストメンバーではないが、中央大もトップ通過の候補になる。全日本大学駅伝(11月3日開催)を見据えて、吉居駿恭と溜池一太の3年生コンビと柴田大地(2年)というエース格を登録していない。それでも資格記録によるエントリー10000m上位10人の平均タイムはトップ(28分44秒20)。1年生が5人も入っており、なかでも関東インカレ1部5000mで6位に入った岡田開成の走りに注目したい。
【総合力の高い日体大と立大、中央学大・吉田は日本人トップ候補】
全日本選考会を突破した日本体育大と立教大も上位候補になるだろう。日体大は前回4位通過を果たしているが、そのときのチーム内上位10人のうち9人が残っている。前回個人19位の山口廉(4年)、10000m28分23秒69の山崎丞(3年)ら登録された16人は全員が上級生で、うち12人が4年生という布陣だ。上位で稼ぐ選手は少ないが、前回はチーム10番目の選手が135位でフィニッシュしたまとまりのある走りが、今回も期待できる。今年の全日本選考会も4位で通過しており、安定したレース運びが持ち味だ。
立大は4月から駒澤大出身の高林祐介氏が駅伝監督に就任。走行距離が増えて、スタミナがアップした。全日本選考会は6位通過を果たして、選手たちは自信をつけている。箱根予選会の目標は「3位以内」。エースはいないが、林虎大朗(4年)、國安広人(3年)、馬場賢人(3年)ら前回の予選会でも好走してきた主力を軸に、トップ通過も狙える勢いがある。
また、明治大と中央学院大も予選通過は堅いと見る。明大は前回予選会のチーム1位と4位が卒業。同3位の綾一輝(2年)がメンバーから外れるも、箱根予選会に滅法強い。過去3年間は1位、2位、2位で通過しているのだ。前回不出場だった新谷紘ノ介と尾﨑健斗(ともに4年)が登録されており、今回も好走するだろう。中央学大は10000m27分台のエース吉田礼志(4年)が日本人トップの最有力候補。日本学生ハーフ2位の近田陽路(3年)も貯金が期待できる。
【当落線上の争いは大混戦に】
ここまでで6校。残り4校は大混戦になるだろう。そのなかでちょっと読めないのが順天堂大だ。浅井皓貴(4年)、海老澤憲伸(4年)、吉岡大翔(2年)ら戦力は充実しているが、6月の全日本選考会は17位と惨敗。そして日本インカレ3000m障害を連覇した村尾雄己(3年)、関東インカレ1部10000m8位(28分13秒67)の玉目陸(1年)ら全日本選考会を走った5人が予選会のメンバーから外れている。名門の意地を見せられるか。
一方で雰囲気がいいのは、神奈川大だ。1月から中野剛氏が新監督に就任。前回の予選会(7位)でチーム10位以内に入った選手が6人卒業するも、全日本選考会を7位で突破した。4年生のエントリーは3人しかいないが、エース格の宮本陽叶(3年)がチームを引っ張っている。
留学生を擁して、前回通過を果たしている日本大、国士舘大、駿河台大、山梨学院大、加えて本戦出場に3秒差で泣いた東京国際大がボーダー付近にいる。
この5校の戦力を比べると、前回チーム10位以内に入った選手の卒業人数は日大(5位)が4人、国士大(8位)が1人、駿河台大(12位)が1人、山梨学大(13位)が2人、東京国際大(14位)が3人。出走した留学生は今回、全員がエントリーされた。そして6月の全日本選考会(※東京国際大はシード校)は日大(9位)、山梨学大(10位)、駿河台大(12位)、国士大(15位)の順番だった。
エントリー10000m上位10人の平均タイムは東京国際大が3位(28分51秒40)、日大が4位(29分00秒12)と、このグループでは少し抜けている。両校は留学生も超強力だ。東京国際大のリチャード・エティーリ(2年)はハーフマラソンで59分32秒の日本学生記録を持っており、日大のシャドラック・キップケメイ(2年)は前回、1時間00分16秒で個人トップに輝いている。
前回の本戦出場校では東京農業大が大エースの前田和摩(2年)が外れる苦しい布陣となったが、どこまで戦えるのか。
拓殖大、上武大、専修大という箱根常連校も留学生を擁して、復活にかけている。初出場を狙うチームとしては前回15位の麗澤大が面白い。2022年にケニア人留学生が初めて入学。6月の全日本選考会では過去最高の13位に入っている。それから国立の雄、筑波大が日本人選手だけでどこまで戦うのか注目したい。
【学生連合入りを狙うエースたち】
前回は関東学生連合の編成はなかったが、今回は復活する。このチャンスに燃えているのが、第99回大会で関東学生連合に選出された古川大晃(東京大大学院D4年)だ。9月後半の日本インカレ10000mでは日本人で唯一、留学生に食らいついた。
「第100回大会で選抜チームがなかったのは、本当にショックでした。途方に暮れてどうしようかなと思ったんですけど、(連合チームを)復活してもらえたので、天からもらったチャンスだと思って、しがみつきたいと思います」
古川は熊本・八代高の出身で、熊本大時代に感じた「人と走るとなぜ楽なのか?」という疑問を解決すべく、九州大大学院に進学。2021年からは東大大学院博士課程に進み、「追尾走」を研究してきた。
東大陸上部は大学院チームも学部生とは別に箱根駅伝予選会に参戦している。古川と練習をしている秋吉拓真(東大3年)は日本インカレの5000mで5位に入っており、〝東大コンビ〟が関東学生連合のメンバーに選出される可能性は十分にある。
日本インカレ10000m(9位)で最後まで入賞争いを繰り広げた松田朋樹(湘南工科大4)にも注目したい。
栃木・白鷗大足利高の出身で高校時代の5000mベストは14分38秒だが、記録を出した時期が遅く、駅伝強豪校のスポーツ推薦に間に合わなかった。その〝悔しさ〟を大学でぶつけるように成長した。昨年の箱根駅伝予選会は個人132位(1時間04分11秒)に入っている。
「高校時代から箱根駅伝を走りたいという思いがあったんです。狙い方としてはちょっとイレギュラーかもしれませんが、関東学生連合で目指したいと考えていました。自分で勝手に意識してきたのが、同じ栃木出身の順大・海老澤(憲伸)君です。彼に勝ちたいという気持ちでやってきました」
松田は予選会で海老澤と〝直接対決〟を果たすことなる。湘南工科大競走部は2018年に創設したチーム。同校初の箱根駅伝ランナーが誕生するのか。
【厳しい条件下のレースに?】
10月19日の立川市・昭和記念公園の天気予報は(16日現在)、曇りで最低気温18度、最高気温28度。レース中(スタートは9時35分)の気温は24~26度ほどになることが予想される。16校に留学生が登録されており、今回もハイペースになるのは必至の状況だが、前回(16~18度)、前々回(20~21度)よりも厳しい条件になりそうだ。スピードのあるチームより、タフなチームが有利になるかもしれない。また当日のコンディションを考慮して、指揮官がどのような指示を出すのかもポイントになるだろう。
夢のスタートラインを目指して、学生ランナーたちの〝立川決戦〟が間もなく幕を開ける。
参考●第101回箱根駅伝シード校(前回順位順)
青山学院大/駒澤大/城西大/東洋大/國學院大/法政大/早稲田大/創価大/帝京大/大東文化大