<プロボクシング:WBOアジア・パシフィック・バンタム級王座決定10回戦>◇14日◇東京・有明アリーナ無敗の格闘家でWBOアジア・パシフィック・バンタム級1位の那須川天心(25=帝拳)がボクシングで初タイトル奪取に成功した。転向5戦目で、同…

<プロボクシング:WBOアジア・パシフィック・バンタム級王座決定10回戦>◇14日◇東京・有明アリーナ

無敗の格闘家でWBOアジア・パシフィック・バンタム級1位の那須川天心(25=帝拳)がボクシングで初タイトル奪取に成功した。転向5戦目で、同級2位のジェルウィン・アシロ(23=フィリピン)とアジアのベルトを懸けて戦い、3-0の大差で判定勝利を収めた。来年末に予定される世界挑戦を見据え、ボクシングキャリア節目のベルト獲得となった。

9回にダウンを奪った一方で、最終の10回にバッティングで左目上から流血した。 那須川はリング上の勝利インタビューで「腰にベルトは巻かれたんですが、おれの大事な顔に傷をつけやがって。顔で売ってるのに。格闘技を50戦して、初めて(顔に)傷ついた。初めて血も出た中、もみくちゃな試合で勝つことができた。KOしたかったけど、前回(の試合)でKOして、相手も研究してきた。こうやって10ラウンド通してボクシングできることは証明できたけど。圧倒的に強くなって帰ってきます」と話した。 その上で、今後について「今日の試合内容ですぐに(世界戦)どうだ、は、どうかなと思うので、来年中に世界戦、どうですか、みなさん。来年、那須川天心対世界。もっと強くなってきます」と観客に呼びかけていた。

今年7月、当時のWBA世界バンタム級4位のジョナサン・ロドリゲス(米国)を左ストレートで沈めた3回TKO勝ち以来、約3カ月ぶりのリングだった。転向5戦目にして初めてバンタム級のリミット(53・5キロ)での試合、初めての12回戦と世界戦とほぼ同じ条件で臨んだ一戦だった。転向後、初めてランキングで下の選手との対戦だったが、油断も隙もない戦いで勝利をものにした。

15歳で格闘家デビューした14年7月、試合の契約ウエートは55キロ(RISEのバンタム級)だった。今回はキャリア最軽量となり「プロになって10年経過して、デビューした頃より低い体重なんて感慨深い。10年間よくやってきたなあとおもいますね。多少、減量の不安もあったので」とうなずいた。

「期間を長くして入念に脂肪を削る」作業を経て、那須川は体格面のメリットに気づいたという。バンタム級の他選手と比較し「骨格がでかいとあらためて思う。この体格をこの階級に合わせられる。自分の筋肉量をみてもそう思う」と手応えを示した。水抜きと言われる急激に減量する作業も計3キロ前後に抑え「体に合わせて定まってきた。あとはパフォーマンスできるかだけ」と自信を胸にリングに立っていた。

これで国内で世界挑戦するための条件だった日本、アジア王座の獲得という日本プロボクシング協会の「内規」をクリアした。現在、世界ランキングはWBAとWBCで3位に入る。WBOでは12位にランクされており、今回のベルト獲得でさらにランクアップされそうだ。ベルト奪取で24年を締めくくった那須川が25年末と設定される世界挑戦へ、歩みを進める。

◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年(平10)8月18日、千葉・松戸市生まれ。5歳で空手を始め、小学5年でジュニア世界大会優勝し、キックボクシングに転向。14年7月、15歳でプロデビュー。15年5月にプロ6戦目で史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得。16年からRIZINなどにも参戦。18年6月に階級を上げ、初代RISE世界フェザー級王者に。22年6月、K-1の元3階級制覇王者・武尊を判定で下した。23年1月に帝拳ジムからボクシング転向すると表明。同4月に6回判定勝ちで転向1戦目を飾った。家族は両親、妹2人、弟。身長165センチの左ボクサーファイター。

◆キック出身の主なボクシング世界王者 スーパーライト級王者としてムエタイ無敵を誇ったセンサク(タイ)は75年7月、転向3戦目でWBC世界スーパーライト級王者フェルナンデス(スペイン)に8回KO勝ちして世界王者になった。3戦目での世界王座奪取は今も最短記録。ムエタイ3階級制覇のウィラポン(タイ)は95年9月に転向4戦目でダオルン(タイ)に判定勝ちしてWBC世界バンタム級王座を獲得。ウクライナのキーウ市長で元WBO、WBC世界ヘビー級王者のビタリ・クリチコ氏もキックからの転向組。ボクシング転向後、世界選手権スーパーヘビー級銀、プロでも世界一に。元K-1スーパーバンタム級王者武居由樹(大橋)がWBO世界バンタム級王座を獲得。史上初のK-1王座&ボクシング世界王者となった。

◇ラウンドVTR

【1回】サウスポーの那須川は距離をとって慎重に様子を見る。那須川の右ジャブが浅くヒット。アシロはカウンター狙いか。1分すぎに那須川が軽く左を伸ばす。アシロは大振りの左フックを振るうが2度空振り。那須川もカウンターを警戒してか中盤も慎重に戦う。終盤に那須川の左ストレートが顔面とボディーに決まる。日刊採点は那須川10-9。

【2回】那須川が右ジャブを伸ばす。アシロの右ストレートが浅く入る。中盤も那須川は右ジャブを突いて慎重に戦う。中盤の打ち合いはアシロが左フックを決める。2分すぎにアシロが打ってきたところに那須川が左カウンターを放つが空を切る。ともにほとんど有効打ないままゴング。日刊採点は那須川10-9 

【3回】アシロのいきなりの右を那須川が足を使ってかわす。那須川の右ジャブ、左ストレートは届かない。アシロはラフにパンチを振って前に出る。ともに中盤まで手数が少なく有効打はなし。2分すぎにアシロが打って出るが那須川はすべてかわす。終盤は那須川の左ジャブが数発当たる。ともに有効打なし。難しいラウンド。日刊採点は那須川10-9。

【4回】アシロがジワジワと前に出る。一発狙いの相手を警戒して、那須川はなかなかパンチを出すタイミングがない。中盤の那須川の思い切った左は空を切る。2分すぎに那須川がアシロをロープにつめて連打。残り30秒、那須川の左ボディーブローが決まる。日刊採点は那須川10-9。

【5回】開始早々、カフの右が那須川の顔面に決まる。40秒すぎに那須川がワンツーを返す。中盤は那須川が右ジャブを突き、軽い右フックがヒット。2分すぎから那須川がプレッシャーを強め、左ボディーブローを決める。このラウンドも明確な有効打はなかったが、那須川のボディー攻撃が効果的。日刊採点は那須川10-9。

【6回】序盤はお互いパンチが出ない。那須川が軽く右ジャブを繰り出す。中盤は那須川が珍しくカフのパンチを受けるシーンも。残り1分から那須川は前に出てパンチを繰り出すが、アシロもボディーワークでことごとくかわす。日刊採点はアシロ10-9。

【7回】開始30秒、お互いパンチをほとんど出さず様子を見る。1分すぎに那須川の左ボディーストレートが決まる。1分半すぎにアシロがバランスを崩したところに那須川の左ストーレートがヒット。アシロも右パンチをお返し。終盤は那須川がジャブからプレッシャーをかける。日刊採点は那須川10-9。

【8回】30秒すぎに那須川の左ボディーストレートが伸びる。1分半すぎに那須川の左強打が2発、アシロの顔面にヒット。2分すぎにアシロの右パンチを受けた那須川は首を振って効いていないとアピール。終盤は打ってこないアシロを誘ったが、アシロのパンチをすべて外す。日刊採点は那須川10-9。

【9回】相変わらず序盤はお互いパンチを出さずにお見合いが続く。アシロが右を伸ばすも那須川に届かず。40秒すぎに那須川が左ストレートでダウンを奪う。アシロはすぐに立ち上がる。再開後、アシロは前に出るがパンチは当たらず、逆に那須川の左ストレートを浴びる。後半は那須川の左が再三決まる。日刊採点は那須川10-8。

【10回】アシロがラフなパンチを振って前に出る。那須川はたくみにかわす。中盤は那須川は左パンチを振って前に出るが、頭が当たったのか那須川は左目尻をカット。那須川は流血しながらも果敢に攻め続ける。アシロの苦しまぎれのパンチは当たらない。終了間際にアシロをコーナーにつめて那須川がラッシュしたところで終了のゴングが鳴る。日刊採点は那須川10-9。