◆プロボクシング▽WBA世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 井上拓真―堤聖也(13日・有明アリーナ) 8大タイトル戦(13、14日、東京・有明アリーナ)第1日の前日計量が12日、都内で行われ、アンダーカード含む全10選…

◆プロボクシング▽WBA世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 井上拓真―堤聖也(13日・有明アリーナ)

 8大タイトル戦(13、14日、東京・有明アリーナ)第1日の前日計量が12日、都内で行われ、アンダーカード含む全10選手がパスした。メインのWBA世界バンタム級タイトルマッチに出場する王者の井上拓真(大橋)には兄で世界4団体スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥(大橋)が異例の付き添い。挑戦者の同級2位・堤聖也(角海老宝石)の勝利宣言を、涼しい顔で受け止めた拓真が、兄の思いに応える圧勝で3度目の防衛を目指す。

 王者の風格が漂った。およそ20秒に及んだフェースオフ。拓真が表情を崩し、握手を求めた。挑戦者の堤から「次は俺が勝つからな」と宣戦布告されたが、動じなかった。高校2年だった12年の高校総体準決勝で判定勝ちした同学年選手の勝利宣言に「12年も自分のことを思ってきたのであれば、それぐらい(の言葉は)当然かなって」と真正面から受け止めた。相手に直接、言葉を返すことはせずに「自分は冷静に淡々と自分のボクシングをするだけ。しっかり、結果でわからせてやろうかなって感じです」と泰然自若だった。

 この日は他の選手の計量に付き添うことは超異例の兄・尚弥も同行し、会場で静かに見守った。拓真は「多分、予定が入ってなかったから来ただけ。特に意味はない」と笑った。それでも、「いれば心強いですよ」と感謝も忘れなかった。同日に試合がない時の通例通り、尚弥は13日に弟のセコンドに入る予定だ。

 兄のサポートは大きい。右、左と構えを変える「スイッチヒッター」対策のため、仮想・堤としてスパーリングパートナーを務めるなど尚弥は全力支援してきた。自身のXでも「世界と日本の差はとてつもなくデカい」「ふぁいと」と防衛戦へエールを送ってきた。

 拓真も呼応するようにXでこの日、「世界と日本の差をしっかり見せてやんよ」と投稿して気合。世界王者である自分とのレベル差を、元日本王者の堤に大舞台で見せつけるつもりだ。

 勝てば、「一番戦いたいのは中谷選手」と熱望するWBC王者・中谷潤人(M・T)との統一戦が見えてくる。「何もできなかったと言わせるような試合展開にしたい」。堤に完勝し、一気に弾みをつける。(戸田 幸治)