6回まで慶大打線をノーヒットに抑えている東大先発鈴木太陽【写真:加治屋友輝】  頭脳を生かし、勝利を導いた。東大は6日、神宮球場で行われた東京六大学野球秋季リーグの慶大2回戦に4-1で勝ち、1勝1敗のタイに持ち込んだ。東大の白星は昨秋の法大…

6回まで慶大打線をノーヒットに抑えている東大先発鈴木太陽【写真:加治屋友輝】

 頭脳を生かし、勝利を導いた。東大は6日、神宮球場で行われた東京六大学野球秋季リーグの慶大2回戦に4-1で勝ち、1勝1敗のタイに持ち込んだ。東大の白星は昨秋の法大2回戦以来2季ぶりで、連敗を「18」で止めた。先発の鈴木太陽投手(4年)が6回1死までパーフェクト、7回1死までノーヒットに抑える快投を演じ、9回3安打1失点完投。今後は法大に2戦2勝した2017年秋以来、14季ぶりの勝ち点奪取、さらには5位になった1997年秋以来、54季ぶりの最下位脱出が現実的な目標となる。

 3点リードで迎えた9回の守備も2死一塁。マウンド上の鈴木太は、最後の打者・横地広太外野手(2年)に134球目を打たせて右飛に仕留めると、ボールが右翼手のグラブに収まった瞬間、思わず両拳を突き上げた。「本当に長かった。『ようやく終わった』という思いと『ようやく1勝できた』喜びで、無意識に両手が上がっていました」と照れた。

 146キロのストレートにカーブ、カットボール、スプリットをまじえて相手を翻弄した。敵将の慶大・堀井哲也監督は「低めに丁寧に放っていましたね。低めに集まっているから、こちらはどうしても目付けが低めに行き、そこから落ちるボールを振らされてしまう。非常にうまい投球をされました」と脱帽するしかなかった。

 5回終了時点で走者を1人も許さず、パーフェクト。鈴木太は「一瞬『今のところ……』と考えましたが、まだ4イニングあったので『長いな』と思いました」と振り返る。3-0とリードして迎えた6回、1死から代打の丸田湊斗外野手(1年)にフルカウントから四球を与え、完全試合の可能性が消滅したが、「点をあげられない状況だったので、パーフェクトが途切れたことより、ちゃんと抑えないといけないという気持ちでいっぱいでした」。続く7回、1死から水鳥遥貴内野手(4年)にチーム初安打の中前打を許したのを足がかりに、横地の左犠飛で失点するも、集中力を切らすことなく投げ切った。

完投勝利を挙げた後の東大鈴木太陽【写真:加治屋友輝】

 鈴木太は“大谷翔平級”とまでは言えないが、入学当初から投打二刀流である。これまで投手としての登板の他に、代打出場が7試合、右翼手として先発フル出場したことが2試合、投手として先発し、5回途中から右翼に回ったケースも1試合ある。

 投手としては制球に苦しんできたが、今季初先発の9月22日・明大2回戦で7回2失点と好投し、自信をつかんだ。東大投手として近年ピカイチの投球を見せ、まだまだ伸びしろもありそうだが、卒業後は国内ゲームメーカーに就職することが決まっている。「野球は大学で一区切りです」と屈託のない笑顔。「なんとか自分たちの代で勝ち点を取りたい。少しでも勝てるように頑張りたいです」と力を込めた。

 白星の背景には、いかにも東大らしいデータの活用もあった。鈴木太とバッテリーを組んだ杉浦海大捕手(3年)は「カーブでかなり打ち取れました。カーブの使いどころは捕手の腕の見せどころなので、かなり考えました」と笑みを浮かべる。「いろいろな方にお話をうかがい、いろいろな媒体で情報を得ましたが、そういう事前の分析だけでなく、その場で打者をよく観察して、両方を組み合わせてリードするようにしてから、うまくいくようになりました」と手応えを得た。

 外野の好守も相次ぎ、大久保裕監督は「詳しいことは明かせませんが、データを分析してポジショニングを考えました。ちょうどいいところに守ってくれていて、よかったです」とうなずいた。

 実は、1981年の春に東大が早慶両方から勝ち点を奪い、4位になった時の主将が、他ならぬ大久保監督だ。果たして、今年の“赤門旋風”はどこまで勢力を拡大するだろうか。

(Full-Count 宮脇広久)