■東大・中山太陽に先制3ラン浴びる“不穏”なスタート  東京六大学野球秋季リーグは5日、慶大が東大との1回戦に5-3で先勝。清原正吾内野手(4年)、横地広太外野手(2年)の4・5番コンビが機能した。昨秋の覇者は今季、開幕から立大、明大に勝…

■東大・中山太陽に先制3ラン浴びる“不穏”なスタート

 東京六大学野球秋季リーグは5日、慶大が東大との1回戦に5-3で先勝。清原正吾内野手(4年)、横地広太外野手(2年)の4・5番コンビが機能した。昨秋の覇者は今季、開幕から立大、明大に勝ち点を奪われて出遅れた格好だが、東大を破って巻き返しにつなげたいところだ。

 慶大にとっては不穏な幕開けだった。初回、先発の渡辺和大投手(2年)が東大・中山太陽外野手(3年)に先制3ランを浴び、いきなり3点リードを許してしまう。それでも、その裏に吉野太陽内野手(2年)が、東大先発の渡辺向輝投手(3年)からソロを放ち1点を返した。

 1-3で迎えた3回。慶大は無死満塁で3番の水鳥遥貴内野手(4年)が、押し出しとなる死球を受け1点差。清原が打席に入った。清原がNPB通算525本塁打を誇る父・和博氏の長男なら、マウンド上の渡辺も、かつてNPBを代表するアンダースローの名投手として活躍した俊介氏(社会人野球・日本製鉄かずさマジック監督)の長男で、父譲りの右の“サブマリン”である。

「水鳥の死球の直後だったので、初球を捉えるイメージで、集中して打席に入りました」と言う清原が狙い通り、真ん中低めに来た初球の109キロのスライダーをコンパクトなスイングで捉えると、打球は中前で弾み同点適時打となった。

 数少ないアンダースローの投手にタイミングを合わせるのは、決して簡単なことではない。清原は「同期のチームメートでアンダースローの阿蘇(瑠河投手=4年)に投げてもらって、対策を練ってきました」と明かす。清原自身、今春のリーグ戦を前に急成長を遂げ4番に定着したとはいえ、昨秋は出場なしに終わり、ベンチにも入れない日々が続いていた。それだけに「ベンチ外のチームメートの分も」との思いが非常に強い。「打てたことは、サポートしてくれる選手たちのお陰でもあります。今日は特に、阿蘇に感謝したいです」と語った。

 続く左打者の横地は、カウント2-2から外角球を逆らわずにレフト方向へ運び、勝ち越し犠飛。「追い込まれていたので最低限の仕事として、打点を稼ぐことだけを意識していました」とうなずいた。

3回に同点適打を放った慶大清原【写真:宮脇広久】

■「正吾さんが凄いスタートを切ったので、思わずバットが止まってしまいました」

 1点リードの7回に躍動したのも、この2人だった。2死走者なしで打席に入った清原は、東大2番手の平田から三塁強襲の内野安打を放ち出塁。続く横地のカウント1-2からの5球目に、リーグ戦初盗塁をマークした。

 中学、高校時代には野球と距離を置いていた清原だが、高校時代にはアメリカンフットボール部に所属し、大きな体格、パワー、スピード、捕球力などオールマイティーな能力を求められる「タイトエンド(TE)」を務めていたというだけあって「足には自信がありますし、年々速くなっています」と言い切る。横地も試合後の会見で、隣に座る先輩の清原に目配せをしながら「打席から見ていても、正吾さんが凄いスタートを切ったので、僕は追い込まれていたのですが、思わずバットが止まってしまいました」と笑わせた。

 直後、カウント2-2から、横地が内角低めの球を捉えると、スライディングキャッチを試みた右翼手が後逸。適時三塁打が記録され、慶大に貴重な追加点が刻まれたのだった。横地は開幕カードの立大戦3試合を欠場したが、初スタメンとなった9月28日の明大1回戦で、5回にリーグ戦初本塁打の2ラン。この試合では清原も、9回に念願のリーグ戦初本塁打を、起死回生の同点ソロで飾った。堀井哲也監督は「横地も清原も、本塁打を打てたことは自信になるだろうし、打撃がよくなっていくきっかけになると思う」と見ていたが、“予言”通りになりつつある。

「僕にとってはラストシーズン。できるだけ多くの勝ち点を取って終えたいと思っています。必ず明日勝って、今季まだ取れていない勝ち点を取りたいです」と清原。慶大の秋は、まだこれからだ。

7回にダメ押しのタイムリー3ベースを放った慶大横地【写真:宮脇広久】