パリ・パラリンピックの女子マラソン(視覚障害T12)で道下美里選手(47)の銅メダル獲得をガイドランナーとして支えた山下克尚(かつたか)さん(30)=愛媛県西予市出身、東温市在住=が9月26日、県庁を表敬訪問した。中村時広知事から「愛顔(…

 パリ・パラリンピックの女子マラソン(視覚障害T12)で道下美里選手(47)の銅メダル獲得をガイドランナーとして支えた山下克尚(かつたか)さん(30)=愛媛県西予市出身、東温市在住=が9月26日、県庁を表敬訪問した。中村時広知事から「愛顔(えがお)のえひめ文化・スポーツ賞」の「特別賞」を贈られた。

 小学校低学年のころからマラソン大会に出場し、箱根駅伝を夢見て順天堂大に進んだ。しかし、2年時に左足の甲を疲労骨折。箱根の夢は破れ、「人生のどん底だった」。

 そんなとき、参加したブラインドマラソンの合宿でガイドランナーという存在を知った。視覚障害のある選手と一緒に走り、お互いが端を握る伴走ロープや声でゴールに導く役目だ。

 その合宿で最初に伴走したのが道下選手だった。明るい笑顔を絶やさずに夢を追う姿に感化され、「パラリンピックで道下さんの伴走をすること」が一番の夢になった。

 それから10年。パリでその夢がかなった。

 事前にコースの動画を見て、路面の凹凸や上り坂の位置などをすべて頭に入れて本番に臨んだ。

 ガイドランナーは選手を押したり引いたりしてはいけないなど、失格につながる細かい規則があり、出走前は緊張に襲われた。

 だが、前半担当のガイドランナーとして伴走する間は、「道下さんにパリの町並みを存分に楽しんでもらおう」という心構えで、気持ちよく走ることができた。

 道下選手は4着でゴールしたが、3着の選手の失格により銅メダルが決まった。

 スタッフから知らせを受けると、道下選手、後半担当のガイドランナーと3人で抱き合って喜んだ。

 山下さんは取材に、「夢ってあきらめなければかなうんだと思った。4年後のロスでも道下さんともう一度メダルを獲得したい」と語った。(川村貴大)